砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

出走馬チェック 関屋記念予想

だいたい決まってきたんだが決定打に欠ける。なんでだろう?


多分それは各馬の能力を計りきれていないからだ、と。

1番サトノギャラント

 重賞級産駒に事欠かないレガシーオブストリングスの牝系。しかしG1を勝ち負けする産駒は出ておらず、どこか頼りない勝負弱さがある。原因は牝系の奥から漂う身軽な鋭さにあって、一族の多くはそれに左右されてしまっているのだと。

 現代日本競馬というのは「重厚なスタミナをサンデーサイレンスによって身軽にさせる」という方法を取ることが多く、この牝系はスピード過多となってしまうのだろう。本馬の母スティンガーはサンデーサイレンス産駒で、重賞勝ちは千四~千六に固まる。それにシンボリクリスエスを重ねてみるとRoberto直系の重厚さはあるが累代で重ねられた重厚さではないので線が細い。

 親戚のハギノハイブリッドは母母がスティンガーと同血でそこにトニービンタニノギムレットが重ねられている。その重厚さにモチジュン先生はステイヤー説をとっておられていたが函館記念のレースぶりに「まくりの中距離馬」と評価を変えられた。この配合でも中距離戦線に留まれる速さをレガシーオブストリングスは伝えるのである。

2番エールブリーズ

 父は短距離とダートの名馬を輩出しているフジキセキ。最後の最後にイスラボニータによってクラシック勝ちを得たが、基本的に早熟性とか中距離なんかとは無縁である。母系にボルキロを持つことから「ナスキロ柔い」馬を出すこともあり、本馬の母父がCaerleonでそのパターン。母父カーリアンブエナビスタレッドディザイアダノンシャークなどの一流外回り馬が出るので配合としてありだろう。

 Caerleonはラトロ牝系に属する名血だけあって単体でも十分な重厚切れを伝え、ドイツ的スタミナとは相性が抜群。レッドディザイアの父であるマンハッタンカフェ、そしてブエナビスタはSanta Lucianaの牝系に属する親戚同士だ。ダノンシャークもTeddyをスタミナ化した牝系にある。

 それらに比べると本馬は流石に物足りない配合形だが・・・そもそもフジキセキの観点から言えばその類のものはいらないのだわ。In Realityで彼は走っているわけだからWar Relicさんを継続するべきで、賞金上位はトニービンディクタスノーザンテーストというゴールデンサッシュの傍系であるドリームパスポートLe Fabuleuxを使ったりしているけれども、イスラボニータなんかはIn Realityクロスの一発だけで皐月賞を勝ち切ってしまった。

 フジキセキ産駒としては中の下。母父カーリアンとしては上の下。フジキセキ×カーリアンという配合形自体は中の上。まぁきちんと整ってはいる東京千四巧者なのだと。

3番スマートオリオン

 歳もあって少しズブくなり千四馬となった元スプリンター。父グラスワンダーは確かに小回り的だが母父ウイニングチケットトニービン産駒のダービー勝ち馬で、こちらはロングストレート的なものを伝える。

 面白いのはグラスワンダーが「まくって並んで競り落とす」馬であったのに対し、ウイニングチケットは「差し込み並んで競り落とす」と、根っこのところでは同じ競馬をしているところ。だからスマートオリオンが「並んで競り落とす」馬に出たのは当たり前で、ベストパフォーマンスは前走の中京記念だろう。まくり差し込み競り落とした。

 今回は平坦コースかつ逃げ馬不在であるからハイペースは見込めない。新潟マイルらしい後傾ラップとなるだろう。登坂で競り落とす馬であるから平坦は痛手であるし、ハイインローを発揮するだけの持続戦とならないわけでもあるから・・・少し厳しい戦いになるのではないか。

