砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ベルーフの切れ味とは

母がステイゴールドの全妹で、ドリームパスポートの叔母という良血。

ただステイゴールドの近親だから~という理論は展開しづらく、イメージはあくまでもドリパスやフェイムゲーム、タマモ~プレイ。ステイゴールドが配合通りに出た名馬であるかというと微妙なのだ。

とりあえず分かるのは・・・ゴールデンサッシュ牝系そのものはトニービンとは喧嘩しないみたいだね。それとWorden≒Le Fabuleuxはベターなところかと。ベルーフの場合はBeringとディクタスを通じるLe Fabuleux≒Wordenである。

ただナスキロを持たないのでハービンジャーのまくり要素はオンになっている。ナタ切れで小回りを追い込むイメージで「後方から展開するナタ切れエクスペディション」だろう。もはやそれはエクスペディションなのか・・・という疑問はさておく。

ハービンジャーのWorden≒Le Fabuleuxは付随するLyphardがオンになりやすい様子で、それはハービンジャーの靭やかさがフランス的にまとめられているからだろう。そうでなかったらもっとDanzigパワーでダートを走る産駒が多いはずである。(芝143勝でダートは僅か11勝。新馬戦と未勝利戦で占める。)

配合からすればかなりLyphard種牡馬で、そりゃ要所はBeringでしょう、Shareef Dancerでしょう、という気持ち。でも鈍足だからゲートを出られない弱点があって、それが物足りない結果に繋がっているのではないかと。

賞金上位はほとんどが母父サンデーサイレンスであるし、フジキセキが2頭、ダンスインザダークが1頭、プロフェットタニノギムレットポトマックリバーのスウェプトオーヴァーボードなどがちょっと珍しい。やっぱりサンデーの芝スピードに頼るところが大きいし、そこにNDのクロスを入れてどうなるかって感じだね。

でも成功パターンはFlambetteの類のクロスで、NijinskyノーザンテーストThe Minstrel、あるいは直接Nijinskyをかぶせるとかの手段を取るのが多い。母ちゃんがNijinskyノーザンテーストってのは鉄板。あとミスプロとか。

もうRoberto✕Nijinskyを意識しまくりの組み合わせで、ダートの手法で回転力を補う涙ぐましい努力。まぁノーザンテーストを組み込むのは賢いやり方よね。Specialの血統を使うのも一つだと思うがDanzig直系ということを考えるとパワーに溢れすぎるかも。

ノーザンテーストの良いところはむしろ靭やかすぎるところで、現代のイメージほどノーザンテースト産駒はゴリゴリとしていない。ダンスインザダーク産駒のスピード抽出にも一役買う血統でもある名血統。Lady AngelaというHyperion直仔のスピード血統をクロスしている効果は大きい。

またRoberto✕Danzig✕サンデー✕ノーザンテーストスクリーンヒーローな組み合わせだ。俊敏ではないが持続的に伸びる・・・というのはイメージ通りかな?でも外回りで切れるにはShareef Dancerをニアリーすることが必要だし、あと可能性があるのはBlushing Groomの化物。

ベルーフの配合ははアスコットやエプソムダウンズなどの「山の中に競馬場作りました」系コースで育まれたイギリス血統を刺激していないことで、伝説のKGⅥ&QESを演出したハービンジャーとしてはそれを使って駆け上がりたい。でもそれは鈍重さと引き換えなところがある。

日本の至宝サンデーサイレンスを母父に据えてもあの程度の俊敏さなのだ。ナスキロを積み込んで外回りを走っても、スローのディープと持続戦のハーツには敵わない。近い代にあるハービンジャーは今のところ使いようがない。

キングカメハメハがおかしいんだ。ナスペリオンにKahled一族を周到に絡めたあの俊敏はサンデーサイレンスを飲み込むに相応しい。(サンデーの2代母Mountain FlowerがKahled増し増し)

ハービンジャーサンデーサイレンスというのはその点において劣っている。例え母父にアグネスデジタルフジキセキを入れようが、母ちゃん側でカバーするにも限界があるのだ。テルメディカラカラは2代母がKahled=Red Ray5*6だが重賞に届くか届かないかというギリギリのところ。


ハービンジャー産駒は「Kahled絡み」と「フランス血統」の2パターンに配合が絞られていて、プロフェットベルーフはフランス血統タイプ。いずれにしても重賞を勝つなら名繁殖の直牝系であることが望ましい。(プロフェットはフェアリードール牝系)

