砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

Roman的ディープインパクト観

別にデータなんかは調べちゃいないが、方向性をなんとなーくで。


Romanってのは戦前の馬だが別に何かしらの戦績があるわけでもリーディング争いを演じたわけでもない。直仔に優れた競走馬がいるわけでもない。しかし母系に入ってなんかしらんが上手いこと作用しているらしくて、この血を持たない馬というのは想像よりずっと少ない。

テディ系×サンドリッジ系×ヒムヤー祭りという配合形で、セントサイモンへ対するアプローチに優れた配合馬とも言えるだろう。非セントサイモンの主流・・・つまり米血的アウトサイダーとして活躍したレキシントンを緊張させていることが現代競馬に大きな影響を与えている。

配合論の観点からすりゃこの血を緊張させない理由がないくらい。Pharos=FairwayやHyperionとは結局のところセントサイモンで走っているのだから、それをアウトとするレキシントンの血を増幅することは大きな意味を持つ。

それとは別にパワー加速の方向が強くなる。ディープインパクトと言えば飛ぶように走ると言われ、古馬になったあたりでは「ディープがいま翼を広げた!」とか「確かに飛んだ!」とか実況が寒いことを言い出すこともあった。

しかし実際のディープインパクトというのは滞空時間が非常に短いことが知られている。この言い方も競馬ファンにとっちゃあまり正しく思えないだろう。

正確に言うとピッチ走法とストライド走法が両立した馬なのだわ。

三冠馬の偉大さに関しては菊花賞予想の時に少し考えた。

皐月賞というのは「最も早い馬が勝つ」と言われていて、またこれとは別にクラシックでは最も距離が短いことから「最も速い馬が」という話もある。個人的に言えば「最も早くスピードに乗る馬が勝つ」のが皐月賞だろう。あの小回り戦で一番素早く加速する馬が勝つ。

ダービーは外差しによる勝ちが大多数を占めていた時期だ。皐月賞が加速勝負であればこっちは最高速勝負。好位競馬の達人である武豊がダービーだけは勝てないと言われていた様なレースだ。

これらは相反するレースだろうが、ディープインパクトはいとも容易く突き抜けている。最も加速の鋭い馬が勝つ皐月賞も、最も速度の限界が高い馬が勝つダービーも。彼は同世代において「最も加速が鋭く」「最も速度の限界が高い」馬だった。

そして菊花賞も勝つ。誰もが三冠阻止に動いたレースで、それは完璧にハマったはずなのに。佐藤哲三という武豊の対極に立つ前受けの名手と横山典弘といういぶし銀の頂点に立つ名手を相手取って簡単に勝ってしまった。

この2005年のクラシックほど面白くも有意義なレースは過去にないだろう。ディープインパクトはこの3戦で「どんな条件からでも一番速い差し脚を使う馬」と馬産家にアピールしたのである。

おそらく加速力というのはFair Trialから抽出されているのだろうがRomanの娘であるPocahontasもその一躍を担っている。最高速の方はHalo≒Sir Ivor経由だろう。サンデーサイレンス×ウインドインハーヘアという配合の表現できる全てを正しく有効に使い切った馬と言える。

しかし種牡馬としてはHalo≒Sir Ivorを強く伝えた。とにかく柔い。柔らかすぎて中山に適応できない産駒が目立った。俺などは「ディープ産駒は永遠に中山G1を勝てない」と言っていたクチだがジェンティルドンナがそれを打ち崩した。

でもLyphardクロスの内回り力は認めていてトーセンラーなんかをヒモで狙おうかとも悩んだりしてたのよ。スピルバーグハープスターの回転力に度肝を抜かれていたし、モチジュン先生のブログにドハマリして過去記事を漁ったりで。

だけれど回転力の先と回転力の質にディープ産駒は傷を持っていた。スパッと切れた先が甘かったり高回転を維持して小回りを行けなかったり。ハープスターなんかは好位で動くだけの気性がなかったしね。

ジェンティルドンナというのは強い競馬をして強く勝てる馬だった。素質というか走り自体においては飛び抜けちゃいないんだけれど、競馬は上手いし牡馬を相手に揉まれても闘争心を失わない。競馬がヘタクソなディープ産駒にしちゃ結構珍しいよねぇ。

だからRomanという泥臭い血をクロスしてもあんまり活用されない。この血を弄っていないディープ産駒っていないに等しいんだがねぇ・・・。

G1勝ちの馬を見ると分かるがほとんどがRomanを弄っている。あとはHail to Reasonいじり。母NothirdchanceがRomanと近い血統構成をしていて、こちらから弄る手もあるってわけよ。Revokedを使うとNothirdchance≒Revoked≒Romanという見方が出来る。Nothirdchance≒Romanとは少し言いづらいからね。間にRevokedがはいるとぴったしなんだ。

けれど親父と同じようにFair Trialの側役程度にしか使われないのが実情だ。

しかしブラックタイドってのはウインドインハーヘア母ちゃんの影響が非常に強いから泥臭く勝つのよなぁ。サンデー×Lyphard+ハイインローの典型的な馬を出すからLyphardクロスとRoman(ニアリー)クロスで前受けからめちゃくちゃしぶとい。

京都馬場は悪夢のような有様だが傾向は変わらなかったと言える。ナスキロクロスのリアルスティールをHalo≒Sir Ivorの非ナスキロクロスのキタサンブラックが凌いだ。ブラックタイド産駒が勝ったことも喜ばしいが、サクラユタカオーの血を使いきった配合でG1を勝てたことも喜ばしい。

やはりサクラユタカオーのスピードはG1で通用するのだ。いずれはRomanの様に使い勝手の良い血統と認められればよいな。サンデークロスのG1勝ち馬が出るまでは死ねないと書いたこともあるが、もっともっと渇望するのはサクラユタカオークロスのG1馬だ。キタサンブラック菊花賞勝ちは大きな一歩だ。大きな、大きな。

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