4番マジェスティハーツ

 ハーツクライの中距離馬。頭角を現したのは神戸新聞杯の2着で、それ以降は中距離戦で大阪ハンブルグを2着、新潟大賞典を2着とそこそこに走った。しかし陣営は未だに中京マイルでの好走を忘れられないらしく(条件の長久手特別を含めて1-0-1-0)時々マイルに遊びに来ては惨敗を繰り返している。何を目的としているのかが謎なんだわなぁ。

 中京マイルは外が届く限りでは中距離馬が躍動する舞台で、フラガラッハやミッキードリームなどが中京記念では「リピーターってこういうことよ!」と同じ結果を繰り返していた。そもそも平坦は京都と新潟をあわせて0-1-0-7という悲惨な状態であるのに何故ここに来たのか。新潟大賞典新潟記念に向かうのであれば理解できるが。

5番カフェブリリアント

 Lady Josephine的なスタミナとラトロ的なスタミナを揃えつつもBT×Woodmanでハイインローを重ねた好配合。ゴールドアリュールをつければG1級のダート馬が出るだろう。淀みなく流れた阪神牝馬Sを好位からサラッと交わしたのは順当すぎる結果で、福永ではなく岩田だったならば1馬身差で快勝していただろう。

 前走は千四馬としては上々の出来だが直線に入ってからの反応が思わしくなくて、前が塞がったからなのか、隣のストレイトガールが驚異的過ぎて相対的に悪く見えるのか、ちょいとそれは分からないが千四馬としてはあそこでビュッと行かなかればならない。最後の最後に詰め寄るというのはピュアマイラーが脚を余したか千八馬がスロー気味に受けて脚を使ったかでしか起こらない現象。

 まぁ、あそこで俊敏に動けないのがブライアンズタイムでもありカーリアンでもあるのかなぁ、とも思うしねぇ。基本的に前受けの馬だから差しのストレイトガールと並んでしまえば脚色の違いに霞んで見えるのは仕方ないわ。

 それでも33秒3の脚は使ってるから1000m通過は59秒1ということになるのかな。でもこれって千四的な追走能力使ってなくね?それで33秒3の脚を使ったの?そりゃレッドリヴェールヌーヴォレコルトの間に挟まるわなぁ。納得。つまりカフェブリリアントはピュアマイラーなんだよ。脚を余したピュアマイラー

 すると鞍上福永はマイナスだ。買いたいけど鞍上が邪魔をする。なんということでしょう。

6番アルマディヴァン

 華麗なる相似配合の名牝候補。Rivermanの差し牝馬らしく鋭くはないが渋い差し込みを得意とする。ラトロの差し脚への流れ込み方といいハイインローとノーザンテーストの共演といい、やたらとかっちょいい配合。VMは後ろで受けすぎたので度外視。

 これもまた中京記念の負け方がなぁ。多分スマートオリオンあたりがイーブンペースだからアルマディヴァンは後傾になっているはずなのよ。下ってからジリジリと詰めているし、脚の残しかたもまるで千八馬。カフェブの様にピュアマイラーとの断定は出来ないが可能性はあるな。もう少しマイルでは前受けして欲しいところ。根本的にスタミナ色の強い配合形だから好位から差した方がいいし、出来れば先行までしたほうがいいのだわ。

 

7番シャイニープリンス

 キングヘイロー産駒は手先が器用でロスのないフォームで走るタイプが多く、中山二千二で華麗に押し切ったクリールカイザーや旧中京の高松宮記念-スプリンターズを逃げ切ったローレルゲレイロなどがある。他にはカワカミプリンセスとかシャトーブランシュなど。

 本馬はキングヘイロー×リンドシェーバー×テスコボーイ×ネヴァービートだから機動力も靭やかさも兼備したタイプでキングヘイローの傾向そのままか。フワッと流れこんで3Fをスパッと切れる競馬で東京マイルでは2-1-1-3のハズレ無し。反面、新潟マイルでは0-0-0-2でアタリ無し。

