ナスルーラ直系の化け物が一頭いると便利そうなのだけど
ウイポとかやってるとやはり異系ってのは重要で、ノーザンダンサーとかミスプロを持たないのに優れた能力を持つ種牡馬ってのはめちゃくちゃ便利なのだわ。ただしアウトブリードが過ぎるとあんまりおもしろくなくて、その辺りはやはりサンデーサイレンスが最も優れた教科書だろう。
Haloの血は日本競馬には馴染みが深いもので、クロスされることも珍しくないのだがサンデーを経由しないHaloクロスって非常に少ない。キングヘイローやグロリアスソングの仔らなどを使うくらいだろう。
実際wikipediaによればサンデーが日本へ輸入されることとなった背景にHalo系の不振がある。サンデーの母Wishing WellがB級牝系であることに加えられて種牡馬とされるのを敬遠されたのだわ。
牝系は大切なのだわなぁ。ステイゴールドもハーツクライもディープインパクトも牝系から全ては始まっているわけで、競馬史における絶対正義って名繁殖の存在だけだろう。だからサンデーサイレンス×ノーザンダンサーのAlmahmoudクロスは絶対正義であって、それからの連鎖反応によって辿り着くMumtaz Mahalもまた絶対である、と。
その孫であるNasrullahはあらゆる地域に種を落とし、様々な国で活躍馬を出している。一番影響が強いのはアメリカ。Bold Rulerから通じて脈々とサイアーラインは続いているし、母系に入ればMr. Prospectorという最強種牡馬がいて、またRobertoなんかもいる。
そういった中でモチジュン先生の「ボルキロ」だとか「ナスキロ」という組み合わせが生まれ、今なおその勢力は拡大しているわけだが・・・このニックスって名繁殖とかの伝わり方じゃないないのだよねぇ。
おおよそこれはハイインロー的な手法をとっていて、強いクロスを緩和すると共に重要なところはクロスするって単純にして難しいことをしているのだわ。ナスルーラの強いクロスと言えばNearcoのセントサイモン。重要なのはCylleneとBlandfordの母系。そういうことじゃなかろうか。
CylleneをMinoru経由でクロスすることでSeleneへの橋渡しとする。Bayadoを異系として取り入れることでGainsboroughへ繋がり、後に加わるであろうHyperionやMahmoudへのアプローチとするわけだわ。それってつまりいずれは訪れるNorthern Dancer祭りへのアプローチでもあって、逆に言えばNorthern Dancerが繁栄したからこそナスキロやボルキロは繁栄したのだわ。そしてその祭りはサンデーサイレンスへと引き継がれ・・・Northern Dancerの繁栄によってサンデーもまた繁栄したのだ、と。
同じMumtaz Mahal牝系のロイヤルチャージャーやマームードがPrincequilloを要求しないのは地力でBlenheimやGainsboroughを備えているから、とも読み取れるわな。それどころかサンデーサイレンスってMahmoudクロスにSun Princessへニアリーをつなげているわけだから、サンデー直仔の代においてはナスキロやボルキロを必要としないということでもある。
例外にはマツリダゴッホやフジキセキがあるけれどもGraustarkとかIn Realityとかごっついもの抱えているからな。でもそういった「サンデーらしさ」へのアプローチを行った種牡馬ってバランスは悪いかもしれないけれど種牡馬として成功しやすいのかもしれないな。
こういった風に見てみるとやはりPrincely Giftってのは面白くて。この日記を書くきっかけがモチジュン先生ブログのコメントにあった「Princely GiftはなぜPrincequilloを必要としないのか」みたいな奴でね。「そういやそうね」と血統表を眺めてネタ集めして今こうして書いてる。
その理由ってThe Tetrarchをクロスしていることにあるのだわ。
ザテトラークは種付けの難しい馬だったらしく僅かな産駒しか残せなかった。けれど自身の優れた能力そのままに優れた産駒を出し続けた。ウォーエンブレムにそのあたりは似ている。
最高傑作はMumtaz Mahal。牝馬だてらにザテトラークの血を大いに広めたその功績は競馬史における一つの奇跡ではなかろうか。男馬と違い十数頭ほどしか血を残せない女馬の身で世界を席巻してみせたのだ。競馬ファンはMumtaz Mahalを超える女性を一生見出だせない呪いにかかっていると言っても過言ではない。
