砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ディープインパクト✕Galileoという日英リーディング配合 日本ダービー展望

ヴァンキッシュランについて。

母リリーオブザヴァレーはフランス産のGalileo産駒。2007年の産まれであるから父の初年度産駒がすでに活躍している頃合いで、おそらくその頃には相手となる繁殖牝馬を選ぶ立場になっていたことだろう。最強の3歳牡馬であったのだから初年度さえクリアすれば相手は続々と集まってくる。

ならば良血統✕良血統の組み合わせであることに間違いはない。いわゆるStorm Cat論だ。超高額サイアーの仔というのはそれに見合った優良な繁殖牝馬の仔でもある。

それはディープインパクト産駒にも言えること。ヴァンキッシュランとは日英のホースマンが選りすぐった末にある超良血馬なのだ。

血族の方はというと。

母母Pennegaleはリリーオブザヴァレーの他にDubawi産駒のMubtaahijを産んでいる。これが昨年のUAEダービー勝ち馬で、今年のドバイワールドC2着馬。鞍上はスミヨンである。netkeibaの掲示板では「青田買い成功」などのコメントがある。

とりあえずそういったレベルの馬を出せる牝系である。4代母Gay Apparelから別れた別に枝葉にはゲートドクールがあり、これは日本で繁殖生活を送っている。しかしグルームダンサー産駒しか結果は出しておらず、ハズレの部類に入るB級繁殖であった。

それでも輸入前に産んだフランス産牝馬ココパシオン(父グルームダンサー)と持ち込み馬であろうリトルオードリー(父グルームダンサー)はきちんと結果を出しているわけで、前者はフランスの重賞を勝っていて、後者はフィリーズレビューの前身である4歳牝馬特別の勝ち馬で、オークスでは3着に入っている。

ココパシオンもまた母のように日本へ輸入されて繁殖生活を送った。マンハッタンカフェ産駒のココナッツパンチ弥生賞2着、目黒記念2着などの実績。なお目黒記念は3歳時に挑戦してアドマイヤフジを交わした結果である。その時の1着はポップロックで、時間差なし。

ダンスインザダークとの仔にはセクシーココナッツがあり、その仔にはプレノタート(フィリーズレビュー3着)とザラストロがある。これは新潟2歳を勝った馬だがその後はパッとせず、つい最近障害デビューを果たしている。しばらく見ないと思ったらこんなところにいたのね。

更に遡るとスギノハヤカゼなどが見られる。タイキシャトルがいなければG1を取れたであろう追い込みスプリンター。

ぶっちゃけ、Mubtaahijがいなければ「このクソ牝系っ!」となじるところであった。まぁ枝葉が違うわけであるし、当地の方々が放出した繁殖にそんな価値があるわけない・・・というとリリーオブザヴァレーの立つ瀬がなくなるか。

そのあたりの機微というのはホースマンでなければ分かりづらい。

1、FrankelというGalileo後継名馬が誕生した都合で繁殖牝馬整理を行った

2、Northern Dancer3✕6*6*5というインブリード具合では相手がいない

というのが一般人目線で考えられることだろうか。ディープインパクト産駒などが海外へ流出している現実があるし、インブリードに対する危機感というのは各国のホースマンが抱いているのかもしれない。

その危機感がある限りセントサイモンの悲劇みたいなもんは起こりえないだろうがね。日本でも社台グループを筆頭に新たな血統の輸入というのは頻繁に行われていて、サンデーサイレンスの血を様々な繁殖牝馬を踏み台に伝える努力を絶え間なく繰り返している。

むしろ血の革新という観点で日本競馬は圧倒的と言うべきだろう。ノーザンテーストが爆発的に走っても、リアルシャダイを素早く輸入して血を広めた。多くの失敗を経てブライアンズタイムトニービンサンデーサイレンスという3大巨頭を取り込み、そして現代競馬の礎を築いたのだ。

これらの社台の功績の影に岡田総帥があり、社台のこぼしたしずくをちょこちょこ集めては面白い配合馬を重賞へ送り込んでいるのも面白い。一時期は非サンデーを貫いていたが今では2級サンデー種牡馬を使っているな。ステイゴールドの価値をいちはやく見ぬいたのはビッグレッドだったろうし、放出したくせにオルフェドリジャニらを誕生させた社台も流石である。というより数々の牧場が見捨てたメジロマックイーン肌をさり気なく所有していた事実があまりにも重い。

メジロマックイーンなんてのは種牡馬として大成したわけでもなくBMSとして上手いこといったわけでもない。流行血統とはまるで離れた存在で、普通に配合しただけではインブリードの結果が現代に届かないのである。

それをノーザンテースト3×4という強いクロスを試みて間接的にマックを活かしてしまう勇気。そしてそれが超G1級の化物であったアホさ加減。その能力の一片を繁殖生活初年度で見つけ出してしまう手腕。・・・吉田一家には慢心による停滞とかってないわけ?ローマ帝国的な滅び方とかしないわけ?徳川一家なの?