 その二走は昨年の関屋記念京成杯AHで、共に外枠だったのが不振の原因かと。機動力を活かしたいわけだから外に回ると持ち味が激減する。基本戦術は外回り戦の4角で取り付いてジッタラジッタラと交わすというものだから、新潟でもやりようはあると思うけれど・・・。

 それでも新潟は600mもの長い直線があるから機動力など必要とされないのだわ。400m級の直線ならば立ち回ることもあるだろうがねぇ。ベストパフォの東京マイルでも最後の最後に交わされるパターンが多いから直線の延長はマイナス。それだけストライドで差される危険が増えるから。

8番アルバタックス

 キンカメ×フジキセキならば母母のところでNDを引いておきたかったが、まぁよろしい。母母母がSpecialとニアリーで、AlydarMr. Prospectorとニアリー。乱暴に言えばKingmamboタックスヘイブン

 しかしフジキセキがボルキロを引くので外回りの傾向が強くなり、SpecialとHormbeam、Stevedoreの「ナスルーラハイペリオン」の組み合わせがオンになっている様子がある。外から延々と追い込んで最速の上がりを記録した中京記念はそのイメージ通りで京都千六で1600万下を勝っているから下りで加速できるナタ切れなのかな。中京で差しを打てるというのはそういうことでもある

 新潟の下りはコーナー込みだから機動力に不安のある本馬には少し使い勝手が悪い。使わなくとも600m超のストレートがあるから問題はないかねぇ。平坦の方がこなしやすいみたいだし前走からの上昇は見込めるか。ストライドロスを抑えたいところ。

9番ゴールドベル

 今走最大の惑星。ステイゴールドをFair Trial的に弄るというのは隠れた名配合で、My Babuを加えるのは常套手段。黄金配合の「母父メジロマックイーン」というのはそれらに加えてノーザンテースト弄り、非ND血脈を4分の1占めることでノーザンテーストの強いクロスを可能とするという全てが噛み合うものだった。

 ベストパフォーマンスは四位のおっさんを鞍上に据えた多摩川Sで、東京千六を淀みなく逃げて逃げて4着まで残った競馬は千四馬として極上の結果。しかし小牧太の差しで勝っているわけだから粘るための背景が一つ足りないとも言える。ハイインローを背負ってマイルを逃げるか、ラトロ牝系を加えて千四を逃げるか、どちらも取れない半端者・・・今回で言えばレガシーオブストリングス牝系に似た弱さがある。

 それでも千四馬としてのしぶとさはあるし、流石にレガシー血族ほどに線は細くない。近頃見せる小牧太のささやかな逃げ味と平坦コース、そして殿人気を思えば買わない手はないのだが。元来、ステイゴールド産駒とは平坦でこそ買うべき種牡馬である。

10番ヤングマンパワー

 父スニッツェルオセアニアの名スプリンター。恐るべきはそのピッチの速さと靭やかさ。前脚の捌きが綺麗で無駄がなく可動域が広く、つまり柔らかく前へ進んでいるのにピッチが速いという矛盾がある。後ろの蹴りが生む推進力が凄まじい。

 スニッツェル自身はデインヒルの表現がフェノーメノに近く、それは本馬にも受け継がれている。後駆の強さでストライドを伸ばすのはスニッツェルの日本向き産駒として正しい姿で、ヌレイエフとナスキロラトロのRivermanを持ってきたのは大正解だろう。Vaguely Nobleのスタミナもこれから楽しみな材料である。

 問題は何が表現されているのかだ。アーリントンカップの差し方を見るには「HyperionNasrullah」のナタ切れに見えるが、NHKマイルCの負け方を見るとハイインローナタギレーらしくない。NZTもまた大外を回ったナタ切れならばあそこからドスコイドスコイと寄り切ってなんぼなわけで・・・アーリントンカップの勝ち方が不自然に見える。

