砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

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マカヒキ

 Haloな俊敏を持つ中距離馬。

 皐月賞で最も脚を使い切れなかった馬でもあり、最も皐月賞向きと思えたディープインパクト産駒。Almahmoudに反旗を翻したNothern Dancer系であるフレンチデピュティを母父に持つことに大きな意味があり、Bold Rulerじみた機動力があるのでダービーで上向くとは考えづらい。

サトノダイヤモンド

 サザンヘイロー持ちのディープ産駒という点はマカヒキと同じ。里見オーナーの馬らしく形の良い中距離馬で、母父がDanzig系であることが一大テーマを醸しだす。

 DanzigNorthern Dancerの靭やかさを抽出することによって大物を出した歴史を持つ種牡馬で、母父Orpenはそのニックス相手を山ほど抱えたおもしろ血統。その仔マルペンサが既に「Danzig直系のNorthern Dancer的に靭やかな馬」であり、その仔である本馬もまたNorthern Dancer的に靭やかな馬である。

 この類の中距離馬が日本にいた記録はなく、唯一の例があるとすればマルゼンスキーなのかもしれない。

ディーマジェスティ

 スタミナ豊富なブライアンズタイム✕Sadler's Wellsの母を持つディープ産駒。

 ディープに対する逆ニックスを二つも抱え、早い仕上がりの見込めない重厚な血統。それであるのに「最も早い馬が勝つ皐月賞」を勝ってしまったのだから素質の高さは折り紙つきである。

 Turn-toスピードではなくHail to Reason重厚を強く受け継いでいるのが特徴で、それをNashua≒Nantallahで稼働させる仕組みはフリオーソらと同じ。大きな違いは父ディープインパクトがPocahontasやBurghclereなどの重厚な血統を縁の下へ押し込んだ馬であることで、本馬もその仕組みを受け継いでブライアンズタイムやSadler's Wellsをも押し込んでしまった。サンデーサイレンス系のお手本とも言える好配合馬である。

 日本ダービーで争うとなれば中長距離のスタミナ勝負となることが好ましい。ナリタブライアンタニノギムレットサニーブライアンも終いが12秒台に突入する消耗戦で勝利を得ている。

リオンディーズ

 エピファネイアの半弟であるキンカメ産駒。

 マルゼンスキートライマイベストとSadler's Wells≒Nureyevを基調とした相似配合馬で、同じ相似配合馬でもラブリーデイとは趣がやや異なる。それでも基本は同じ「器用貧乏」で、日本ダービーほど外回りに特化したレースで他馬に見劣ることも同じだろう。またスペシャルウィークダンスインザダークの差が大きい。キングカメハメハ産駒は母父サンデーが最も素晴らしく、次点にダンスインザダークが続く程度だ。キンカメ✕スペの配合は全く以ってG1級ではない。

 本馬をG1級の一線に留めているのは母シーザリオの競争能力だろう。しかしそのスピード源はTurn-to-Sir GaylordHabitat的なものであることに間違いはなく、非Turn-toのキングカメハメハを父に据えてしまうと少し重いのではないかと思う。シーザリオ自身にそのスピードを伝える仕組みはないわけであるから。エピファネイアとの差はそこだろう。

スマートオーディン

 配合形はディープに近い。マーティンボロヴァンセンヌの中間からやや斜め上にある馬。

 大きな違いはMark of Esteemによるところで、フランス的中距離馬のDarshaanを流行血統のスピードでマイルに寄せたのがこの血統。そしてダノンシャンティとはその流行血統を地道に刺激した配合馬である。

 スマートオーディンはその傾向を受け継いだ配合をしているのだが、流行血統中のスタミナもBustedAlycidonで脈絡させているところが厄介。これはChief's Crownの様にスピードとスタミナを両立させた形であるからマツクニ厩舎への入厩は超正解だろう。つまりマイルのスピードも日本ダービーのスタミナも内在しているわけであるから、それを分別して調教による仕上げを行えるこの厩舎なら日本ダービー向きの馬体とすることが可能なのだ。

 しかし8分の1サンデーが日本ダービーを制する時代かと言えばいささか疑問があるし、Habitatの鋭さで制した歴史というのも日本ダービーは持たない。速いペースから流れ込んで味があるわけでもないし、スローから差し込んでリオンディーズマカヒキらを相手に勝ち切れるとも思えない。ここで着を拾うようならば種牡馬としての道は確実に開けるが。

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