砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

足利滞在3日目 帰釧

二日目の夜は地元の友人と新郎、そして新婦で大いに盛り上がった。新婦が気さくな方であることは前述の通りだが、ここまで馴染みきっているのも不思議なものである。この友人グループは総じてスペックが高い人物が多く、またアホな騒ぎ方を突き詰めようと目的を持って遊びに興じてきた人間たちである。俺は傍観者、というよりも、彼らの冒険譚に心ゆさぶれる読者の様なものだ。

その俺の目から見ても「馬鹿な男子」の輪にすっぽりハマってしまった新婦がいる。やはりこの女性を理解するのは難しそうである。夫の友人がその妻に対してきちんとした理解をする必要はないものの、不思議に対して突き詰めたく思う心がある。

この二次会は友人の一人が奥さんに窘められて日をまたぐことを許されなかったことで早くに終いとなった。地元からも俺を含めて二人が参加し、久々に顔を合わせたのだ。それは、正直なところ無粋というものだろう。特別な日として自由にしてくれてもよい。

しかしこの自由な友人たちに理解を示さない奥さんの考え方にも少々の理解がある。実際に俺はこの友人たちの蛮行に乗じることは出来なくて、拒否の姿勢を取ることがほとんどだった。冒険譚には興味があっても、冒険へ参加することはついぞなかった。積極的に無謀へ立ち寄り、困難を得ようと立ち回る彼ら、消極性をモットーとする俺には理解できる生き物ではない。だからこそ彼らが好きである。

人は自分にないものを求める。だがそれを強要されることは大きなストレスだ。夫がその空気に晒されることすら大きな拒否を行うこと、対の蛮行というべきことであるが、それもまたおかしなことではないだろう。

別の友人の奥さんは許容している様子である。この友人こそ蛮行に及ぶ第一のエネルギーであるのだから、それはそうだろう。これを押さえつける奥さんなら、とても気になる。そんな女性がいるのかと。

そしてもう一人、今回の新婦は、この空気の中に飛び込んできたのだ。以前から各々と折を見ては会っていた様子で、誰もが彼女を受け入れていた。程度やジャンルによっては蛮行への参加も辞さないのかもしれない。あるいは俺と同じ、彼らのファンであるのか。

この新婦に関して書くことは多く、実証されたことは少ない。しかし友人とはそういったものであろう。

さて、3日目。家へ帰る日である。

色々と新郎新婦が気を利かしてくださり、ホテルから駅までの送迎、また羽田行きバスの手配を買って出られた。悪いから、と固辞の姿勢を見せるも、ホストの姿勢を貫く二人は折れてはくれなかった。あちらの立場を蹴っ飛ばすわけにも行かず、足利にいる間は甘えさせていただいた。

代わりに贈り物を出来る権利を得るのだ。祝いごとがあれば連絡して欲しいと伝えた。

新郎新婦、及び新郎の家族、及び俺。みなで仲良く同じバスで羽田へ向かい、俺は予め取っていたANAで一足先に帰釧を果たした。あちらは1時間ほど遅いJALで飛んだらしい。随分と久しぶりに感じる釧路の空気、実に寒い。

車に乗り込み、暖房をつけて、タバコを吹かしながら、帰った。

午後8時。家に帰って6時間足らずというところだろうか。その間、俺は疲れて寝るでもなく、洗い物をするでもなく、こうして日記を書くに時間を費やした。時おり競馬の情報を見ながら。

午後8時になると友人のカワタケが仕事を終える。彼は多忙のために栃木へ赴けなかったのである。誘いを受けた彼は律儀に結婚祝いを送っていた。新郎新婦としては贈り物や挨拶をしたかったのだろう。しばらくぶりの友人と会うだけでもある。

ちなみに新郎新婦は上記の通りに新郎の家族と共に釧路へやってきている。新婚旅行だと言っていたが、新郎の親族や新郎の親の結婚式で仲人を務めた方などへの挨拶回りも兼ねているらしい。実に律儀なことだ。尊敬。

その挨拶回りを終えた午後8時にカワタケと会ったのだ。そこに俺もいる。

新婦の方が笑いながら「◯◯も家族だから」などと言い始める。指折り数えて見れば、初対面から3日連続で顔を合わせている。また新郎の家族とも事あるごとに行動をともにしている。言われてみると単なる友人とは言いづらい立場にあることを知った。

俺自身は旅行半分に赴いていた。しかしホスト側はそうと受け取りはしないし、またそう考えることは難しいのだ。旅行半分だとしても、その旅行気分に浸って欲しいと思うだろう。そのために手を尽くそうとするのはホスト側の心理として当然というものである。お互いに快く祝い祝われるにはそうすべきだ。

どうやら俺にはゲストとしての姿勢が足りていなかったらしい。もてなされるのも一筋縄では行かないと、7月にそう考えはしたのだが、それでも一つ二つ考えが足りていなかったのである。社会のルールとは実に難しい。だが嬉しいものである。だからこそ、きちんと応えるべきだった。「温泉の許可なんていらない」などと心のすみでも思ってはならなかった。簡単でも軽くでも、絶対に感謝の気持ちを伝えるべきだったのだ。新郎がそういった配慮をしてくれたことにも。

もう二度と彼と彼女の結婚式に赴くことはない。取り返しのつかないミスを犯してしまった・・・そう考えるのも失礼である。誠心誠意を心がけて、遠方ながらも付き合いを続けよう。夏になれば暑中見舞いを送るなり、そういった文化が日本にはあるのだ。それは義務だとか権利だとか硬い言葉で締めるのももったいない、きっと楽しいものである。

せっかく繋いだ和である。それを維持するために働きかけることは実に人間らしい営みだろう。

カワタケと新郎新婦と運動公園前通りの朴然へ行き、二次はカラオケ。新郎は昨夜の二次会と今朝の送迎で寝る暇もなかったらしく、途中で船を漕ぎ始めた。気を張り詰めていたのだろう。親戚回りも終えて、あとは新婚旅行の日程を残すのみである。好きな温泉にでも浸かりながらたっぷりと休んで欲しい。

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