砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

函館記念の展望をば

中央4場において、阪神京都東京は比較的差しやすい舞台である。比較対象が中山なのだからこれらの外回りはもちろん、内回りも差しやすい方であろう。

だが実際には馬場状態が悪くならないかぎり差し天国とは言えない。それは逃げ先行の技術において非常に歪な巧みぶりが発達しているからだ。アメリカ的に素早く逃げ争い、フランス競馬かと思わんばかりのスローぶりを見せる。心地よく逃げることを目的とはせずに、ただ差し馬のリズムを崩すことだけを追い求めた結果である。

それだけサンデーの差しが強かったということだろう。岡部の差しに、豊の差しを誰もが恐怖を抱いた。そして当人もまた差されまいと工夫を重ねた。だが、その積み重ねの末にある現代では恐るべき差しは血と共に薄れた。工夫だけが残っている現状がある。

しかしその工夫を責めるレイアウトもあり、その代表格が函館2000mと言える。次点にはG1限定の東京2400mで、これは前半1000mを淀みなく逃げてなんぼという世界に誇る素晴らしいレイアウト。アメリカ的な速さを持たねばならず、その上でイギリスのタフさを求めるという日本競馬の象徴である。

(その点からしキングカメハメハディープインパクト種牡馬として大成したことは当然であろう。それと、まだ見ぬオルフェーヴル産駒の走りが日本に適さない可能性も考えさせられる。)

オルフェーヴルTourbillonとTeddyのスピードでロンシャン無双してほしい種牡馬。フォルスストレートを淀みなくかっ飛んでいく持続力をその産駒の代に発現して欲しい。)

(ということを産駒も見ぬうちに言うのも博打ぢみている。)

逆に中山2200mなどは「スロー&ロングスパート」の聖地と言うべき舞台。AJCCゴールドシップを本命としたあのころが懐かしい。スタート後にすぐさま控える高低差、おおよそ、3.5mの登坂。登った後、淀みなくそれを下って行き、最後に2mちょっとの登坂をグイッと登って100m足らずの平坦を行って、入線、というコース。ハードである。

函館はそれほどハードではない。下って~登って~平坦。終わり。問題があるとすればスパート区間が登坂区間と重なることであり、その登坂自体がラスト1100mから続いていることにもある。登って、さぁ行くぞ!と促そうにも登りっぱなしなのだ。

登坂中の馬はスピードが乗らないためにピッチが緩まない。登るためのピッチ速度を維持しなければならず、その中で追い出されても「えっ!ここから更に頑張らなきゃならないんですか!?」と馬も困惑する。人気が沈没するのはこのパターン。

だから追い出しをラスト470mくらいまで待てるだけの位置取りをしなければならない。京都とか阪神のイメージで残り800mからジワジワとスパートをかけようとする駄目ジョッキーは函館でほとんど勝てない。その反面、三浦皇成みたいに追い出しが遅い好位騎手は変に函館が上手い。

函館は関東騎手が得意なイメージがあるな。吉田隼人も上手いだろう。有馬記念で見せたゴールドアクターの騎乗は非常に函館的で、前半の下りを利用して綺麗に先行を決めたところは実に上手い。

皇成もエイシンフラッシュを函館的にエスコートして弾けさせた。福永アーネストリーとバッシュビートブラックが淀みなく進めた持続戦において、よくエイシンフラッシュらしい脚の使わせ方をしたなぁと思う。

函館2000mの脚の使わせ方に関しては、吉田隼人ゴールドアクター三浦皇成エイシンフラッシュ、この二頭をイメージするのが良いかと思う。逃げなら武豊キタサンブラック宝塚記念Ver)、あるいはシンプルに、函館記念トウケイヘイローだろうか。

これで逃げ、先行、好位が揃った。これに加えて中団差しの代表格を挙げるならば、そりゃもちろん池添謙一だろう。

困ったことに巴賞のレッドレイヴンは完璧過ぎる。駄目よ、函館中距離でグラスワンダーを池添に使わせたら、駄目よ。ヤマカツエースとかを綺麗に持ってくる達人なんだからね。駄目よ。

130mくらいの登坂を含めた合計600mのスパートを池添&グラワンがやったら綺麗にハマるんだ。グラワンピッチが100mほどの登坂で光ることは、有馬記念2連覇で十分に示している。駆け上がりながらスピードをキャリーできる数少ない血統と言えるだろう。

しかも池添はローカル戦において綺麗なラップを刻んで突っ込んでくるのが厄介だ。速い流れを捕まえることに関してこれほど達者な騎手も少なく、金鯱賞カレンミロティックとかホントさりげない名騎乗である。

また函館2000mは速い流れになりがちであり、それを捕まえるために人気馬が拙い位置取りから拙い仕掛けですっ飛んでいく舞台である。つまり差しに回ってもマイペースに動けるし、その上で目標を定めやすい。マーク戦術大好きの池添であるから、この点においてもやはりハマる。

予想は騎手から入るのが常道だろう。それがモヤモヤするのであれば、登りながらスパートをかけられる第二の血統である、ステイゴールドノーザンテーストの変態配合馬トゥインクルのスタミナに期待することになる。すなわち、漁夫の利の勝利を、ラブイズブーシェのパターンを、狙うわけだね。

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