砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

フクノクオリアの血統チェック 函館2歳S

キンシャサノキセキは血統的に未知数なところが多い。

フジキセキLe Fabuleuxを異系とした「4分の3米、4分の1仏」の配合形。対して母ケルトシャーンが2代母Lady Berryを異系とした「4分の3米、4分の1仏」の配合形となり、キンシャサノキセキ自身もまた「4分の3米、4分の1仏」の配合であると言える。

ただ合流した仏血統の共通点は淡い。方やWild Risk直仔のスタミナ血統で、方やTourbillon3*4で母父Mossboroughのスピード血統である。仏血統と言えどもお互いに脈絡しあうところもなく、上記の言い方では語弊を招く。

正しくは「父母共に仏血統のサポートを受けた米血統同士である」ということだ。そしてその輪を繋ぐのはフランスの名血統であるRabelaisとKsarであり、偉大なるおまけとしてSolarioがある。

この3血統には米血統と直接的な繋がりはない。だが米血統を食い尽くしたNorthern Dancer直仔たち・・・特にフランスで活躍し、フランスに多くの血を蒔いたLyphardとは好相性であることは知られている。

またRibotと言えば凱旋門賞2連覇のAllegedの父祖である。Allegedの父Hoist the Flagは・・・母母父にTourbillonを持っている。というよりも、Ribotに対してTourbillonとはニックスの間柄である。この血を通すとLyphardとのニックスもまた深みが生まれる。

キンシャサノキセキとはこういった淡い繋がりだけで走った馬である。だから、伝えるものを特として持たない・・・はずなのだが短距離に偏っているね。これはキンシャサノキセキがどうこうではなく、フジキセキの密かな遺伝が今なお続いていると見るべきかもしれない。優れたパフォーマンスを持ちながらクラシック勝ち馬を最後まで輩出しなかった高速血統だからねぇ。

あるいはその高速血統を使わなければ良い馬には出ないのかな。スピード≒パワーの米血スピードを注入するパターンでは惜敗馬がダート変わりで勝ち切るみたい。芝向きの血統を重ねないとシュウジみたいに芝で重賞を勝つ産駒には出ないかもね。シュウジKingmamboなんてのは偉大なる母Miesqueも自身も芝の名馬だものな。(親子でムーランドロンシャン制覇)

フクノクオリアは母がマヤノトップガンSecretariatだから・・・まぁ芝を走ることを許されるかな。母ちゃんは芝中距離のオープン馬だものな。ちゃんと福島牝馬2着とってるんだもの。サンデーサイレンスのベッタベタな靭やかさこそ持たないのだが、母父Secretariatであるのだし、かなり柔らかな動きを遺伝すると考えられる。

SecretariatSir Gaylordがなぜ柔らかいのか。それは誰にもわからない。多分、あれ、ほら、ねぇ。主流血統に対してナスキロ的な関連性しか持たないからじゃないかと考えられる。特にSecretariatはハイソな血統であり、Storm CatやChief's Crownなんかの一流血統として伝わることが多い。そうでければハロースピードの様に単独で伝わり、この場合でも名馬輩出に一役買う。サウンズオブアースとかリーチザクラウンとか、変則なところではロードカナロアとか。(牝祖がSecretariatの全妹)

あとフジキセキBlushing Groomはパッと見た感じではニックス臭いのだが、実際のところは逆ニックス。Wild RiskクロスとHalo≒Red God、そしてフジキセキと牝系クロスが発生する嬉しい働きが見込めるのだが、近親に持つには刺激が強すぎる様子だ。遠い代にBlushing Groomを持つフジキセキ産駒だとミラクルレジェンドがあるので、母父マヤノトップガンなら許容範囲だろう。

マヤノトップガンの上級産駒は、芝砂問わずに、持続戦を鋭く差し込む様な馬が多い。それはトップガン自身の春天レコード勝利を髣髴とさせる特性である。追走時には靭やかであり、スパートをかけてみればサッと動く。それはもう、ダートでまくれるほどに鋭く動く。

フクノクオリアキンシャサノキセキ産駒らしく胴の詰まった身体で、脚の捌きも速いスプリンター体形。しかし脚が長くて可動域が広いストライダーなので11秒フラットで走り続けることに長けたイメージもなく、そのあたりはマヤノトップガンの血を活かして小回り1400mでサッと差し込んで欲しいところか。

あと、キンシャサノキセキマヤノトップガンは面白い配合だが晩成血統でもあろう。

His Majesty=Graustarkシュウジを含めるキンシャサノキセキ上級産駒のほとんどと共通するクロスであるが、それらの産駒は近親に早熟&スピードの米血統を伴う。マヤノトップガンは明らかに、それへ当たらない。ブライアンズタイムはともかくとして、マヤノトップガンは晩成型であり、自身のデビュー戦は年明けの4最新馬だ。皐月賞にも東京優駿にも間に合わなかった菊花賞馬である。

何度も書いたがキンシャサノキセキもまたアウトブリーダーであり、戴冠したのはなんと7歳の春、高松宮記念である。ラストレースとなった8歳時の高松宮記念もまた勝利して2連覇を遂げている。競走馬として出来上がったのはおそらく5歳春ごろで、現代のスプリンターとしては異色なほどに競争能力を保ち続けた馬だ。

キンシャサノキセキ産駒はこれからどんどん上昇してくるだろうし、来年か再来年あたりが評価の定め時だろう。その時に、ディープやキンカメへ対抗するのは難しいとしても、クロフネを上回ることが出来れば将来は明るいはずだ。カレンチャンくらいのスプリンターを出すパフォーマンスを秘めている・・・という証左にはなるだろう。

まぁ、クロフネ自体は産駒の能力値よりも血統の使い勝手に重きが置かれている種牡馬だけどね。Vice Regentというニッチなノーザンダンサー系でありつつ、ノーザンダンサーのクロスを持たない。もちろんサンデーサイレンスの血を持たないし、サンデーサイレンスとのニックスも持たない。だがホエールキャプチャなどの実績がある。

母の父としては早々にアイスフォーリスを叩き出し、近年ではステファノスを輩出。この点においても、やはり、特たる相手を選ばない万能ぶりを見せている。ステファノスはディープ、アイスフォーリスはステゴ、カラフルデイズはフジキセキ、ハピネスダンサーはメイショウサムソン、フォローハートはサンライズペガサス、ケツァルテナンゴはチチカステナンゴ、メドウラークはタニノギムレット、ドラゴンエアルはタイムパラドックス・・・多彩である。

何を相手にしてもオッケーというのは牧場側としてはありがたい様子である。ディープをつけてもオッケーなのだから繁殖としての価値は高く、サンデーの血を持っていても非サンデー種牡馬を選び放題である。少なくとも「クロフネ繁殖だから」という理由で相手が制限されることがない。

キンシャサノキセキは欧州スタミナ食べまくりのタイプであるから将来的には中距離馬を輩出するに至るだろう。それが直仔の代に為されるのか、数代後に為されるのかは分からない。Danzig(変態スプリント血脈)-Chief's Crown(砂1200m~2400m)-Grand Lodge(セント・ジェイムズパレスS勝ち馬)-Sinndar(英愛ダービー馬かつ凱旋門賞馬)ということもあるのだ。

だがハロースピードを相手取って短距離馬を出すのだからスプリント的遺伝力は並々ならぬ。ステイヤーとは言わなくとも、中距離馬が出てもいい配合形なんだけれどねぇ・・・。

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