砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

Danzig配合論 ヤマニンパラダイス=Bertolini編

Danzig産駒で最も成功したのはDanehillということでまず間違いはないだろう。次点のGreen Desert(及びその親類)もまた間違いない。あとはChief's Crownが日本ではそこそこに繁栄していて、総帥が輸入したチーフベアハートや渡辺さんちのアグネスデジタルなどからこの経由が起こる。
アグネスデジタルグラスワンダーに関しては「母系編」とでもタイトル付けて別に書く。今回はDanehillGreen Desert・・・ではなくヤマニンパラダイス=Bertoliniを、そしてChief's Crown、トレヴの母父であるAnabaaSmart Strikeの姉にしてカナダの名牝Dance Smartlyを題材とする。 Bertoliniはジェンティルドンナの母父であるし、Smart Strikeと言えばグラスワンダー全妹との間に生まれたレッドレイヴンがある。日本により馴染みの深い血統を選んだほうが映像的に助かるのだ。 では、とりあえずDanzigの血統を見てみよう。 http://www.jbis.or.jp/horse/0000336082/pedigree/ 父父Nearcticが遺伝子学上において短距離がどうとか騒がれている血統で、これは欧州の血統と見ていいだろう。母Natalmaが少し複雑だがMahmoudを4分の1欧とした米血統と見るのが正解か。なのでそこまで綺麗にどうとかって話ではない。 この時代は「4分の3英、4分の1米」とかの考えをするには交流が深すぎず浅すぎずの状態で、例えばSir Gallahad=Bull Dogなんて米血っぽい顔してるけど実際は「4分の3英、4分の1仏」。この欧州血統を緊張と緩和の材料にしながら米血統は進化していったわけで、その途上にあるDanzig直仔の時代ではAdmiral's Voyageを米血統と断じるのは難しい。 米血統と言えるのはHimyar系、Ben Brush系、Fair Play系、Hanover系あたりか。左から影の濃い順に書いてある。Hanoverは影が薄いし表現されている様子も見られない微妙な血統だが、名繁殖FrizetteがHanover系であるし、Torbillonを産んだDubanがHanoverの4*4である。やるときはやる格好いい血統だ。 お次はBertoliniとヤマニンパラダイス、それぞれの母AquilegiaとAltheaの姉妹を見てみよう。Bertoliniとヤマニンパラダイスは母母と母父と父を同じくする同血の間柄で、AquilegiaとAltheaは全姉妹となる。下のURLはAltheaのもの。 http://www.jbis.or.jp/horse/0000409037/pedigree/ Alydar×Never Bend×War Admiral×Beau Pere×Sir Gallahadと名血統の宝庫である。アメリカで育った牝系だがWar Admiralが初めての米血統。Never Bendも自身がアメリカ出身で牝系もアメリカ育ちだが父と母父はイタリアン&フレンチ。 Courtly Deeは多国籍軍の様相で相手を選ばない。だからこその名繁殖。 それにAlydarを父に迎えると・・・一気に米血へ傾いていくわけだな。この母Sweet ToothがBull LeaとBlenheimとChicleを軸とした相似配合だが、そこまで緻密なものではないのがミソ。
Two BobとBlue Delight
The PorterSweepBen BrushBramble
Roseville
Pink DominoDomino
Belle Rose
Ballet GirlSt. LeonardsSt. Blaise
Balladonna
CeritoLowland Chier
Merry Dance
BlessingsChicleSpearmintCarbine
Maid of the Mint
Lady HamburgHamburg
Lady Frivoles
Mission BellsFriar RockRock Sand
Fairy Gold
SanctuaryBroomstick
Vespers
Blue LarkspurBlack SarvantBlack TonerPeter Pan
Belgravia
PadulaLaveno
Padua
Blossom TimeNorth StarSunstar