KahledタイプはWar AdmiralやWar Relicの助けを要する。それにLa Troienneを加え、更にDroneなどのTom Foole的なHaloニアリーを重ねるとなおよい。これをしないとShareef DancerDanehillが餓死する。

フランスタイプもある程度の米血サポートが欲しいし、自然とそうなるわけであるが、目立って必要とするわけではない。Worden≒Le Fabuluexの格好良いニアリークロスはもちろん、Sea-Birdの化物クロスもまた格好良い。このパターンの長所は単純なPretty Polly弄りの成果が明確に出ることだろう。プロフェットなんかは本格化による俊敏増は見込めないものの、ステイヤーとしては有望である。大技があれば春天での活躍も・・・?

ベルーフは悪い意味でも良い意味でもハイブリッドな立ち位置で、それは母父フジキセキ組(Le FabuleuxクロスかつMillicentかつIn Reality)と似ているがそこまで明確なニックスではない。むしろ微妙。たまたま両親が噛み合っただけで重賞を勝ってしまった。これはゴールデンサッシュの底力を褒めるしかない。

この牝系特有の「非力なノーザンテースト✕Plincely Gift」を踏襲しているからこそのパフォーマンスであり、それゆえにフェイムゲームドリームパスポートたちと似た勝ちきれなさがある。どんなにハマっても2着までという悲しい非力さだ。それは一流の牝系に属し、それなりにきちんと走る馬であるからこそ受け継がれるものである。勝ち上がれない馬の方がパワーに偏向してたりするんじゃないか。

総合すると「ベルーフは小回り平坦向きの差し馬」ということになる。ハービンジャー自身が結構SolarioとLyphardの影響力を持った種牡馬であり、キタサンブラックと重なるところは多いかと。ただキタサンブラックがSolario的に淡白な体つきに徹しているのに対して、ベルーフハービンジャーの影響を受けた稼働の強さを感じる。力強い四肢を振り回すに足る筋肉を持つが、それ以上ではない。

Solarioの重賞級は最低限の稼働を保証するだけに筋肉量はとどまり、燃費良く走ることにステータス全振りする血統。瞬発力とかパワーとかを度外視して、靭やかに効率よく走るステイヤー気質なもの。Lyphardを絡めるのが絶対条件で、ハクサンムーンキタサンブラックが代表例。

ベルーフもそういった一頭であり、中距離の持続戦でしっかり伸びるタイプ・・・と言いたいけれども難しいだろうな。母父ハービンジャー・・・つまり4分の1ハービンジャーなら仕様もあるとは上で書いた。父ハービンジャーでは日本の芝に向いたスピードがどうしても足りない。

Solario馬としてきちんと本格化すればLyphardの前受けでサッとゲートを出られる。けれど母父バクシンオーの二頭はそのスピードで先行していた気配もあり、ハービンジャーの鈍足に悩まされるベルーフとは根っこが異なる。

その代わりと言っては何だが、ベルーフはまくり馬である。キタサンとハクサンはコーナーワークに優れた馬ではなく、高スピードで4角に進入するとかの芸当が苦手だ。Solarioは淡白な肉付きで走るために豪快にスピードを乗せると負担が大きい。またそういった走り方の出来ないタイプでもある。

新潟2000mにおいては3頭ともにメリットはなく、ベルーフのデメリット過多っぷりには涙を禁じ得ない。スローになったら鈍足死するし、ハイペースになってもフットワークの力っぽさが仇になってG1級の持続脚は展開できない。(ディープインパクト産駒は別。奴らは力っぽいフォームでグワングワンと伸びてくる。ディープは芝を舐める様に走る超低空度飛行だったが、産駒は米血のパワーを推進力にぴょんぴょん飛ぶものねぇ。)

ベルーフ新潟記念を勝つとすれば・・・ハイペースの瞬発戦だろう。エピファネイアジャパンカップの様に前半はかっ飛ばして後半はL2Fまでゆったり流れる展開だね。マイネルミラノの番手で我慢すればチャンスがあるはずだが、それに引っ付いて行くだけのスピードがあるかな。

また新潟記念の1枠1番って事実上の死に枠だからな。マイネルミラノを交わすことも難しいんじゃないかな。

[fin]