Mahmoud様(現世に生きる人間のハンドルネーム)が「今の競走馬は全てMumtaz Mahal的スピードの影響下にある」みたいなことを仰っていた記憶があるようなないような。そのスピードの根拠はやはりザテトラークだろう。それをクロスしてスプリンターと出たPrincely Giftは妥当。(ザテトラークもムムターズマハルもスプリンターとして戦歴を終えている)
しかし時代の流れとして「スプリンターの速さを中距離へ誘導する」というのが正道である。その結果としての「ナスキロラトロ」「ボルキロラトロ」のMill ReefやSeattle Slewなわけで、スタミナ補完をしてなんぼなのだ。
Princely Giftは正道からハズレてしまったのだから残された道は少なかったはず。その正解であろうGainsboroughクロスの母から出たテスコボーイって「プラスマイナスゼロ!」みたいな単純な配合なのだわ。「Princequilloを介することでHyperionへ橋渡し?そんな甘いこと言ってんじゃないよ!」と物理攻撃でHyperionをぶつけるその心意気にはしびれますわ。
ロイヤルチャージャーにしろナスキロにしろ、近い代にHyperionを持つことは少ない。「ネアルコとハイペリオンは逆ニックス」と言われていたくらいだからよっぽど仔が走らなかったのだろう。それでも「Nearco×Hyperion」のNearcticがいるし、SpecialやHornbeamなんかの「ナスルーラ×ハイペリオン」もいる。整合性がとれりゃ走らないわけでもなかった様子。
それでもPrincely Giftでそれをやるのは冒険だろう。セントサイモンの黄金比配合馬が2*4*4だぜ?Nearcticが2*2であることを考えれば同じくらいの大冒険だ。歴史的大冒険。でもそれで走れば正義よな。
それから「正義?正義と言ったな貴様!」と冒険続行の判断を下したサクラユタカオーには頭が上がらないよねぇ。だがしかし、ザテトラーククロスのナスルーラ系を重ねるという天衣無縫の所業はサクラユタカオーの種なし化という悲しい必然へ導いてしまった。ザテトラークは種付けを嫌ったという・・・。
せっかくテスコボーイが中距離的になっていたというのにサクラユタカオーがもう一度ザテトラークへ揺れ動かしてしまった。つまりこの段階(サクラユタカオーの産駒)においてもナスキロやボルキロというのはあまり大きな要素足り得ないというわけだ。
むしろここから所望するはスタミナ・・・歴史は面白い。本当にそう思うよ。サクラユタカオーの花嫁は春の天皇賞勝ち馬の妹なのだから。この相手を一年目に得て一発で驀進を産んだってのはすごく面白い。それが生粋のスプリンターというのもすごく面白い。
ユタカオーの代ではそんなにザテトラークとしての影響はなくて、ネヴァービートのクラシックディスタンス的なもので中距離を走っていたのかな?相似配合気味にGainsboroughやBlandfordも抱えているから2000mくらいはこなせそうではある。
でもその仔の代では活躍馬のほとんどが短距離へ向いているからPrincely Gift≒ネヴァビートのザテトラーク的スピードが暴走している感じではある。牝馬に出ると中距離で活躍するというのが面白いなぁ。
牡馬の方が頑強に出て、牝馬は靭やかに出る、という話にそって考えると・・・サクラユタカオーというのは筋肉の重さを伝えると言うよりは脚さばきの速さを伝えるイメージなのかもしれんね。だから牝馬になって緩くなると中距離でも保つし、牡馬だとスピードに乗ってどっかに行っちゃう。
これを「ナスルーラ的」というのであればそのナスルーラが最も繁栄している北米から血を引っ張ってくるべきで、この頑強さによってズガーンズガーンと突っ走るサクラバクシンオーというスプリンターが産まれた・・・というわけだが、その北米血統サクラハゴロモの全兄が春天と有馬を勝っているというのがなぁ。血統の面白いところというか。
ノーザンテースト自身が母系に入ると短い距離へ誘導する様なところがあるから、サクラハゴロモ=アンバーシャダイが変なのではなくてノーザンテーストの特性なのだわな。だからこそサンデーと喧嘩していたのだし。
