砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

マイルCS展望

ここ数年の勝ち馬は「4分の1非Blue Larkspur」を構成した配合であることに注目したい。

 
それは同時にサンデーサイレンス持ち馬の歴史でもあり、13年からは「Lyphard持ち血統による『4分の1非Blue Larkspur』」と更に情報の幅が狭まる。ウインドインハーヘアやPenang Pearl、そしてメジロモントレー
 
モーリスという化物をこういったアホな情報にくくってしまうのは血統の考え方としてつまらないものである。これに関しては「ちょっとした適性も助けとなっているのだ」くらいでよい。わざわざつまらないことを考えなくとも、いずれモーリス産駒がそれを考えさせにやってくるのだし。
 
とりあえずはディープとハービンの取捨が一つ。それとは別にもう一つの考えを我々は強いられる。
 
非サンデーのStorm Catについて。エイシンアポロンエーシンフォワードの延長線上にあるモズアスコットのこと。
 
 

ディープ×マイルCS

 
ディープインパクト産駒は初年度産駒の3歳であったリアルインパクトマルセリーナエイシンアポロンの5着と6着。NHKマイルC勝ち馬と桜花賞馬が古馬相手に善戦し、リアルインパクトに至っては1番人気を得ていた。
 
初年度産駒の躍動は止まらない。翌年はサダムパテックの3着にドナウブルーが入り、5着リアルインパクト6着ダノンシャークマルセリーナは最速上がりを使って11着。
 
更にその翌年13年にはクラシック路線を走っていたトーセンラーが初マイル挑戦で初G1制覇。14年にダノンシャークと2年目の産駒であるフィエロがワンツー。フィエロはその翌年にモーリスの2着に入った。
 
16年には大斜行で物議をかもしながらもミッキーアイルが2つ目のG1タイトルを獲り、17年には3歳馬サングレーザーがペルシアンナイトの3着に落ち着く。
 
とにかくディープインパクトマイルCSとは縁の深い種牡馬だ。イメージ通りであって、この大種牡馬を語るに適した舞台である。
 
 

ディープ取捨

 
基本はUnderstandingいじりだ。ここをいじってマイル適応した馬はみんな好走する。
 
これは間違いないのないこと。なぜならば、このクラスへやってくるディープの嗜みだからだ。
 
早々に飛ばすが、ディープならみんなにワンチャンある。「◯◯だから消し」「◯◯だから本命」ってのはない。好きなディープ買いなよっ!
 
普段から好き勝手なことを書いているが、マイルCSにおけるディープばかりは口を出し難い。なので、一層の前置きをする。好きなディープ買いなよ、と。
 
では好き勝手をするが、母が異系であったり自己主張が激しくあるディープは消しだ。ディープってだけで安定しているのだから、母ちゃんの伝えるものは可能な限り絞るべき。
 
サトノアラジンは母がStorm BirdNijinskyMr. Prospectorも入りFlambetteの影響がとても強い。平坦ベターでも3F瞬発タイプだ。ディープによくある表現だが、Danzig持ち馬が優勢であるようにFlambette配合は案外。
 
Storm BirdNijinskyよりもSpecialがベター。ただNijinskyによってダノンシャークが輩出されているから一概には。フィエールマンのような異系Nijinskyはディープらしくなくとも一考の余地がある。
 
またSpecialにはFair Trialを取り入れる効果も見込まれる。ダノンシャーク以外はDanzigやSpecialの血を持ち、ダノンシャーク自身はカーラパワー渾身の「一発」。「4分の1Court Maritial4×5」のスペシャリティだ。
 
ウインドインハーヘアが非Blue Larkspurなので、「4分の3」の構成が欲しい。「8分の1Halo」でキタサンブラックばりの本格化過程を進む去年の3着馬は中距離へ旅立った。「4分の3」を尊重。
 