Angelic
VailaFairman
Padilla
ChiclelightChicleSpearmintCarbine
Maid of the Mint
Lady HamburgHamburg
Lady Frivoles
Rubby LightHoneywoodPolymelus
Honey Bird
Washoe BelieSweep
Grace Commoer
赤字が米血統で青字が英血統となる。これらの上に「4分の3英、4分の1仏」のBull Leaが乗るのだからAlydarのイメージは違って英血統が強い。 青字が英血統であることに間違いはないのだが、Blossome Timeが父母ともに英血統でありながらも米国産であるようなもので、アメリカの馬産家が認めた英国の血は代を重ねるごとにアメリカへ溶け込んでいく。Friar RockはFair Playの半兄弟にしてWar Relicの母父だが、War Relicを「米血」とすることに問題はない。そんなものだと考える。 まぁ、そんなふわふわした話はいい。重要なのはHimyarとBen BrushとHanoverが揃ったこと。Fair PlayとSir Gallahad=Bull Dogを受け入れる土壌がしっかりと出来上がったのである。Fair Playに関しては半弟Friar Rockしか血統内では提示されてはいないが、これがなかなかに上手く出来ているのだ。 というのもRaise a NativeがFair Playのクロスなので、ヤマニンパラダイス=Bertoliniは「半分Fair Play、半分非Fair Play×4」の形になるのだわ。それはモーリスのNorthern Dancerみたいなもんだね。もちろん濃度の違いはあるが。 濃い=代が近いNearcoはPas de Nomを非Nearcoとして「4分の3と4分の1」できちんと対処している。それはSir Gallahad=Bull Dogもそうであるし、あるいはMumtaz Begum≒Mahmoud、Lady Angela≒Heliopolis≒Ponderに関してもそうである。 Danzigに対する配合として多いのはナスペリオン&ハイインローの形で、Son-in-lawの経由はBeau Pereが最も多く次にFair Trialとなる。Son-in-law×Polymelusの形だ。 Nasrullah×Hyperionトニービンの血統を見ての通りに非常に緩やかに動く馬を出しやすい組み合わせで、Nasrullahを代表に靭やかな短距離血統というのはしぶとく動く中距離血統と混ざり合って緩慢さを演出する。ジャンポケ×ユタカオーヴェルデグリーンのイメージと大体違わないかと。 Danzig自体はかなり硬質な短距離血統なので「4分の3Nearco、4分の1非Nearco」とRoyal Chager≒NasrullahにMahmoudを連ねる方法でThe Tetrarch的な部分を補完している。 Mr. Prospectorを使う配合もあるが後世に残るほどのものは出なかった。これはNashuaがスタミナ化しないNasrullahであったことが大きいのだろう。現代でもMr. Prospectorを使った中長距離馬というのは珍しい。 La Franceこそがサンデーサイレンスの中距離力に繋がるというのが持論で、この血を使ったNasrullahは靭やかに高回転で動くだけにあまり燃費の良い柔らかさを表現しない。Danzig×Mr. Prospectorの様な配合ともなると両者の回転力が表現されすぎる嫌いがあるのではないか。 またBull Leaの存在も大きい。この血の戦績をたどれば堂々たる中距離血統で、母系に入ってはNijinskyやRobertoなどを輩出している。結果としてAlydarは父Raise a Nativeのスプリント力を母の中距離力で折り合いをつかせた配合なのだわ。グランプリボスみたいなもんだな。 将来SSクロスでダービー馬なんかが生まれるのだろう・・・ってのはモチジュン先生が仰ったことだが、それはSSの血を使って色んな適性の馬が出たことが前提となる。 その観点でブラックタイドディープインパクトというのはすごく良い住み分けができていて、いずれはこの全兄弟クロスでダービー馬も出るんじゃないだろうか。 [追記] ヤマニンパラダイスの全姉にAuroraがいたな。この牝系からはアルビアーノが出て、直仔にはArchがある。Archの産駒にはBlameが、母父としてはアイルハヴアナザーを出している。大事な大事な枝葉だった。 [fin]