これでもしオルフェドリジャニを岡田総帥が生産してたら面白い話だったんだけれども。だが実際に起こった出来事の方が感動的であるし、馬産の歴史として有意義である。自分たちの信じた馬と配合を突き通して三冠馬を生産したというのは。

少々強引に話をつなげるが、そのたぐいの執念をヴァンキッシュランに求められるだろうかが焦点の一つとして挙げられるのではないかなぁ・・・と。全てのダービー馬がそういった背景を持つわけではないが、騎手が調教師が馬主が生産者が何かしらを燃やして動かねば勝てないレースだと思うのよ。それは特別であるほどよい。

でもこの馬にあるのはウチパクさんの抱く復活への執念しかないのだわ。手は合うだろうし血統面での問題も見受けられない。けれどダービーを勝つだけの何かが果たしてあるのだろうかと。

「河内の夢か!豊の意地か!」の名実況は伊達ではない。最後の最後の一伸びがどうこうじゃなく、レース中における展開をどれだけクレバーに見据えられるかなのだわ。トップジョッキーはみなクレバーかつ熱い男しかいない。ならば最も熱い志を持ち、それを押さえつけてクレバーに入線まで動けるかが分かれ目だろう。

幸四郎メイショウマンボオークスで追いのタイミングがあってなかった。こういった騎乗ではオークスを勝ててもダービーは勝てないのだろう。まぁ、そのあたりは今のウチパクさんも同じだと思うがねぇ・・・。もうちょっと冷静に展開してくれないと勝負にならないよ。

どうも加齢による体力の衰えよりも先に、脳みその柔軟性が失われている様に思えない。スランプに入って1年は優に経過しているというのに修正される様子がないものな。ゴールドシップの呪縛はそれほどまでに重いのかと。

実際問題、あれほどの強さを誇る癖馬ってのはいないものなぁ。オルフェーヴルの気性も100年単位で語り継がれそうなもんだが、ゴールドシップは日本競馬が終焉を迎えてもまだ語り継がれそう。

俺がジジイになったら「昔なぁ、ゴールドシップって馬がいてなぁ」って言ってるよ。凱旋門賞を勝つ馬が出ようとダービーSを勝つ馬が出ようとBCクラシックを勝つ馬が出ようと、俺がボケたら絶対にゴールドシップの話を延々とするね。1日に6回は同じ話をするね。特に宝塚記念の奴。連鎖的にルーラーシップ有馬記念へ入って、オルフェーヴルの話をして、と。

そんな歴史的な馬であんな馬鹿げた勝ち方をしてしまったウチパクさん。ディープインパクトと落馬の後遺症に苦しんだ武豊ほど柔軟に処理は出来ないかもしれないね。

さて本題である。ヴァンキッシュランの血統について。

特に問題点は見つからない。相似配合気味のディープインパクト産駒だ。ただ重賞級に似た配合をした馬はおらず、強いて言えばデニムアンドルビーに近いのかもなぁと。

血統表を見てまず思ったことは、やはり未完成だということだよな。ワンクッション置いてもよかったんじゃないかなぁと。

ただそれはディープブリランテにも言えたことで、重厚過ぎるほどの血統背景は日本ダービーを押し切るのに向いているだろう。

また大きな焦点としては

Northern Dancerクロス 

Up Spirits≒Sir Ivor

Sir IvorMill Reefのナスキロクロス

Chorus Beauty≒Roman

を幹としたAlzao≒Gale Warning3✕3がどういった形で表現されているかだろう。Alzao≒ラストタイクーンは有名であるが、それにRoman弄りやHalo的ニアリークロス(Up SppritsはRed Godの半弟で、父Turn-to)を加えたことがどう出るか。プラスかマイナスか。

Romanが継続されて、Hail to ReasonクロスをSadler's Wells経由で行っているのだから突進力は十分だろう。あとはそこからの持続力である。

そこの弱さがあるんだわ。確かにドイツ牝系のスタミナは魅力的だが、ディープインパクト産駒がその類のスタミナを上手に扱えたことってないはずなんだよね。エイシンフラッシュがそれをこれから種牡馬として証明してくれるとは思うが、数少ない試行数から言うと、ディープ✕ドイツ牝系は逆ニックスだろう。

また体形がTurn-toであるから有効に動かすためにはMy Babu≒Ambiorix≒Klarironを欠かせない。「サンデーサイレンスLyphard+ハイインロー」を有効に動かそうと言うのであればDubarとBarraとLavendulaを繋げる血統が必要であり、それをヴァンキッシュランは持たないわけだな。

ビュンッと加速する姿はBold ReasonNever Bend仲間のシンハライトと似ているが、どうもこちらは仕組みに難があるように思える。そんな仕組みになっているならRibotを使ってPrincequilloを重厚なスタミナ血統に確立し、それからナスキロを取り入れるとかすれば良いのではないかな。そして基本はHaloニアリーないしHaloクロスで動けば良いのである。それでダービーを勝てるかは別だが他の大レースで勝機はあるはず。

俺個人の考えを言うと、リリーオブザヴァレーの配合はその時点で完成を迎えてしまったのだ。「4分の3ND、4分の1Mr. Prospector」の欧州的配合が終着だったのだ。だから繁殖としての価値を見出されずに整理の対象となったのではないか。

そういった繁殖を相手にするのがサンデーサイレンスの面目躍如ってものであることはわかっている。しかし欧州的に完成された重厚血統を相似配合気味に稼働させるにはディープインパクトは重すぎるのだ。

それを手助けするのがフランス産まれのアメリカ名サイアーMy Babuであろう。ヴァンキッシュランにはアメリカンスピリッツが足りない。それでは日本の馬場には対応できない。日本競馬とはグラパゴスな中距離絶対主義であるが、血統そのものはワールドワイドであろう。

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