砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

Chief's Crownの魔力~サトノノブレス雑感~芝砂万能三つ巴

純米配合ながら強いスタミナを持つこの血統が僕は大好きです。

ステファノスはディープ✕クロフネSeeking the Goldだから力っぽいストライドで走る。だから阪神内2000mというのはベスト条件だろう・・・という見込みだったが思いの外切れなかった。

武豊メイショウナルトが12.6-11.3-12.0のスローで序盤を凌ぎ、そこから淀みないミドルペース。今のナルトが刻める限界の数値と言えて、確かにこれは前の馬が残ってもおかしくはない。というより差し気味に構えると厳しくなる典型パターン。

外に構えたステファノス戸崎圭太のねじ伏せるパターンとも言えて、その分だけ厳しくなったのも確か。切れることを望まない展開でサトノノブレス川田がまくるとなれば展開がハマってもおかしくはない。そういえばラブリーデイもこの形で宝塚記念を勝たせたのだった。

6歳になってトニービンが本格化したのだ・・・という見方をすればサトノノブレスのレコード押し切りは順当ではある。それでもステファノスの能力ならば上を行ってもおかしくはないんだが・・・。

ステファノスはもう中距離を走る馬ではなくなっているのかもしれない。

確定ではないにしても、Chief's CrownというSecretariatのスタミナ権化を持つ以上、どこかしらでこの血がいたずらをしないわけもない。AlzaoSecretariat絡みのニアリーを持ち込むのは長距離系ディープの常識でもある。

それはキズナもそうであるし、あるいはエイシンヒカリもそうであるかもしれない。ただこの二頭はStorm Catを使っている分だけ長距離へのシフトは緩やかである。嵐猫自体は長距離でもなんでもないから。

けれどChief's Crownは純米配合でBCターフ勝ち馬を輩出したアホな馬だ。父父Danzigで芝2400mを押し切ることをアホだとは思わない。ベルモントS勝ち馬も輩出した血統だからね。けれど自身が中距離ダートを走り、その産駒からBCターフ勝ち馬(チーフベアハート)を出した事実は飲み込みづらい。

矛盾がある以上はそれ全体を表現することはよろしくない。2代母ゴールドティアラDanzigを使って砂1400m~1800mの重賞を勝ち負けした馬で、特にフェブラリーS2着、南部杯1着とマイルでは牡馬相手に対等以上の争いをした馬である。

その上にクロフネ、ディープと重ねたステファノスは・・・果たしてどっちだろうか。とりあえず「ちょっと力っぽいけどぴゅんっと切れる中距離馬だよ」と迷いなく言える状態ではないことは分かる。

レコードペースだったことに間違いはない。武豊ハーツクライのために刻んだペースなのだ。しかし10Rでアスカビレンが外1800mを悠々と1分45秒0で差しきっているのだから馬場も速い。その分だけ母父クロフネがマイナスに出ていることも確かである。

ノブレスも馬場が渋った時によく好走するが、走り方とかパワー以前に粘り強さがあるタイプなのだよな。ディープ✕トニービンの逆ニックスだがその成りに合わせてまとめた変態ディープ。

ビュッと切れないけれど加速は鋭い。かといって加速戦では劣る。ウインバリアシオンを持続型にしたイメージかな。エピファネイア菊花賞で粘り強く2着まで差し込んだのは伊達ではないのだね。

実際問題、ここまで明確なスピード血統を持たずに日本の重賞を二つ三つ勝っているのは不思議でならない。未来の血統ファンが「ディープインパクトとはなんぞや」と語るときに欠かせない一頭だろう。こんな変わり種でも重賞を勝ちきる何かを持った血統なのだと。

現代人でも戸惑うからなぁ・・・。こんなに胴体が安定しているのに靭やかに四肢は躍動する。この古いおもちゃの様な動きはトニービンというか・・・Nasrullahなんだろうと思う。短距離馬の動き。