やはりここにもDanzigやSpecialが関わる。ミッキーアイルの母スターアイルは「4分の3Blue Larkspur・4分の1Nureyev」、フィエロの母はBLue Larkspurクロス、などNorthern Dancer直仔によるBlue Larkspurアウトが見受けられる。
 
Norhtern Dancerの本領はBlue Larkspurに関することで、その取り込みの自在性が素晴らしい。キタサンブラックやサングレーザーの様に全く取り込まないことも出来れば、ミッキーアイルジェンティルドンナドナウブルーの様に堅実な取り込みも可能。
 
ディープ=ブラックは圧倒的なほどにNorthern Dancerとして素晴らしい種牡馬なのだと。
 
 

ハービンジャー世界

 
初年度から活躍馬を出したディープに比べて、ハービンジャーは案外だった。3年目の産駒からペルシアンナイト・モズカッチャン・ディアドラが出て京都G1を秋だけで3勝した。
 
エリ女マイルCSはご存知の通りに古馬戦の外回り。そして古馬となったモズカッチャンはスローの外回りで思うように弾けなかった。もともとが小回り向きの種牡馬であるから、若い軟さで攻略した側面はあるのかも。
 
今年はヒーズインラブと昨年の覇者ペルシアンナイトが出走。今春は二頭とも充実していたが、秋は案外である。
 
ディープとは真逆に、あるいはキングカメハメハと似る、父の一部を母によって増幅する様な配合がベター。ペルシアンナイトの配合は極端なもので、デメリットとメリットの天秤に揺れ動くギャンブル配合といえる。
 
マイルCSにおいてはそれで良かろうものだが、本来はモズカッチャンやディアドラのように「母が独自の4×3クロスを持つ」がハービンベスト配合。3歳春に一つのピークを迎えて、そこから古馬としての完成を見込むならば必須条件だろう。
 
その表現は、ほとんどの場合において、ハービンジャーらしい小回り表現と出るはずだ。
 
 

Storm Cat神話

 
嵐猫直系が連覇を遂げた10年11年のマイルCS。いかにも短距離向きのForest Wildcat産駒と、欧米の中距離を騒がせたRobertoマンであるGiant's Causewayの産駒による功績だった。
 
エーシンフォワードはその年の高松宮記念3着。1600mでは一線級とは差があって安田記念を逃げて凡走している。千四のスワンSではスミヨンを背にして1番人気を得るも惨敗して、1ヶ月弱の間に馬体重を10kgも戻してのマイルG1では13番人気も順当。
 
米血統の5歳馬ではピーク落ちも推測されたし、その後の戦績からもそれは正しかった。ただ、マイルCSでは高松宮記念と同じくらいの出来はあった様子。以前から内差しの妙味がマイルCSにあったが、この年に明確な外差しの否定が行われた。
 
翌年の逃げ馬シルポートは差しを警戒したスロー戦を展開。内差し勢はスペースがなくて順調には伸びることなく、差しは外が優勢。しかし番手がまるで止まらずにエイシンアポロンフィフスペトルのワンツーとなった。
 
速いペースで流れると内差しの千四型が間に合い、スローとなると前受けの千八型が完封してしまう。2頭の嵐猫が定めた新たなルールの元、毎年の快速にある騎手は頭を悩まされることとなった。
 
ハイペースで逃げ、斜行により内差し勢を完封・・・ミッキーアイル浜中の走りは決して褒められることがない、だが外差しを自力で凌いだ点ばかりは留意したい。
 
斜行によって潰された馬たちを追い抜き続けるイスラボニータは、G1獲りに不足のないパフォーマンスをはじき出したはず。それを、最後に己を差し出してファイトバックVSファイトバックの争いとした。そして勝利した。
 
G1としての見応えはゼロでも、同世代のNHKマイルC勝ち馬と皐月賞馬が真正面から戦ったレースだろう。「本気の本気でミッキーアイルイスラボニータが争ったら」のIFはない。
 
 

