砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

宝塚記念出走馬を見る その2

ゼーヴィントについて一両日悩んだ結果、あんな感じとなった。嫌いな配合ではないのに大物を感じないのは繁殖牝馬の配合として有用であるからだ・・・という結末。(牝馬ではないけれど)

ブラックタイドは重い英愛スタミナがオンとなっていて、また「Roberto×Graustark(=His Majesty)×Danzig×Raise a Native」というグラスワンダー的組み合わせと相性が良い。これを下地にスプリンターとして出たシルキーラグーンとは相性が良さそうであるし、シーヴィーナスのHyperion的素早さも良い形で表現されそう。

シーヴィーナスの速さとディープインパクトの速さが重なっているから褒めづらい。ディープ×Tudor Minstrelというのは素晴らしい速さを供給するのだけれども、Burghclereの良い重さを速さに使い切ってしまうところがある。底力ってものを失わせる様なところが。

宝塚記念は半端な距離ではあるけれど、基本的には中長距離。軽快なだけのゼーヴィントへ本命を打つのは違うのではないか・・・と。日経賞目黒記念を見たって敗因は明確よ。「良い重さ」を交えた表現であったなら、どっちかを勝てていたはず。戸崎圭太はそういう競馬をしたと思うのだわ。

タツゴウゲキ

単純明快の「HaloなTom Fool」配合。

マーベラスサンデーは母がNative Dancerの強めなクロスを持ち、またこれの緩和で飯を食っているサンデー直仔でもある。「4分の1Native Dancer4×3」は現代競馬においては回避不能であるから、サンデーを弄り倒す方向がベストだろう。

Native DancerはPompeyを持つのでTom Fool的な表現に頼るべきだ。これは母父マーベラスサンデーであるレッツゴードンキもそうであって、4分の4Northern Dancerを構成したモーリスもこのパターン。今後の日本競馬はTom Fool大戦争となるだろう。

器用にこなす反面、凶悪なねじ伏せは期待できない。内枠からのパターンが圧倒的に強くあり、新潟記念小倉記念の重賞2勝はともに白帽子だった。この大舞台で得た12番の緑帽子は好ましくないが、想定の逃げ馬であるサイモンラムセスのすぐ外というのは嬉しい。

ただ外から競りかけてくる馬も多い。間違いのない好枠というには及ばない。

早い段階で脚を使い切り、難しいタイミングで後退しそうな気もする。例年通りの傾向とも言えるが、4角である程度脚を使って行かねば内の壁に悩まされそうなレースか。

ダンビュライト

ジリ脚キャサリーンパー。差すでも押し切るでもなく流れ込む性質があって、その点ではHaloっぽいところがある。ルーラーシップ×サンデーサイレンスにおける非常な典型。

2200mで目一杯脚を使い切って走る展開は得意で、ここも好条件。ただ海外遠征を挟んだのが面白くないところで、このローテでベストパフォを叩き出すことが出来るかどうか。14kg減でQE2世Sへ挑んだのだから、まずは復調しているのかが鍵。

おそらく馬場は14年とほぼ同等の状態であり、もう少し立ち回れる脚質の方が走りやすいかもしれない。

ノーブルマー

トニービン直系らしいズブい動きでRoberto気性を躍動させるが、微妙にSon-in-Law気性もオンになっていて内ラチを頼るタイプ。目黒記念は全てか揃った好展開で、内ラチべったりから勝ち馬ウインテンダネスの猛追の呼応して脚を伸ばした。

機動力は微妙なので阪神内2200mを差し切る画図は書きづらい。


パフォーマプロミス

登るステイゴールドA級産駒なのだが、タニノギムレットの仏的軟さを強く引いた分だけ登りきれない。位置取りに関してうるさいタイプで、その点はステイゴールド産駒らしからぬ。フェノーメノと同じ様な平坦巧者だろう。

4分の1サンデーであればHalo競馬とは必ず無縁とはならないが、ステイゴールドというのはその傾向の薄さに本領がある。だから大物とは言いづらいのだが例外はあるものだ。ただ、その例外が阪神2200mを得意とするイメージもさほどない。

ステイゴールドの面白さは「勝負どころの登坂」が配合によって大いに異なることだろう。オルフェーヴルドリームジャーニーの様に直線での登坂を目指して一気に突っ込む様なタイプもいるし、フェノーメノマイネルミラノの様に脚の使い所に展開される登坂で生きるタイプもある。

超がつく例外がゴールドシップで、京都3200mも阪神2200mも中山2500mもこなしてみせた。宝塚記念2連覇の内容はは「ステイゴールドの二段スパート」でもあって、「ねじ伏せる登坂」と「勝機の登坂」の両面待ち。阪神をこんな風に踏破する馬はもう出ないかもしれない。

戸崎圭太の競馬はハマると思うが、展開へ無理矢理に投じる様な剛腕騎手の方が美味しい馬だろうか。

ミッキーロケット

春天の4着はスタミナ的ズブさが表現されている証拠となるもので、つまり日経新春杯をぶっこ抜いた時の脚はもう失われている。ピークは過ぎた。

アレだけハマって勝てないのだからG1で買う必要がない。一度過ぎたピークから好表現を目指すものがないのである。

ワーザー

控えめに言って好配合。言葉を尽くせばモーリス級の超配合。ちょこちょこマイルを挟むために戦績は汚れているが2000mと2400mではハズレ無し。香港ダービーより5-2-2-0という圧倒的戦績である。

Specialによって4分の4Northern Dancerを克服するという手法は未来的であり、Sadler's Wells直系として揃えるべき血統を代々で抱えている点はデンコウアンジュを彷彿とさせる。またSir TristramのPrincequilloに身を委ねる姿勢はエアロヴェロシティと同じだ。

ただピークは間違いなく過ぎていて、Specialの痛快な気性は既にないはず。そんなことを言って高松宮記念をぶっこ抜かれた気もするので、香港の調教とは気性の激化とその安定に特化しているのかもしれない。なんで7歳馬が稍重中京1200mを爆走するのだろうねぇ。

ただ4分の1サンデー勢と中距離~中長距離で戦うのはかなりハードルが高く、高松宮記念とは別に考えるべきではある。「4分の1サンデー」は魔法の配合で、Northern Dancerの大流行と併せて考えると、過去に類を見ないほどの歪な最強態勢を敷く形。

一国がコレほどの血統を独占状態としていたことは、現代競馬としては非常な例外と言うべきだ。「金銀の流出を防いだ江戸の鎖国」「思想としてのジャージーアクトを成功させた国」とか、色々言いようはありそうなサンデーサイレンス諸事情の日本。

普通に日本競馬の壁に妨げられそうであるが、配合だけを見ればめちゃくちゃすんごいのよね。

ヴィブロス

Halo過多の小回り配合馬。日本競馬を体現する女だ。

ただ国内では稍重府中牝馬Sを2着したくらいであり、秋華賞勝利からは案外な走りが続いている。ドバイでは安定するのだが。

それだけに今回の宝塚記念はちょうど良さそう。馬場は合うと見ていいだろう。ディープ牝馬自体がこういう馬場を得意とするところがある。

ただエリ女の負け方を見ても2000m以上の距離が合うかどうか。やはり1800mが距離の限界であろうし、姉がそうであったようにマイルへの適性がやや上がっているようにも思える。姉の方が宝塚記念適性は高くあったし、競馬も達者で、また重馬場適性も上だった。

秋華賞の内容だけを言っても、姉以上の器であるかは疑問である。ヴィルシーナジェンティルドンナを最も追い詰めた牝馬でもあった。


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