砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

Blandfordのスタミナとは

Blandfordを語るとなると、とても簡単には済ませやしない。Danzigと同じように盛大に語らねばならないだろう。でもそんなことをする気分でもない。なので思いつく分だけ書いておく。

・Umidwar=Udaipur

Udaipurはヒンドスタンの母母で、ヒンドスタンと言えば母父がSolarioである。BlandfordとSolarioは非情に濃ゆい関係にあることをまず学ぶ必要があるだろう。これはモーリスの血統を語る上で必要な要素だ。逆説的にっ!

Umidwarは北米競馬界の誇る大血統Uviraの父で、モーリスの母がクロスするNorsemanの父。UmidwarはG1級の血統表を掘ったら大抵の場合で登場するし、多くの場合でクロスされている。Mill Reefがスタミナ血統化したのはUmidwarの影響が強く、暇な人はMill ReefShirley Heights-High Hawk&Darshaan&シェイディハイツの血統表を掘ってみて欲しい。ちなみにMill ReefはSolarioも嫌いじゃない。

結構どうでもいい情報が一つ。Umidwar=UdaipurとサンデーサイレンスはPolymelusの母母として有名なQuiverを牝祖に持つ。

プリメロ=Avena=Harina(=Centeno=Choclo=Harinero=Trigo=アスフオード)

多分カッコ内の血統を見ることはないと思う。プリメロトサミドリなんかの父で戦前の日本競馬を大きく支えた名血統。Avenaはパーソロンの父Milesianの母母であるくらいだが、血統マニアならYoung Emperorなんて血統を何処かに見出すこともあるかもしれない。俺は見た気がする程度だ!(Dansiliの4代母父)

Harinaは名繁殖Neocracyの母となり、NeocracyはTulyarセントクレスピンの母となった。セントクレスピンスペシャルウィークでしか見ることがないかもしれないが、Tulyarはれっきとした世界的名血統なのでめちゃくちゃ大事。日本史で言う大塩平八郎の乱くらい大事。

ちなみにTulyarはヒンドスタンとニアリーの関係にある。でもこのニアリークロスが発生したところ見たことない。

この二つが直仔で重要な血統かと思う。次は孫の代で重要なのを。

・Donatello

言わずと知れたPretty Polly血脈。上2頭の血統表を見ての通り、BlandfordはGallinuleクロスを入れることが寛容である。Gallinuleと言えば・・・そうHonora(Prince JohnやCosmic Bomb、Eight Thirtyの父Pilateを輩出した地味な名牝系)だ。そしてもう一つ・・・そうAlope(ディープインパクトRound Tableを輩出した名門牝系。Son-in-Lawの父系を紡いだFoxlawの母でもある。)だ。そしてやっぱり・・・そうPretty Pollyだね。他にWildflowerとかあるけど割愛しなきゃならない。

上の二つなんて聞いたこともないような血統でGallinuleをクロスしているが、このDonatelloは超激名牝祖のPretty Pollyを使ってクロスしているのだ。この時点で格の違いを感じさせる。

よく知られているのはHyperionとのニックスで、近い世代で組み合わせられたのはAlycidon=Acropolisなどの直仔、BMSとしてはAureoleハイハット、世代を経て出会ったパターンにはBurghclereがある。(3代父Donatelloで2代母HighlightがHyperion3✕2のクロス)

もっと複雑な奴だとKrisなんかがあるけれども、そういうのはドイツ牝系・・・エイシンフラッシュの血統を掘ってみると山ほどあるかも。ドイツの奴らはBlandfordをどう組み合わせるかに命を賭けてる。

Wild Risk

孫は孫でも母の父Blandfordのパターン。実は直仔の二つはイギリス生産馬であるが孫の代に紹介するこれらの血統はフランスの生産馬である。Blandfordは英愛の世界を飛び出して様々な色に染まった血統でもあり、Mahmoudに米血統へ染まった傾向があるのもそのせいだろう。

当然Wild Riskもフランスに染まったBlandfordであり、父は名種牡馬Rialto。これはSicambreの母父としても有名だ。その父Rabelaisはフランス競馬の全盛期を支えた名種牡馬であり、St. Simonの父系をRibotを通じて最も繁栄させた後継種牡馬でもある。

Blandfordの名血統としては珍しくGallinuleのクロスを持たないが、その代わりにフランス血統が仕事をしているのだと考えられる。RabelaisというのはGallinuleとの深い繋がりを持たずに繁栄した血統であり、それはKsarも同じだ。だがBlandfordと向き合う時は必ず訪れる。

血統としては次世代に熟成した感があり、Worden≒Le Fabuleuxが有名所で次点にヴィミーというところかな。ヴィミーはSadler's Wellsとのニックスで有名なHigh Topの母父で、またBustedの母父でもある。母系に入って美味しいタイプだった様子。