モズアスコット

 
戦績の通りに1400mタイプの安田記念勝ち馬。その安田記念もロスなく運んで最速上がりから内馬場を突き抜けたルメールラッキースケベ。ほんとにいやらしい男だよ。
 
いっつも外から差し込んでたのはMiswakiの扱いづらさがもろに出たタイプであるため。「4分の3Buckpasser・4分の1Bold Ruler×Tom Fool」なんてのは使い勝手の悪い瞬発脚だ。
 
柔くて登るタイプだけれども、その登る段階に勝負の内へ入れるのが困難。外を通っては足りず、位置を取れば切れが鈍い。濃厚なスタミナを引かない分だけ渋さがないのだ。
 
ところが安田記念は前半をハイペースで推移。シメシメと位置を下げながら中団で折り合おう・・・と思ったらゴチャついた。そのまま外へ出すチャンスなく内をロスなく回ることを選択。
 
ちょうどよくスワーヴリチャードが前にいたもんだから、「人気を追撃」というルメールにしては珍しい戦法。どっかでスペースが開くのでは・・・と思えばL200m標識を待たずに進路がドフリーとなった。大人気スワーヴリチャードが大外目掛けて消えたのである。
 
それこそイスラボニータのイメージで我慢し続けていたモズアスコットである。脚は残っているし、登ってからの加速は大得意。きっちり捉えてラッキースケベ
 
超G1級の切れ味はあっても、脚の性質から位置取りが難しい。それがモズアスコット。
 
 

嵐猫の理

 
これはStorm Catのイメージと合わないが、この2頭は道中がスムーズでないほうがパフォーマンスを上げる傾向にある。
 
もちろんスムーズであるに越したことはないが、大抵の要素がそろっても好走止まり。勝ち切りには「コースロス」と「捌き」の要素が必要であるようだ。
 
キズナラキシスの「ディープ嵐猫」対決となった15年の大阪杯。スムーズであったキズナを、捌いて進路を開けたラキシスが捉えている。
 
15年エプソムカップエイシンヒカリサトノアラジン。わずか1頭分ばかり内を走ったエイシンヒカリサトノアラジンの追撃を凌いだ。
 
リアルスティールサトノアラジンのワンツーであった昨年、17年の毎日王冠。内を回ってウインブライトを捌いたリアルスティールが勝ち、その外を走り続けたサトノアラジンは完封負けを喫した。
 
外を回ったもの勝ちなんて話があるのか・・・と思ったらRoberto。Roberto対決はほとんどが外の勝ちだ。
 
他にもモズカッチャンが内を捌いてエリ女を勝っている。
 
嵐猫はロスなく運んだり、捌いたりに妙味がある。エーシンフォワードはもちろん、エイシンアポロンも好位を捌いた勝利だ。
 
あ、比較対象として残念な扱いを受けたサトノアラジンばかりは大外を回る追い込みにて戴冠。ディープマイラーは千四へ少し振れた頃合いのハイペース戦が買い時で、ありゃもう他に敵がいないってくらいに格で勝ったところも。
 
1400mG2を前哨戦として臨んだ16年のシーズンはドドドスロー安田と斜行荒れマイルCSだった。特にマイルCSはもう少し位置取りを後ろにして最内を突いていたらエーシンフォワードコースだったのではないかな。外へ進路を切ったからモロにやられたわけで。
 
あのレースにIFがあるとしたらそれではないかと。あの位置ではペースが厳しいし、最内一気を決めるには難しいタイミング。溜めを入れてミッキーアイルの斜行の前兆を読む猶予があれば。
 
 

共通のこと

 
エイシンアポロンエーシンフォワード・モズアスコットにある共通点はTom Fool表現とBlushing Groom
 
平たく言えば「Blushing Groomの気性で短距離を走り、Tom Foolの機動力でビュッしますよ。」ってことか。Spring Run≒Tom Fool≒First Roseによる適性とも。
 
