砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

大阪杯出走馬

アクションスター

 母レディオブヴェニスNashua≒Nantallahの強い父を持つので瞬間の脚に優れている。大阪杯の場合はその先でどれだけ粘れるかが重要であるからタキオン✕Roberto系✕Mr. Prospector系✕Lyphard✕ヴェンチアの本馬は少し底が見えすぎる。

 ドスロー瞬発でならば勝機もあろうが阪神内は3角過ぎに前を交わす世界だから勝機なし。内枠に入って人気吸いと内差しの邪魔を担当していただきたい。4角直後までは五分に伸びるから勘違いして追ってくる馬のいるかもしれない。

アンビシャス

 靭やかに持続的な高速の末脚を使うディープ産駒。Fair Trial✕Seattle Slewの靭やかな小回り脚で加速するから瞬発戦では最強クラスだろう。さらに馬群を割りながら差し込めるというディープインパクト牡馬の弱点を克服した点も大きい。

 かといって競馬が上手いというわけではない。テンに負担をかけるとSpecialの前向きな気性に火がついて一気に脚を消耗させてしまう。スタミナ以前の問題なのでスローでも出しに行くことが難しい。

 ただデニムアンドルビーが「スロー専門追い込み馬」であったことに対し、こちらは牡馬である分だけスロー専門ではない。燃えやすい気性であるから息を入れて走らせてジワジワと火を入れていくスタイルが最も似合う。その観点において横山典弘は好采配だろう。

イスラボニータ

 鋭く出るゲート、直線で好位から前の馬に襲いかかる激気性、決して持ち札は多くないがそれだけでG1を勝ってみせたのだから素晴らしい。けれど前走はゲートも出なければ激気性で前の馬を追い越そうと外へ外へとストライドを伸ばし始める大惨事。ゲート~向こう正面までの競馬はあまりにも残念なものだった。

 やはり好位で唸ってなんぼだしゲートも出せるものなら出したい。修正は加えるであろうから人気の落ちたここを買い時と見るのも一つだが、ここはゲートをきちんと出るかどうかを確認するだけに留めておきたい。道悪も得意ではないし距離延長も良くない。外枠ならば万全の消しだろう。

キタサンブラック

 柔らかく靭やかに動くのだが今となっては登坂は微妙。少なくともこのメンツでは後駆の強さは見劣るだろうか。菊花賞勝ち馬は有馬記念を勝つもの・・・と自分でも声高々に言っていたことだが現在の京都に適性を見せてしまうと登坂で傷になる。

 また牡馬でRibotを持たないのはこの馬だけ。牝馬勢はみな持たない。前受けするにはこの点で劣ると言えて、前後に靭やかに動く・・・大鉈と言うと語弊があるけれどそのたぐいの馬だろう。それでもルーラーシップと違って母がスピード血統だから動く時に動ける特長を持つ。まさにサクラユタカオー。靭やかなのに俊治に動ける。

 すなわち操縦性が高いので騎手のカラーに合わせて競馬の出来るタイプだろう。菊花賞は周りが前へ前へと押し寄せて行くのを傍目に無駄な動きをしなかった。イスラボニータと真逆の好位馬だ。気性がよく粘り強い脚で前を追う。

 それだけに期待通りの競馬しか出来ないのだが基礎能力が高いので問題はない。ドゥラメンテを退けることは出来なくともリアルスティールを2度も退け一冠を得たのだから。ただ今回は期待通りとは掲示板までのことだろう。

ショウナンパンドラ

 ディープインパクト産駒というよりゴールデンサッシュ牝系の名牝というべきか。これほど晩成的に成長したディープ牝馬は過去になく、ジェンティルドンナから始まるディープ牝馬の歴史はいつだって桜花賞からの活躍が約束事だった。けれどゴールデンサッシュ牝系の牝馬レクレドールのように3歳秋からが本番。

 本馬はヌーヴォレコルトを退けて3歳秋の秋華賞を制覇。それで本格化を見たかと思えば4歳秋にもう一つ上のレベルに上り詰め、オールカマーの舞台で再びヌーヴォレコルトを破り次次走ではジャパンカップをも制覇した。

