砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ロードクエストの俊敏性 Danzig論

新潟2歳で秀でた瞬発力を見せた本馬だがその根拠はどこであろう、という話。

このテッテコ末脚は平坦ベストのものだからBold Bidder✕Secretariatが元と見る。一方でBold Ruler5✕6*5だから小回りっぽい瞬発力も期待できるのだが、この臭いを消したのが「Danzigを機能させないDanzig直仔種牡馬」であるChief's Crown。この血統が表現するものはSecretaritのスタミナである。

Danzigという血統の好む血は多い。当時のアメリカで繁栄した血の全てを網羅するのではないかという悪食っぷりに閉口したのが昨年末にあった俺である。無職だったので朝から晩までDanzig直仔の血統にかぶりついていた。貯金はみるみるうちに目減りしていたがターゲットの導入を腕を汲みながら毎晩悩んだ懐かしいあの頃のことだ。

まず、デインヒルの異質さよね。Danzig✕His Majesty✕BuckpasserかつNatalma3✕3という化物配合。「なんでHis MajestyとBuckpasserが共存し得るのか」という凶悪なテーマに泣いた。

そしてCourtly Deeとの好配合にも泣いた。「Sir IvorGree Desert)とAlydarヤマニンパラダイスなど)で母父をかえたのになんで好配合ぶりは変わらないのか」と。

Anabaaにも泣いた。「母ちゃんナスキロクロスのくせにお前はスプリンターなのかよ。」

つまりDanzigとは強烈な個性を伝えるのだ。だから配合形にちょっとした矛盾があっても矯正してしまう。Danzigという大種牡馬の色に全てを染め上げてしまう。篠塚の流し打ちも田淵のホームランも可能とする超弩級種牡馬なのだ。

それを逆に染めた血があった。未だ破られぬベルモントSのレコードホルダーSecretariat

母父にナスキロを抱えるDanzig直仔が中距離馬であることは珍しくはない。Danzig ConnectionなどはベルモントS勝ち馬であるし、中距離の大舞台を制した馬は想像よりずっと多いのだ。

しかしだ。米血統と共存した上で中距離適性を見せ、次世代へその影響力を残すだけの好繁殖を作る・・・このハードルは非常に高かった。Danzigの大種牡馬っぷりに頼んだ中距離馬しか作れなかったんだ。

よってDanzigSecretariatの配合とはSecretariatDanzigに比肩する名血統であることを最低条件とした。その上でDanzigの名配合であり、その上でDanzigを受け継いではならなかった。Danzigの好きなもの(ナスペリオンとかPretty PollyとかBull LeaとかThe DogeとかPonderとか)をかき集めて「Danzigを活かしたDanzigではない何か」を作り出したのだ。

結果としてChief's Crownが産まれ、その直系からイギリスダービー馬が産まれ、日本ではアグネスデジタルチーフベアハートディープスカイなどが種牡馬として活躍している。「何か」とはなんだったか。

全てを包括し、Secretariatを代表に据えた。それをやってのけた黒幕の正体とは。

上で書いたデインヒルに関する泣き言を思い出して欲しい。「なんでHis MajestyとBuckpasserが共存し得るのか」

そう泣いた理由は

一つ、前例がないこと。

二つ、この二つの血統に共通項がほとんどないこと。

三つ、それでもなおデインヒルは名血統であること。

例え前例がなく噛合の悪い配合に見えたとしても名血統である以上は肯定しなければならないのだ。しかしデインヒルを褒めることは難しかった。何が良いのかわからなかったのだ。だから「Danzig配合論 Danehill編」はお茶濁しまくりの短編となったのである。

ところがゴールドアクターという名馬が有馬記念で花咲いた。DanzigRibotTom Foolであり、非常に優れたDanzig血統馬だと勝ってから気づいたのである。

この馬がどうして靭やかに動いたのか・・・スクリーンヒーローがどうしてウオッカを破り得たのか・・・Cosmah≒Almahmoudの靭やかさを累進しているから、というのが一つの理由だと考えられる。Tom FoolNasrullah的解釈である。

もう一つはAlibhai≒Lady Angelaに端を発するTracery的な解釈だろう。DanzigPrincequilloRibotを好むのはPapyrusの影響が大きいかと思う。

この二つを理由としてゴールドアクターは靭やかである。Almahmoud的・・・Lady Angela的・・・つまりはNorthern Dancer由来なのだ。これを以ってデインヒルの配合を肯定することとし、そしてDanzigの靭やかさも説明出来ようものである。

なぜならDanzig自身が好配合のNorthern Dancer直仔なのだ。その血の傾向を受け継がなければ血統的ロスが生じる。全ての血を活かし、全てを同一方向へ向かわせるカリスマがなければ大種牡馬ではないのだ。

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