久々の非Nijinsky馬の勝利となったのが昨年のグランデッツァ。ロイヤルスキーがFlaring TopでNijinskyと牝系を同じくしていることもあるので、もしかするとこの辺りにNijinsky伝説の理由があるのかも。
まぁ、ないわな。
グランデッツァはTudor Minstrelをちょいちょい含んでいる馬(6✕7*8の「4分の3Tudor Minstrel、4分の1非Tudor Minstrel」)で、短距離系Hyperionを基礎に置いた配合と言える。4分の3姉のマルセリーナが桜花賞のディープインパクト伝説を立ち上げたことを見ても、母マルバイユの短距離力に間違いはない。グランデッツァ自身もマイルCSで1分31秒7(アベレージにして11秒46)の時計を叩き出していて、都大路Sの勝ち時計1分43秒9(Av 1F11秒54)に至っては日本レコードである。
もちろん馬場状態のこともあるので一概には言えず、京都1800mでエイシンヒカリより強いかと言えば怪しいものだ。しかしレコードホルダーはグランデッツァである。事実。
事実であろうが何であろうが、七夕賞とはあまり関係がない。あるとすれば、七夕賞の時計が早くなっていることだろう。13年に前馬未踏の58秒台に突っ込んだかと思えば、ナルトがそれを更新し、グランデッツァが更に更新。とうとう57秒台が見えてきたぞ・・・という状態。
これほど速い馬場になるとNijinskyはいささか鈍足と言わざるを得ない。これを平坦高速に落としこむとすればゴールデンサッシュ=サッカーボーイ、それと似た形を取るサクラバクシンオー、あるいはMr. Prospectorのスピードを持ってくるしかあるまい。つまりハクサンムーンみたいなスピードの補完の仕方がベストだということである。おそらく平坦スプリントで一番速いのはこの馬だろうし、新潟スプリンターズも快い良馬場で開催されていれば話は違っただろう。とにかく道悪踏破能力で劣る。ザ・日本スプリンター。
そのハクサンムーンも馬場の悪くなったオーシャンSを立派に逃げ残る始末で、これはもう老化現象によるズブさとか、変な力っぽさが出てきた様子である。Nijinskyもノーザンテーストも晩成的にパワーが増す血統だ。Storm Bird-Storm Catとか、Vice Regent(=ヴァイスリーガル)-Deputy Ministerとか、The Minstrelとかもね。
それもまぁ、ステイゴールド✕メジロマックイーンの「超靭やか気性難✕靭やかステイヤー」のヘンテコ配合にはちょうどよかった様子である。緩慢な体つきに冗談みたいな筋肉量、それがステマ配合の魔法だ。
あとNijinskyのよろしくないところは、何にしてもSir Gaylordへの渡りを持たないことである。どうしてもテスコボーイとかのPrincely Giftへ引き寄せられてしまうところがある。Caerleonとかになってようやく繋がりが生まれるくらいで、それでもやっぱりミスプロとかの方が好き。
なんだかよく分からんがTurn-toスピードを直接取り入れることが出来ないらしい。CaerleonもHail to Reasonだし、それを母父とする日本の名マイラー、タイキシャトルもHalo直系馬だ。とにかくNijinskyはTurn-toをHail to Reason経由でしか取り込まない。
それでもHaloへの繋ぎが出来たのだから先行きは良いだろう。Nijinsky≒Storm Birdを発生させつつ最強のボルキロ血統を連れてくるStorm Catをニックス相手としたのは大きい。レッドスパーダのようにHalo≒Sir Ivorを突っ込む手があるくらいである。
それでもやっぱり高速馬場は下手糞だろう。登坂も苦手である。平坦道悪でデンデコデンデコと走る習性は失われず、むしろ特化している様子すらある。Nashua≒nNantallahとラトロを突っ込みゃメイショウボーラーみたいにダートを走るわな。
やはりエピファネイアとかラブリーデイも純粋な高速馬場は下手糞で、ベストパフォーマンスは少し時計のかかる馬場でデンデコデンデコと走る展開だった。ラブリーデイはエアレーションの京都大賞典を一気に駆け抜けていったな。
ダンスインザダークとスペシャルウィークという例があるために「サンデー✕Nijinsky」というのが当たり前に見えているが、よくよく考えて見ればやんちゃな配合である。Nijinsky✕Hail to Reason✕Haloという3ステップで解決したものを、Nijinsky✕Haloでぶちかましをかけてしまった。絶対喧嘩するだろう。
それを開戦せずに済ませるのがサンデーサイレンスの度量と言える。ほとんどの材料をサンデー内に持っているから喧嘩らしい喧嘩にはならなかった。特にMenow✕Omaha✕Man o'WarはWishing Wellの得意分野だ。
またシーザリオの秀逸な点は、牝系目線においてTurn-to✕Hail to Reasonの地道なステップを踏んでいることにある。これがサンデーニジンスキーの衝突を和らげている要素だ。
この仕組みはブエナビスタにおいても同じであるが、彼女の場合はNijinskyクロスを施している。この意図はつまり、兵站を整えてからの開戦だろう。檄文を飛ばし、サンデーサイレンスの度量を超えるだけの熱量を配合している。
こんだけやっても、高速馬場は下手糞なのがNijinskyだ。キングカメハメハくらいにNijinskyガン無視決めている様な配合においても、やはり高速馬場は苦手である。
超例外的なものとしてラキシスがある。相手がヌーヴォレコルトやディアデラマドレであることから高速馬場適性が試された様子のないレースだが、エリ女を最も攻略したのはラキシスであった。
ただしこれもStorm Bird≒Nijinskyらしく道悪は鬼。同じディープ✕嵐猫のキズナを破る大金星を不良の大阪杯で挙げた。阪神内の道悪はディープ牝馬という枠でも得意だな。Vice Regent≒ノーザンテーストのショウナンパンドラは高速馬場が好きなタイプなだけに不思議なものである。
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