ただWild RiskというのはSt. Simon系をもう一度繁栄させた立役者でもある。ここに深みがあるだろうし、何か学べることもありそうな話である。

思いつくのはこんなものかな。調べてみると使っている血統が似通っていたりして面白い。Cylleneを使っているパターンは多いし、将来的にPretty Pollyを取り込むことがほとんど。ただHyperionと密接に繋がるのはDonatelloくらいで、他はSolarioとの接触が先。

注目したいのはPharos=Fairwayを相手にしてChaucerとSwinfordの兄弟を接触させるパターン。Hyperionとの接触が遅いのはこのクロスを事前に突っ込んでいることが原因で、Canterburry Pilgrim母ちゃんのクロスはLavendula的な要素でもある。

ただしプリメロだけは例外。これは本当にChaucerとの接触なしに繁栄した血統だ。この観点からメジロマックイーンを掘り下げるとドラマがある。兄(プリメロ)と妹(Avena)の歩んだ道がまるで違うんだ。

兄はCanterburry Pilgrimの手助けなしに一人で生きていくんだけれど、ヒンドスタンという同胞を得て一気に表舞台に登ることに成功する。けれどリマンドという化け物Pretty Pollyハイインローに全てが押しつぶされるんだ。そしてヒンドスタンもリマンドに寝返ってしまう。

対して妹はすぐにMy Babuという強すぎる相方を手に入れる。波乱万丈なんてドコにもない順当過ぎる名血統の生活。バランスよく配されて行くけれど必ず最後にBlandfordが表現される強さがある。スノツブの助けがあるのは大きいわ。

メジロマックイーンの代で息も絶え絶えのメジロオーロラに眠る兄を妹がすくい上げる。けれどリマンドにある英血統にMy Babuが結びつき、メジロテイターン陣営も一筋縄では行かない事態に。

最後に勝ったのは影に日向にと尽くしあげてきたスノツブ、引いてはシエリルだろう。メジロテイターンにおける縁の下の力持ちが最後の最後にイギリスもフランスもアメリカも全て吸い上げてしまった。

メジロマックイーンって使い勝手が良すぎて持ち味を出しきれなかったイメージなんだよね。好走クラスはコンスタントに出すんだけれど勝ち切れる配合は難しそう。

Foundの血統について書いた時にIntikhabを「米血統のお得なパック」と表現したのだが、それに対してメジロマックイーンは「英仏米の名血パック」と表現できる。しかも志向に乱れがなく、中長距離の舞台だけを見据えた配合なんだ。

この類の血統はフィリーサイアーに出がちであるし、また母系に入った方が面白い。父のスピードに対して鋭敏に反応するから牝馬が走るし、その表現されにくいスピードも残りの4分の3で引き出す仕組みを作れば牡馬でも走る。

オルフェーヴルゴールドシップの偉大さを語るにはメジロマックイーン牝馬の偉大さを語らなければならない。メジロマックイーンの偉大さを語るにはシエリルの偉大さを語らなければならない。シエリルの偉大さを語るにはRabelaisの偉大さを語らなければならない。

Rabelaisの偉大さを語れば、その先には必ずRibotがあるし、そのときにまたTraceryを語らなければならず、そしてまたゴールデンサッシュへ繋がり、ステイゴールドをも語り、最終的にオールフェーヴルやゴールドシップへ戻ってくる。

何を調べても無駄にはならない。なんだったらディープインパクトへ話を繋げることだって出来る。だけどそれが予想に繋がることはもはや奇跡の類である。だからレインボーライン菊花賞好走には心が震えたし、レース前には吐きそうにもなった。

三連単一本500円なんて予想の仕方をして随分立つ。負けっぱなしだ。けれど勝ちから学ぶことは難しく、負けから学ぶことは容易い。俺は負けることによって血統という湖から何かを汲み取っているはずだ。

しかし悲しいことに人間は愚かだ。少なくとも俺は愚かだ。予想の時には穴と本命の葛藤に囚われ、また馬へのロマンを捨てきれず、軽視し続けた馬の素質を認められない。

菊花賞のとき、カフジプリンスに印を打つつもりはなかったんだ。ギリギリで翻して☆印を打った。人気した岩田の内枠・・・その魅力に囚われてしまったんだ。何かしでかすかもしれないと。

もしディーマジェスティのRoberto≒Fairy Bridgeのデータを揃えていたら・・・北米にはそういった例があるだろうし、国内を走った例もあるかもしれない。ないわけがない。そうだ、スーパームーンがある。調べてみればブルーコンコルドなんかもあるし、こういった馬との走りを見比べればオルフェトップガンに囚われることはなかった。

そうだよなぁ。スーパームーンと沈み方似てるなぁ。

[fin]