砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

天皇賞春回顧

想像よりもずっと芝は速かったな。逃げ馬が終いを11.9で締められるほどの緩いペースで3分15秒3であるから昨年より速いだろう。これは菊花賞馬が走ってなんぼの芝だった。(Mahmoudさんの解析によると最後の4Fは11.6-11.8-11.6-11.6。やはり芝が速い。)

それならサウンズオブアースが走ってもいいのだが・・・この負け方はちょっと厩舎側も気が気じゃないだろうな。いくらなんでも京都の4角前にあんな手応えで後退する馬じゃないし、どこか痛めている可能性はある。

カレンミロティックは最後の最後に力尽きているな。対してキタサンブラックは差された直後にファイトバックしているくらいで、残り200mから数えて三度目の左ムチが入った直後にもう一度伸びた。

ハナの上げ下げは武豊が意図的にタイミングを合わせたかもしれない。最後の二完歩はほんのちょっとリズムが違っている様子である。フラワーパークで見せた田原成貴の技術にちょいと近いのではないかと。

いや、これ一度差されたかは怪しいか?角度の問題かもしれない。多分パッと見た感じほどカレンミロティックは抜けていないかもしれないな。Lyphardクロスのブラックタイドだからあそこで交わされてから差し返すことは難しいと思うし、交わす交わさないのレベルではなく競り合いの範疇だろう。

あとキタサンブラックは決して強い馬ではないし、また逃げ馬でもない。菊花賞でヒロシがやってのけた様に好位から交わすのがベストなわけで、あれを先頭でやったのが今回の内容と言える。先頭からイン差しに抜け出した武豊の絶妙騎乗である。

ティズナウとジャイアンツコーズウェイのレースに近いかもしれんね。

またこういうラップの上げ下げがない展開はカレンミロティックの得意とするところだったね。それを思い出していたら複勝一本で買うことも出来ただろうに。これは勿体無いことをした。

やはりベストパフォーマンスは唯一の重賞勝ちである金鯱賞。暴走したメイショウナルトを遠目に見ながら池添謙一がイーブンペースで楽勝してみせたのはいつまでたっても忘れられない。これも前は武豊だな。

ただ薄氷の2着だったことは否めないわな。これ、カレンミロティックから逆算して考えたらキタブラ-カレミロの馬券は一点買い出来たかもしれないわ。馬単は難しいけどワイドなら考えが及んだかもしれない。

というのも、カレミロが馬券に絡むことが出来るペースって武豊が逃げなきゃありえないのだ。そして平成の盾男がそんな素晴らしいペースを刻むならやはり馬券に絡まなきゃおかしいだろう。この流れを交わし去る馬はいるのだが騎手はいなかったわけだねぇ・・・。

吉田隼人は内に入れたくて内に入れたくて、普段の良さがまるで消えていた。この点を見ても春天とは異質な中長距離戦であることが伺える。過去に例を見ない「3200mの中長距離戦」である。

また4歳馬がこんなに走る展開だものな。盾男かつサンデー使いの武豊だけがこの展開を作り得るだろう。このペースを最序盤に乱しに行く人間がいないのも問題と思える。

無茶振りだがね。最内1枠1番から好発したキタサンブラック春天の舞台で殺しに行くことは自殺行為だ。でもコパノリッキーメジャーエンブレムを殺りに行くのに今回はやらないという理屈はないだろう。マイルでやって3200mでやらない理由とはなんなのか。

期待馬が多すぎたわな。調教師が一世一代の大勝負を望むほど熟した馬がいなかった。

「もうここを逃したら次がない。何をやってもいいから勝たしてくれ」という馬がね。そういう時は腹くくって乱ペースへ誘導されるものだわ。もちろん横ノリやバッシュみたいに上手い展開で勝ちきる騎手もいるけれどね。

もちろん逃げの方向へ誘導するばかりではないけれど。今回のカレンミロティック池添みたいな形もあれば、ファタモルガーナウチパクみたいに勝負どころでポジションが下がることを厭わない開き直りもある。レーヴミストラル川田の様に離れた後方から展開することもあるしな。

若手から中堅の騎手が下手糞なのは若いころから東西問わずに様々な条件を乗っていないことが原因かと思う。特に中山での騎乗が少ないジョッキーは前への意識が薄く、また逃げが下手糞である。

中山コースで人気薄を持ってくるには逃げるしかないから。それもガムシャラな逃げではなく巧みな逃げでしか叶わない。そういう土壌があるからユキトみたいな若手が現れる。

中山の逃げとは1角2角でドスローとするのがセオリーで、マイルとなれば最序盤のドスローが肝である。ターコイズのオツウは本当に綺麗な逃げで、あれをやってのけるからこそユキトはすごい。

関西のマイル千八はバックストレッチを使って長い距離を使うからね。多種多様な逃げで見てて面白くはあるけれど巧みな逃げをする騎手は少ない。正答はやはりエイシンヒカリ都大路Sだろう。やっぱり武豊である。

このレベルで京都を理解しているのは弟の幸四郎くらいなものだ。どっかで幸四郎春天逃げをみたいのだけれど機会があるものかねぇ。盾男の弟にして横ノリの弟分だぜ?そりゃ面白い逃げを見せなきゃ嘘だべや。

日経賞である意味面白いものは見せたがね。瞬発力自慢であの逃げを打っていたら神業認定できたんだがなぁ。エダテルネコパンチや中舘ツインターボの様な歴史的名レースを作れたかもしれない。

でも春天で逃げを打つための予行演習として上等だったとも思う。ディサイファがそのまま出ていたら面白かったかもしれない。勝算は別としてね。

話をもどす。

ゴールドアクターは出来が良すぎたな。あの日経賞で折り合ったのに春天で折り合えなかったのはそれが原因だと思う。それに加えて吉田隼人が馬を操りすぎたこともある。流れの中で内へ入れることが出来なきゃイン差しマスターにはなれない・・・というのは辛辣かな。走行妨害紛いのことをしなきゃ厳しい話だ。

本当に武豊の逃げはMahmoudさんが仰るように他馬になにもさせない巧妙な流れだったんだ。動くとしたらホームストレッチで博打を打つしかなかっただろう。それも結果論でしかないし、ひたすら武豊を褒めるしかない展開だ。

唯一動かせる可能性があったのはトゥインクルくらいか。勝浦がこれを前受けさせていたら予定調和は崩れていたと思う。

ゴールドシップの競馬はゴールドシップにしか出来ない。唯一無二の絶対(?)競馬だ。だからキズナウインバリアシオンゴールドシップに比べりゃ後手を踏んでいる。残り800mまで動けないからねぇ・・・。ゴルシは1000mで動けるから化物なんだわ。

それをトゥインクルステイヤーであるとはいえ向こう正面からまくっていくんだから稚拙と言わざるをえない。それで勝っているから同じことを、というのも分かるんだがダイヤモンドS勝ちが春天へ直結しないことを考えて欲しいよねぇ。

レースを動かすゴールドシップがいない以上はフェイムゲームの様な直線一気は難しい。特に皆が信頼する武豊の逃げであれば動くことを愚とするのが騎手の習性である。事実そうであるし。

だから動かないことを基準に春天ってのは考えなきゃならんのよ。道中で馬鹿みたいに動いて勝ったのはゴールドシップイナリワンライスシャワークシロキングと・・・というくらいである。現在の芝管理技術になってからはゴールドシップしかいない。ルドルフの時なんかは外回ってるからな。

だから勝浦はもう少しポジションを取りに行った方が良かった。春天で内枠を得たのに後方からまくっていくなんてのはゴールドシップにしか出来ない馬鹿な話なんだ。

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