こうしてみるとサンデーサイレンスってのはひどく調和の取れた名馬だよなぁ。対してサクラバクシンオーというのは極端なその場しのぎによって産まれた歪な名馬だ。
Princely Gift「ムムターズマハルが素晴らしいんだからザテトラークをクロスすりゃいいのよ」
テスコボーイ「でもスタミナも大事だわ」
サクラユタカオー「スタミナ補完したし直近ニアリーでスピード捻出するわ」
サクラバクシンオー「スタミナ補完したはずなのに」
スピード→スタミナ→スピード→スタミナと極端なことばっかりやって、気がついたら配合の妙によってスプリンターしか出さないヘンテコな馬にたどり着いてしまった。でもこの馬は間違いなくNasrullahの、ひいてはMumtaz Mahalのスピードで突っ込んで行くスプリンターで、失くすには惜しい血統だと思うのだわ。
ショウナンカンプ「Princely Gift≒ネヴァービートの火を絶やすでない」
ショウナンカンプ「でもカザンはやり過ぎじゃないかね?」
サンデーサイレンスってのはナスキロじみた血統だから「似非ナスキロ」となったサクラユタカオーを正道へ導いてくれればよかったんだが、これが上手く行かなかった。もし「サンデーサイレンス≒サクラユタカオー」が成立していればクソ強い中距離配合として名を馳せていたかもしれない。
すると別の方向から攻めるしかないのだがサクラバクシンオーの仔の代ではナスキロを入れることに意味がなかった。なぜならサクラバクシンオーは母サクラハゴロモ、ひいては母父ノーザンテーストの北米力を引き継いで、「ナスルーラで鋭く、北米で力強く」のスプリンターとなっていたからだ。ナスキロって基本的に中距離馬の要素だからグランプリボスみたいな変わり種じゃないと意味をなさないのだわ。
グランプリボスは驀進×サンデー×セクレタリアトで、やってることは「サンデーのナスキロ的成分をセクレタリアトで浮き彫りにして驀進成分を中距離的に中和する」というものだろう。足し算引き算で対抗するあたりにPrincely Gift直系の匂いがして、よくも悪くもこういうことしか出来ない種牡馬なのだろうなぁ。
それでもサクラユタカオーに端を発する「似非ナスキロ」のスイッチをグランプリボスの母系に移し替えられた可能性もある。スクリーンヒーロー式に父父ガン無視の母系弄りアタックが決まるかもしれない。
いや、スクリーンヒーローを例に出すならサクラユタカオーがそれに近いんだわ。相似配合ながらも配合のきっかけは母系に依存する。程度の違いはあれども・・・。
スクリーンヒーローの配合をHail to ReasonとNorthern Dancerのクロスを肝とした相似配合として、主導権をダイナアクトレスを譲渡した・・・という風に見るならばサクラユタカオーの母であるアンジェリカをニアリーしたショウナンカンプが種牡馬として中距離馬を出す理屈は通る。
でもダメなんだよなぁ。マイルまで届いたから距離延長は果たしているんだけども。
サクラユタカオーが日本で生きた以上はサンデーサイレンスという最高級のナスキロへ流し込まなければならない宿命を抱えている。しかしこの「似非ナスキロ」をいかにしてサンデー的に昇華するのか・・・。
その可能性を見出したのがヴェルデグリーンだろう。ジャングルポケットを介することでサンデーとの調和をとったこの馬の価値はジャンポケよりもユタカオーの観点でこそ認められる。もっともっとジャンポケ×ユタカオーを見たいものだわ。
こういう時にターゲットがあればやりやすいのになぁ。さすがに長くなりすぎたので次に持ち越そう。収集がつかないどころか自分でも読みなおすのが面倒な長さになった。
[追記]
ジャンポケにユタカオーを入れた配合は
ジャングルポケット×スペシャルウィーク×サクラユタカオーのヴェルデグリーン
決してモノは多くないのにG1勝ちまで行ったのはなかなかのもの。ジャンポケはミスプロでザテトラークを補完するのがベターだから同じようにPrincely Giftを使うこともまた多い。賞金上位の9割方はどちらかの手段をとっている。ミスプロ6のプリンスリーギフト4、あるいは7:3くらいかな?
他にサクラバクシンオー×ウイニングチケットの配合馬は二頭あって二頭とも2勝以上を上げている。サクラユタカオー+ノーザンテースト+トニービン+マルゼンスキーは固い配合。
[fin]