サクラユタカオーだともう少し脚が長くあるんだが、まぁそういう類の動きだよな。全身運動ではないから安定してスピードを出せる。だから燃費よく走る事ができる。ただし瞬発線では弱いと。

トニービンが東京で強かったのはそのせいと見えて、ダービーを勝ったトニービン産駒は胴体が動かないタイプだ。下り→登り→平坦までのロングスパートを淀みなくこなせる点で優秀なのだと思う。

そのタイプにハイペース阪神内を押し切られるのは仕方がないとも思うわなぁ。しかし秋天でもラブリーデイに押し切られて、格の落ちる鳴尾記念でもサトノノブレスに押し切られるというのはあまりにも情けない。

これは単純な話、クロフネSeeking the Goldが重すぎるんだろう。もう少しシュパッと動かないとディープインパクト産駒としての旨味がない。

フレンチデピュティの血ならウリウリ=マカヒキショウナンパンドラのように動くことも出来る。しかしクロフネの場合だと重くてしぶとい動きになりがちなんだ。クロフネだからこそハイペースに耐えられたのだとも思うが、それならディープである意味があまりにもない。

ブルーアヴェニュークロフネの母)はClassic Go Go✕Icecapade✕Robertoだ。これらの血はディープには薬にも毒にもならない。どちらかと言えば毒だが、薬にもなる。

Roberto✕Erinという観点でディーマジェスティ的である。フレンチデピュティという観点ではマカヒキ的である。Never BendIcecapadeという観点ではミッキークイーン的である。難しいっ!

ただこの配合がG1級かと言えば微妙である。この言い回しが好きである。

Chief's Crownの処理が雑なんだわな。ミスプロ系を持ってきたりするのは悪く無い。これはアグネスデジタルなどもやっているパターンだ。なのでゴールドティアラの段階でどうこう言えることは何もない。ていうかG1馬の配合にイチャモンつけるつもりはない。

そこにクロフネを持ってきてしまうってのが雑なんだよね。ココシュニックはダートの1700m~1800mで3勝した馬だからあからさまにクロフネ的。ここで主導権がクロフネSeeking the Goldに移っている。

それにディープをつけた。そうなれば子どもも「ディープ✕クロフネ」の配合形に対して素直に出るわけだが・・・もちろん違うよな。Alzao≒Chief's Crownが発生する。揺れ戻される。

再びここで「ダートらしさとは、芝らしさとは」というChief's Crownの小難しいロジックへ再突入するのだわ。Danzigの速さで砂G1を勝ったゴールドティアラと芝砂万能なクロフネ、そして絶対的芝適性を持つディープインパクトの三つ巴だ。

嵐猫だったらこんなことにはならないさ(芝のアイアンホースを産駒に持つ)。チーフベアハート(自身はBCターフ勝ち。産駒に春天勝ちのマイネルキッツがある。)やSinndar(ダービーS勝ち馬)を経由してもこんな話にもならない。砂の名牝であるゴールドティアラを経由したからこそこういった話になる。

その中からAlzao≒Chief's Crownなんてやらかされても困る。Alzaoでニアリーするのはディープの芝力を引き出す仕組みとして悪くはないが、しかしクロフネに主導権を握られたココシュニックの配合から日本の芝を俊敏に走る馬を出すことは難しいだろう。

クロフネの血を近い代に持った馬が俊敏に動くということは・・・ありえないと言える。この産駒が栄冠を得るときは絶対に「上がり1位」ということがありえない。2位や3位が多く、フサイチリシャールなんかの朝日杯も4位の上がりで押し切った内容だ。

つまり切れ負けしやすい。この傾向は母父としても多く伝えている。

だからステファノスが切れ勝負の秋天を差し込んだ時はちょっとビビった。Chief's Crown≒Alzao

が機能しているからこその切れ味なのだと考えなおしたけれども、やっぱり力っぽい・・・ちょっと日本の芝ではロスを感じる切れ方をしているんだよな。

クロフネが3代目に退けばちょっと違うのだろうけど・・・どうなんでしょう。

安田記念が驚きの結末を迎えたので切り上げる。

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