 力強くも靭やかで全身運動的なストライド皐月賞を勝ったころのイスラボニータに近い。秋華賞の最内突きとて発展途上であったと思えば優秀過ぎる成長力だ。あのころでさえ緩かったのかと。

 またキタサンブラックと同様にTourbillonを重ねた母を持つのも大きな特徴。ステイゴールドメジロマックイーンと同じ理屈でこれが作用しているのだろう。

 ジャパンカップはスローで推移して牝馬のパンドラが届いたという結果だが、ラブリーデイにも同じ理屈が通用しないはずがない。それでも差し届いたのはTourbillonの靭やかさが作用しているのではないかとも考えられる。千六~二千の実績しかないサッカーボーイの産駒であるヒシミラクル菊花賞春天-宝塚で爆走したスタミナだ。 というよりTourbillonを備えないディープ産駒もない。Lyphardの回転力を武器にしている以上、Ksarを弄らない理屈がないのである。

 ノーザンテーストDeputy Ministerを肝としている以上後駆は強いし、母父フレンチデピュティだから米血統の硬さもある。平坦差しベターではあっても登坂で極端にスピードが落ちる血統ではないはず。中山より阪神の方が向くと思うがコーナーワークの上手さがアンビシャスに比肩するくらいだから小回りやスローの東京の方が狙いは立つかも。ホント有馬記念に出走していたら頭抱えてゴロゴロしてたわ。マリアライトより走っただろ。

タッチングスピーチ

 ディープ✕サドラーの配合における例外。逆ニックスであることを承知で栗山求・望田潤両先生がピックアップした良血の良配合馬。しかし外差し一辺倒の拙さもあるので少頭数は歓迎だろうが横綱相撲でしか勝負にいけない気性は大きなマイナスだろう。

 ただ外差し馬は踏破能力に優れているパターンが多い。これは欧州のスタミナ勝負で他馬を競り落とすことに特化した血統であるからで、米血統であってもSadler's Wellsはこれに該当するだろう。凱旋門賞血統なんかも組み合わせ次第で外差し特化になることがあり、Allegedクロスのショウナンマイティも悪路走破の外差し馬だった。

 阪神内の外差しは可もなく不可もなくの選択だが騎手によっては綺麗に決まる。けれど福永が鞍上では綺麗にスピードを乗せられる気がしないのも事実。少頭数であるから決して無視は出来ないが、馬券まで考えるなら道悪で前が止まるくらいの展開が欲しい。

ニシノビークイック

 父デュランダルの母母スコッチプリンセスがハイインローかつナスペリオンかつ「Hyperion✕Swinford✕Pretty Polly」に加えてTom Foolなので距離に多様性が出る。代表産駒は「Sir IvorTom Fool」などを重ねたオークス勝ち馬エリンコートや、ナスペリオンと「Hyperion✕Swinford✕Pretty Polly」を重ねた中京マイル王フラガラッハなどがある。

 デュランダル自身はスプリンターズS勝ちとマイルCS2連覇を成し遂げた短距離の追い込み馬だったからスピードは伝える様子で、母は上記の様に靭やかな中距離~中長距離血統を組み込んでも走る。けれど本馬はデュランダルの血統要素を全て弄る様な構成になっているため限りなく父に近い適性を持つ。千二と千六の中間、千四馬。

 特に父を短距離へ傾けたVictoria ParkとOlympiaを弄っているのが大きい。Victoria ParkにRomanやOccupy、そしてFair Trialを重ねると短距離馬が出るし、Olympiaは父Heliopolisが「Hyperion✕Swinford」なのでAlycidonとLady AngelaのPretty Polly組と脈絡し、これをDanzigを以ってクロスしている。これはDanzigの持つスプリント力に大きく貢献した血統だから効力が高い。

 大体は「ノーザンテースト弄り」の一言で済ませられるのかね。大問題はRivermanMill Reef✕The Bride(Secretariat全姉)のナスキロクロスを持つことで、これが作用すると上記の短距離力を阻害する中距離の靭やかさが生じる。RivermanはともかくMill Reefはナスペリオンでもあるので特注の中長距離血統だ。