 整合を取るならば「スローから2Fで弾ける馬」てなもんで、NZTでプスーンとなったのは持続戦巧者だから。デインヒル直系と思えばロングストレートは苦手と見ても変なことではないし、それは親父たるスニッツェルを見てもそうである。外回りで馬券になることすら難しい種牡馬だものなぁ。この戦績でアーリントンを9番人気ってのは小回り巧者だと皆が見ていたからだろう。

 上がりのマックスが34秒で止まっている小回り馬を新潟マイルでは買えない。ハイインローの花咲く秋にまた会いましょう。スワンSあたりかな。

11番エキストラエンド

 「外回りの帝王」を父に持ち「悲運の小回りマイスター」の兄を持つ名血馬だが、その整合性の取れなさに甘んじて重賞では不器用貧乏になりがち。立ち回ればまだマシなのだがその類の器用さをディープの柔さに消されてしまったから直線一気の追い込みで「前が止まれば儲けもの」を続けてしまう悲しさ。機動力も加速力も靭やかさもいい具合に備えているのに全てが活かされる時はこない。

 ダービー卿CTの4着がその宿命を物語っている。2Fでスパッと隊列が整う中山マイルで五分のスタートは切ったが二の脚が足りない。岩田が外につかれるのを嫌って引っこ抜き、一気の脚でまくり差し込んで4着。まくり一閃で勝負を決めたモーリスとは雲泥の差。

 馬群の中で発揮する機動力は持たない。しかしまくれてしまうという悲しさ。これだけまくれてしまうのは外回りの直線一気馬としては致命的で、母のまくり血脈を確かに受け継いでいる証。

 元々Mill Reefなどのナスキロラトロは好位から重厚に差し込む脚であって、追い込む脚ではないのだわ。ゲートの二の脚がつけば全て噛み合うだろうに、その最低条件がクリア出来ないという葛藤。まず新潟での好走は難しいだろう。

 京成杯AHは惜しかったのよ。ゲートの達人三浦皇成が内枠から好スタートを決め、つかない二の脚を押して押してなんとか7番手までこぎつけた。でも内の馬場はくそったれで、外へ出したく手をこまねいているところに外側を並走していた同じ勝負服のキングズオブザサン蛯名が内へ寄れてくる始末。「はぁ?死ねよ」と外の蛯名を睨みつける三浦皇成。押し込んだことに満足した蛯名はソロソロと馬場の良い外へまたよれていく・・・。エキストラエンド、不運なり。

12番レッドアリオン

 Aureole魂が表現されたクラレントの弟。夭逝したアグネスタキオンの数少ない現役産駒の中ではトップクラスの素質を持ち、千八馬のくくりではイスラボニータとも比肩するのではないかともっぱらの噂である。「でも千八じゃ未来ないじゃん?」と橋口のとっつぁんはマイル戦線を転々とさせるが馬群を嫌うAureoleレッドアリオンには茨の道だった・・・というあらすじ。

 結局は馬群を嫌って外を差し込むかハナを切るか、あるいは展開によって単独の番手を得るかしかないわけで、エキストラエンドとはまた違うところで不器用な馬である。しかし貧乏ではないところが面白く、不器用と引き換えに得た持続力と亡き父から譲り受けた差しの鋭さという二芸を持つから、断然こっちのが競走馬として有能である。

 それでもマイラーではないし、千四馬の加速には負けるし、しかも新潟マイルは2Fの先行争いだから決して好相性ではない。阪神外や京都外、東京などの千八馬が揃いやすく3Fで争える舞台ほどは走らないだろう。

 中京記念よりは上昇するだろうが新潟は未だ外差し馬場ではないのだから届く画は描きづらい。富士Sのようにアタマ差のリードを保ちながら併走差しでも決めれば面白いし、すぐ外にいるのがその相手であるエキストラエンドであるから可能性としてはアリだ。ただ問題は59秒4のスローに落ち込むかであって、それは否定するしかないと思うのである。

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