砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

VMを制したHaloとはなんなのか

「Halo的Tom Fool的スピードをマイルのスピードとして最も体現していたのは昨年の覇者だった」

(「血は水よりも濃し」より勝手に抜粋させていただきました)

このスピードってのはダイワメジャー黄金配合的なものであって、カレンブラックヒル的でコパノリチャード的でメジャーエンブレム的であると言えそう。

ただ日本の馬はほとんどが4分の1サンデーかつNDクロスであることを忘れてはならず、Halo✕NDは中距離配合なのだということを念頭に置かねばならない。つまりAlmahmoudを共通とするNatalma≒Cosmahを肝とした配合形をほとんどの馬がとっているということだ。

しかし8分の1サンデーで世界トップクラスと目される東洋の名マイラーが誕生した。モーリスである。

社台外で生産され北海道トレーニングセールに出品されたこの馬は1050万の値で吉田和美氏に落札された。JBISサーチによれば総称金額は3億1300万円を超える。タップダンスシチーテイエムオペラオージャスタウェイを超えたコストパフォーマンスっぷりを見せ、それらを超える栄光路を驀進中である。吉田一家って本当にアホみたいなホースマン集団だわ。

この父スクリーンヒーローの特徴は「ND✕Hyperion」な配合を取ったDanzigノーザンテーストを抱えることで、特筆すべき点はそれらの短距離志向の強い血統を抱えながらウオッカ破りのJC勝ちを決め込んだことだろう。

特にサンデー✕NTの配合形は短距離志向になりがちで、これにTom Foolを加えた形はダイワメジャーというよりデュランダル的。アドマイヤグルーヴやランニングヒロインが繁殖として成功したのだからダイワメジャーも繁殖として成功するのは当然と言えて、その一方でデュランダルが繁殖としてG1馬を出せなかったのはちょいと不思議ではあるのだが、そのあたりの比較をすると楽しいだけに脱線が過ぎる。しかしフラガラッハという面白キャラを出したのだから十分な成果とも言えるだろう。

その上にグラスワンダーというのに妙味がある。有馬記念マスターとして最も有名だが一方で安田記念を2着している点が非常に面白い。オグリキャップダイユウサクらと並び、「有馬記念マイラーを狙え」の格言に説得力を持たせている一頭だ。

これはDanzigの短距離力とRobertoのスタミナがアホみたいに上手いこと噛み合っているからだろう。その仕組みを明かすことはできないが、おそらくそういうことだろうと。仮説に仮説を積み重ねると、「Robertoの優秀なる後継」としてのSilver Hawkがあり、「優秀なるDanzig産駒」としてのAmerifloraがあり、この二頭がなんか上手いこと噛み合った末にグラスワンダーがあるのだということだろう。

いづれDanzig配合論 グラスワンダー編」も書くべかね。Silver Hawk産駒は欧州でも米国でも活躍していて、その配合はなかなか癖があるんだわ。Robertoの観点からエピファネイアの配合へ話を伸ばしていくのも面白いと思う。

それからモーリスの配合を考えていく・・・ってのはダービーの後かな。いや、ディーマジェスティ(母父ブライアンズタイム)があるからダービーの前からRoberto絡みの配合論を考えていかなきゃならない。なんともはや忙しいことである。(現在職業訓練中)

して、そういう話に対してHaloというものを逆説的に考えてみるわけだな。

これは複雑に絡み合った末の結論で、非常に頭のなかでフワフワとしたものなんだけれども。HaloというのはNorthern Dancerの驚異的な繁栄によって台頭した血統だろう。

Mahmoudさんが以前に「現代競馬はMahmoudのスピードによって走っている」というようなことを書かれていた。Halo✕NDというのはそういうことなのだろう。Northern Dancerが繁栄した理由を説明できると深みがあるのだが、流石にそこまで行くと話が戻ってくるのに1年くらいかかりそうである。

Mahmoud(あるいはAlmahmoud)のスピードは中距離的であるということはすでに書いていて、それを短距離へ向けるために「現代競馬における短距離遺伝子の祖」であるNearcticの母Lady Angelaを刺激する。それがDanzigノーザンテーストの仕組みである。

そのLady Angela内にある中距離的スピードがTraceryである・・・ってのが最近の持論なのだが、もう一つの持論としてRablais-Durbar-Flembetteの血脈がある。

これらの絡みがNorthern Dancer内にて複雑に絡み合い、その時に何が主張しているのかによって

距離適性が変わってくる・・・。つまり現代のNorthern Dancer像は未来のサンデーサイレンス像でもあり、サンデークロスだから中距離馬だとかって話ってありえないだろう。

どのようにサンデーサイレンスの中距離的靭やかさを出すかがこれからの日本競馬における最大の命題であり、そのために「血統的急所」を探りだすことが寛容であろう。それがHaloなんじゃないか、Almahmoudなんじゃないか、っていうのがサトノダイヤモンド論で語られるわけだね。

ということで、今回の「VMを制したHaloスピード」ってのは「サンデーサイレンスを中距離的に靭やかにした要因とされるもの」であるAlmahmoudを4分の1異系として「Hail to ReasonPharamond」の4分の3を主体としたスピードと考えられる。そのまんまっ!