 その靭やかさがある分だけ純スプリンターではなくなった。距離適性は戦績通りの千四馬で、靭やか&パワー&持続力の舞台である阪神1400mへの適性がずば抜けて高い。(他にもRed GodTom Foolを重ねたりなんかの細かいこともやっているのだが割愛する。)

 3Fの距離延長をしたのだから逃げを打って欲しいところ。ここ数戦も位置を取りに行って取りきれない形なので延長で前を取りに行きたいのではないか。ただ国分恭介は差しの騎手であろうし逃げでどんでん返しを狙うタイプでもない。エダテルみたいな化け物じみた嗅覚があるわけでもないしね。位置を取って息を入れて走らせて、そこから末脚をどれだけ使わせられるかって勝負じゃないかな。個人的に千四馬は高速の千八馬と表裏一体であると考えるから、逃げで12秒きっかしのイーブンペースを刻む手もあると思うのだが。それはそれで距離がもたないがねぇ。

ヌーヴォレコルト

 ハーツクライのスタミナに頼って母オメガスピリットはスピード血統。動くべきところで動けるという特性はキタサンブラックと同じで競馬がとても上手いサルのお手馬。G1では一発に欠ける感もあるが位置取りの比重が重い牝馬戦を横綱相撲で連帯し続けているのは流石だ。

 また中距離戦で本馬に先着した牝馬マリアライトショウナンパンドラデニムアンドルビーラキシスらしかいない。全て混合戦で結果を出した名牝だから時代が悪かったと言わざるをえない。ジェンティルドンナから始まるディープ牝馬最強時代の犠牲者と言えよう。中山記念ロゴタイプに先着するのだから最強クラスの名牝であるはず。

 ただ適正な舞台が思いつかない馬でもある。ベストパフォーマンスはロゴタイプを破った中山記念であろうし馬場が渋ってパワーを必要とされたほうが父ハーツクライのアドバンテージが活きるかもしれない。だが今レースには超G1級の一芸を持った道悪巧者が揃ったし立ち回りを身上とする本馬が勝ちきれるものかな。

マイネルラクリマ

 遠征先で故障してから長い休養に入り、復帰初戦の前走中山記念では精彩を欠いた走りを見せた。中山記念は相手関係が厳しいとは言えベストの舞台でもある。馬齢も考えると買いづらいところ。

 父父Chief's Crownの加齢によるスタミナ増を加味すれば2000mはやはり短い。もう少し叩いて2500mで一変を期待するのが馬券的には面白いのではないか。

ラブリーデイ

 昨年は10走を走ってG1を2勝、G2を2勝、G3を2勝と4歳時の勝ちきれなさを払拭し、2000m~2200mにおいては4戦4勝と絶対的な強さを誇る中距離王者として君臨した。機動力に由来する瞬発力を武器に早め抜け出しの戦法で他馬を寄せ付けない。

 最大の弱点は登坂を終えてからの脚の回復が遅いこと。中山や阪神では最後にマージンを吐き出す様に失速してしまうからNijinskyでダラダラするために登坂後の長い東京や平坦コースがベターだろう。これはNijinskyを表現された馬の長短所であるから仕方ない。

 今レースにおける最大の敵はアンビシャスだろう。本馬とは未だ対戦のない現4歳世代の最強馬2頭と真っ向勝負で争ったこの馬は宝塚記念で冷や汗をかかせたデニムアンドルビーの牡馬verである。中距離王者としての格が大きく試される一戦だ。

 だが内枠のミルコというのはいささか不安がある。イーブンに出ても誰も彼もがこの馬を制しようと外から押し寄せてくるのだからイーブン以上に出していきたい。特にすぐ外の岩田ヌーヴォは本馬の直前で競馬をしたいはずであるし枠に嫌われた感はかなり強い。

 上で書いたように身上はNijinskyダラダラであるから勝負どころで抜け出せないのは大きすぎる不利だ。川田将雅とのコンビは唯一無二とすら思えるし、特に阪神内となると横綱相撲になってでもいいから前には馬を置きたくない。叩きでミルコが騎乗停止覚悟でぶち割りに来るとも思えず、もし囲まれたならば品行方正(グレーゾーン)な競馬で動ききれないかもしれない。

(4月1日に書き加え)

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