砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

Lyphardの歴史

日本におけるLyphardの伝道師というと、これはなかなか面白い。

まずはメジロとシンボリが共同で所有したモガミ。

初っ端からシリウスシンボリでダービーを勝ったのだから尋常ではない。そして2年目の産駒からは牝馬三冠馬メジロラモーヌが出た。それ以降はレガシーワールドブゼンキャンドルなどしか出なかったが障害の活躍馬をたくさん輩出したスタミナは本物。

格は劣るが同時期のLyphardと言えばリイフォーがある。

代表産駒はマイル中距離戦線で活躍したニッポーテイオー。そのほかに第一回BCマイル勝ちのRoyal Heroineがあって、これはレース名になるレベルの名牝である。他にトロメオサンキリコなど活躍馬は多数。基本的に短距離血統である。

これらの活躍もあって日本におけるLyphardの地位が築かれたと言える。ただそれが確たるものであった様子はなく、あくまでも一過性の流行だったろう。中央競馬の一線級にこれらの血を持った馬は非常に少ない。

例外があるのは周知のことである。ただそれはもう少し後に言及する。

これらの血が淘汰されたのは社台グループにノーザンテーストの血が導入されたことが発端。そしてブライアンズタイムトニービン、そしてサンデーサイレンスが登場したことによって形勢は決まったはずだ。社台グループ無双時代の始まりである。

これによって社台グループと真っ当から叩き合うことが求められた。日本競馬を一気に世界の檜舞台へ叩き上げた社台と黎明期を過ごした日高が争うのである。当然、根本的な改革が求められる。

基礎牝馬の輸入に始まり、敵の血統を使用することもまた必要とされた。大規模な血の革新が行わたことによりレースの質すら変わる。スロー競馬の始まりはここであっただろうし、またスローでなくともサンデーなりトニービンなりブライアンズタイムなりは強かったのだからタチが悪い。

バブル期の日本経済から金を巻き上げ、そしてまたその金は社台へ募った。なんたって社台の血は走るのである。強い馬を作るには社台を頼るしかなく、社台の作ったレースは社台しか走らなかった。そしてまた社台グループの吉田一家は世界クラスの馬産家であった。(実際に社台グループは世界有数の馬産集団である。)

モガミやリィフォーの血を活かさない社台の血により日本のLyphardは淘汰されたのである。社台の発展はノーザンテーストに始まり、その集大成もまたノーザンテーストクロスによってもたらされた。同じND系なのだから淘汰されるのは仕方がない。

しかしモチジュン先生がおっしゃっていたことだが、オルフェーヴルの配合なんてのはフランスの血統ファンに見せびらかしたくて仕方がないわな。正確にはメジロマックイーンだった気もするが。

こんな一つの地域だけで繁栄したND系をクロスした馬が凱旋門賞を勝ち負けするだなんてたまったもんじゃないぜ。「Northern Tasteってなんなんだ」「Mejiro Mcqueenってなんなんだ」「Stay Goldって・・・あぁファンタスティックライトを破ったっていう」「Grandma Stevensって・・・あぁDynamoの牝系ね。しかし大した枝葉には見えないぞ」なんて色々と話は尽きないはずだ。そもそもメジロマックイーンの時点で「パーソロンってなんなんだ。日本でMy Babu系がこんなに発展してただなんて知らないぞ」って話。

パーソロンだもの。Tourbillonの血は一部のフランス人がアホみたいに守りぬいたりしたものだが、まさか東洋の僻地でTourbillonの血が直系として残っていたとは思うまい。更に「俺の母ちゃんTourbillon系だよ」と凱旋門賞勝ち負け級の産駒がやってくるとは。

マジでねぇ・・・。Klaironの血統を見た時にゃ「フランスの変態なかなわんぜ」と思ったもんだが、日本の変態っぷりもなかなかなもんだよ。まぁ、フランスの名ホースマンたちの築いた血統を今も日本は大事に育てているのだと考えてくれたら嬉しいよな。あとマックイーンだけでなく、Flambetteのことも日本は大事に思っています。

してLyphardに話を戻すと・・・

社台無双の時期に突如として、まさに降って湧いた話として、ダンシングブレーヴJRAによって輸入されるのだね。フランケルがいきなり日本へ輸入されるようなもので、あるいはそれ以上の驚きだったかもしれない。なんせ当時の日本は「種牡馬の墓場」と呼ばれる競馬後進国だったのだ。

インドへ病気のオルフェーヴルが輸出されました、と言われて日本の競馬ファンが納得できるだろうか。アドマイヤドンが韓国へ輸出されても後悔するのにな。

ともかく、この大騒ぎによって日高の馬産は再びLyphardに湧くこととなる。キョウエイマーチキングヘイローテイエムオーシャンエリモシックなどが出た。母父としてスイープトウショウメイショウサムソンメイショウサムソンは父がオペラハウスなので静内配合である。

そして、それを超えた繁殖成績を残している・・・といってもダンシングブレーヴは産駒数が圧倒的に少ないんだが。とりあえず記録的には日本競馬歴代トップのディープインパクトの時代である。運命とか種付けの耐久性とか含めて種牡馬の評価は決まると思う。

ただこの現代Lyphard二頭がLyphardを伝えているかと言われりゃ微妙で、それはモチジュン先生も仰られている。この二頭はLyphardではないオリジナルなのだと。

Lyphardっぽい距離適性を持っていたのはニッポーテイオーで、ちょうど1400m~2000mあたりの距離でピュンピュン走るぐらいが調度良い。「サンデー✕Lyphard+ハイインロー」ってのは「(中距離✕マイル)+(中長距離✕長距離)」という配合形なんだ。

ハイインローはHamptonを共通とした中長距離✕長距離の配合形で、これはすごくスタミナ豊富な配合と言える。これにLyphardが重なることで「マイルスピード✕中長距離~長距離スタミナ」ということとなり、それを歴史的中距離配合馬サンデーサイレンスがまとめ上げることで「マイラーのスピードとステイヤーのスタミナを補完した中距離馬」が誕生するわけだな。なんてご都合主義!

サンデーサイレンスの凄さはNorthern Dancerと中距離力の根幹を同じくすることだろう。そのあたりをより詳しく解析すると・・・もっと話が長くなるので省略する。とりあえず世界を席巻する流行血統に対する強烈なニックスを持ち、その上でそれをアウトする血統・・・これが流行しない理由がない。

そのあたりについて掘り下げるとサンデーサイレンスクロス+Northern Dancerクロスの可能性について考えられそうではある。異系スピードがあると計算は立つんだろうが・・・。Nasrullahに対するWar Admiralみたいな存在があれば面白い。それならサクラユタカオーを作れる。

話の収集がつかないので切る。

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