正確には「Nothirdchance✕Lavendula✕Herodias✕Selene」的なスピードなんだろうな。よーし、一気に俺好みのイミフ系になってきたぞ。

Canterburry Pilgrimなスピードかもしれないし、あるいはGondoletteなスピードかもしれないし、とりあえずLavendula✕Pharamondの配合には意味があるんじゃなかろうか。

Pharamond✕Lavendula

すでにTurn-toの時点からMahmoud的スピードとは仲良し(Royal Chagerの母Sun PrincessがMahmoudとニアリーになる)で、それに対してSwinfordの脈絡を持たせつつ、異系としてあったAdmiral Drakeの母Plucky Liegeへクロスをかけながら米血統的異系を強く組み込んだのがTurn-to✕Nothirdchance、つまりHail to Reasonの配合であろう。

だからこの血統が偉大なるTurn-toよりも繁栄したのは納得であるし、大きく異系を取り込んだ分だけ多彩な顔を見せてくる。Seattle SlewとかCaerleonとかSadler's Wellsとかね、そしてHaloとRobertoでサイアーラインも大きく分かれている。

そしてHaloの代にようやくRoyal ChagerのThe Tetrarchを弄ることが出来たのだね。この点からHail to Reasonより靭やかな血統であることが伺える。

上記のHail to Reasonを伝える血統たちを見るとThe Tetrarch的、Nasrullah的、Mahmoud的、つまりMumtaz Mahal的なスピードを新たに取り込むことが必須なのだね。ただCaerleonだけはNorthern Dancerの靭やかさに頼ったところがあり、これは遺伝の仕方が異質なのだろう。将来的にはCaerleonクロスなんかの活躍馬が少しずつ見られると思うが、別の血統を交えたスーパーニアリークロスの形を取ることになると思う。Foreseerクロスのオープン級は何頭かいたかな。

そしてもう一つの共通点がBlue Larkspurクロス。この血についても色々調べたい気持ちがむくむくと湧いてくる。とりあえず「ナスフリート」の血脈と親和性が非常に高いことは分かっていて、Mill ReefRivermanNever Bendを経由してBlue Larkspurがあるし、Gold DeggerはBlue Larkspurの送り出した傑作Myrtlewoodの直牝系にあたる。

またこの血はTeddy-Bull Dog=Sir Gallahadとも仲が良く、これらの血を絡めてNothirdchanceを弄ることが多い。Haloを相手にするとThe Tetrarch関連の血を絡めることが出来るのが大きすぎるメリットで、この仕組みってのは非常にNijinsky的である。

これらの米血的な集合に対して真摯な姿勢を保ち、その上で英国的にHyperionを注入したのがサンデーサイレンスであろう。そしてそれはNorthern Dancer産駒らにも似たことが言える。ND自体は欧州的な血統の集合であり、その産駒らは米血統を取り込んで成長してきたのである。例外はLyphardくらいじゃなかろうか。

Almahmoudを縁の下に押し込んだVM的Haloというのは米血を主体としている。ならば米血統主体のサンデー系であるほうが利にはかなっている。フジキセキは米血統の代名詞とも言うべきIn Realityを持つ上に、MilicentがCornish Prince(Bold Ruler✕Eight Thirty)✕Princequillo✕Count Fleetで外回り的米血統駆動を確立しているのが大きい。

ストレイトガールの配合を語るにはタイキシャトルの配合を語る必要があるだろうし、デインヒルの素晴らしさをもっともっと語る必要もあるだろう。そしてそれらの血に対してタイセイカグラがどういった働きをしているのか、そしてフジキセキが上に乗ったことでどういった作用が期待できるのか・・・もうたくさん。

言えることは二つ。

タイキシャトルがHalo✕Nijinskyの配合として非常に優れていること。

デインヒルTom Fool✕Almahmoudの配合を取り入れたNorthern Dancer直系であること。

ツースリーに入った千八型ディープがLyphard的なFair Trial+ナスキロの中距離的切れで走っていたのに対して、ストレイトガールWar Admiral≒War Relic≒Eight Thirty+Bold RulerPharamondで走っていたのも大きな違いだろう。Pherozshah≒Royal Chagerの脈絡も完璧で、それにWar Relicを連ねたBuisson Ardentを母方でクロスを入れたりして・・・つまりBold Hour≒Cornish Prince≒Buisson Ardentの累代クロスが格好いいのだわ。

そしてMahmoud+PharamondをCosmah✕Caerleon✕Spring Adieu✕モーニングフロックで連ねていたのも圧巻で、この脈絡群によってAlmahmoudの中距離力が軽減しているのが肝だろう。DanzigによってHyperionを短距離化しているのも良い。

こんなことを2年も書いているせいか少しずつ血統のアレコレが見えてきた気がする。表でも作って解説出来るようになったら面白いな。

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