上で書いたようにモズアスコットはエーシンフォワード寄りの馬。
 
エイシンアポロンBold ReasonNever BendからのFairy Bridge≒Robertoで自在表現。ハッとしてグッと来てパッが出来るRobertoサドラー。重厚な機動力でスローなら前受けが可能。そこで折り合ってからの末脚も上等だ。
 
けれどエイシンアポロンと同じ様にSadler's Wellsを持つ。大きな共通項であるのだが、やり口は似ていない。
 
過去の勝ち馬にはカンパニーやトーセンラー、モーリスといったSadler's Wells持ちがあるけれど、モズアスコットはいずれにも似ていない。強いて言えばカンパニーであるが、トニービンの異系っぷりを考えると流石に。
 
ソウルスターリングのような馬ならばSadler's Wellsから語るのもやぶさかでないけれど、モズアスコットはちょっとサドラーとして語るのは難しい。Danehillから語ったほうが理屈は通る。
 
 

Danehillの速さとは

 
Danzig直仔種牡馬として最優秀のラインを誇るDanehill。更にその直系としてはDansiliがあって、これがハービンジャーの父。
 
しかしDanehillハービンジャーはほとんど無関係で、おそらくDanehillをクロスしても簡単に短距離へ傾くことがない。それほどDanehillは頑強なスピードを伝えたし、柔らかなスタミナを迎い入れやすい血統だった。
 
ロードカナロアみたいに「僕、意外と中距離いけますよ。」みたいな顔した短距離血統よりも、ガチガチなスピードであるDanzigDanehillの方がスタミナを取り込みやすい。
 
それは目で見て分かるってくらいで、Rainbow QuestやStage Door JohnnyほどのスタミナをKindは取り込んでいる。こんな芸当、ロードカナロアにゃ出来ません。やる必要もない。
 
Frankelの代にはAllegrettaが導入され、併せて二つのスタミナ源だ。流石のDanehillでも・・・と思わされても、Buckpasserのクロス一本で復活してしまう。それほどにこのスピードは頑なである。
 
これを封じるにはNorthern Dancerばかりを積み上げてDonatello×Hyperionを添えるしかない。DanehillのスピードとはNatlma3×3の緩和箇所によって弾き出されているのだから、逆を言えばNatalmaはスタミナなのだ。Natalmaを起点としてスタミナを取り込む一手である。
 
緩和箇所ではなく緊張箇所をイジるのでバランスを整えるのは難しいことだ。けれどHis MajestyとBuckpasserなんてのは大層な緩和であるから、デリケートではない。牝馬クロスってのもあるし、Natalma自身がNorthern Dancerの隆盛を支えた大変な異系でもある。
 
よーく考えなくともDanehillってのは素晴らしい血統。やろうと思えば何でも出来るし、そのとおりに流行の中心に、今も、いる。
 
 

最後に

 
モズアスコットのスピードはDanehillから権利を譲渡されたMiswakiを中心に語られるべきである。
 
逆を言えば、全ての表現はDanehillから語られる。なんたってほぼ全クロス状態なのだ。
 
Golden Trailの一家にある、Frankel×Storm Cat・・・つまり「4分の3War Admiral≒Eight Thirty」かつ「4分の3Honora」を構成する配合だ。
 
モズカッチャンと同馬主であるということなので、この類のDanzig表現がされていると見ていいだろう。東京の方がよっぽど前を捉えやすいが、京都の方がよっぽど切れる。
 
おそらく、歴代最強クラスの外差しが飛んでくるはずだ。スローから31秒台でかっ飛んでくるって話でもないが、大体のペースでは5馬身差をセーフティリード足り得ない。
 
しばらく大人気で大外競馬だったが、もうそろそろ「実は馬群嫌いなんじゃないの?」と伺いの枠がくる。普段より一頭分内に入れて競馬をしたらね、そりゃもうヤバイやつですよ。
 
ルメールはずっと壁を作りたかったんだ。
 
 
[fin]