砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

先生の大喜利に際して その2

初心に帰ってみよう。よくよく血統表を眺めて、どんなG1を勝つ馬が出るのかを想像し、そこから種牡馬を当てはめるのだ。無責任であるからこそ余裕を持たねばならない。無責任者のアドバンテージとはそれだけなのだ。 そうして落ち着き、血迷った挙句、タップダンスシチーを作れやしないかと思った。American Pharoahを血統における手本として、俺はタップダンスシチーを作ろうと考えた。けれどPulpitが洒落にならないレベルで邪魔である。 Seattle Slewについて 個人的な感覚であるが、Seattle Slewほど憎らしい血統もない。現代日本の芝には今ひとつ順応しておらず、けれどエルコンドルパサーシンボリクリスエスを通してしっかりと仕事をしている姿も見受けられる。その仕事は大抵・・・ズバッと切れるか全く切れないかの極端なものである。 ズバッとするときはアホみたいに切れる。サトノギャラントやマジェスティハーツが新潟外回りで32秒台の末脚を炸裂させるイメージだ。そしてその末脚は少しの負荷で手からこぼれ落ちる繊細なもの。 切れないときは全く切れない。切れ味不在のステイヤー気味中長距離馬になっているパターンであり、エルコンドルパサー×サンデーサイレンスにそういったタイプが多い。しかも悪い馬場にも対応するパワーがあり、それは宝塚記念マリアライトを見ての通りだ。 そういった中で超法規的立場にあるのがエピファネイアである。ズバッと切れる。それはもうロゴタイプのまくりに呼応するほどにズバッと動く。しかし前のめりな競馬で強い負荷をかけても切れは衰えず、ジャパンカップ菊花賞では強い負荷がかかった展開から普段の中団競馬と同じほどに弾けた。いいとこ取りである。 エピファネイアより この馬の配合において、最も褒められないのは4分の4Hail to Reasonの形をとること。そして最も褒められるべきことがHail to Reasonの継続を行うのと同時にNorthern Dancerを4分の2アウトとしていること。表裏一体である。 リオンディーズの場合はHtRとNDの役回りが反転するわけだが、キンカメはNDを3本引くためにバランスが悪い。それでもG1を勝てたのはSadler's Wellsが超弩級の名血統であるからで、その血を継いだ母ちゃんがジャパニーズスーパースターであるからだ。つまり、シーザリオの度量で大抵の問題が解決されるということ。 Seattle SlewMill ReefRivermanも許容することがSadler's Wellsの偉大さを表している。つまり良血のサドラー繁殖を上手に組み込むだけでSeattle Slewの処理が完遂されると言っても良い。しかしそれを日本競馬に望むことは難しい。トーセンラースピルバーグアイルハヴアナザーメイショウサムソンローエングリンエイシンアポロンモンテロッソってのがざっと挙げられるところか。しかしどれも望み薄だ。 Sadler's Wellsを求めたらRivermanMill Reefがくっついてくる。それはSeattle Slewで間に合っているというのに。どうして素のままのサドラーを抱えた種牡馬が日本にはいないのだ。冗談抜きでアウォーディーしか候補がないよ。4年後くらいの話になっちゃう。 ・ヴィットリオドーロについて J-BISのデータからサドラー持ち種牡馬をさらったら面白い血統があった。ヴィットリオドーロである。日本唯一のEl Prado種牡馬であり、また父Medaglia d'OroはKitten's Joyと並ぶその代表産駒&後継種牡馬として名高い。優秀な父系だろう。 母はプリエミネンス。明け7歳のサンタマリアHまで50戦を走り重賞を8勝した砂の名牝である。北米での繁殖生活で最後に身籠ったのが本馬ヴィットリオドーロとなる。 配合を組んでみると悪いものではないがドハマリする感じでもない。El PradoCaerleon≒StateやStraight Dealクロスなどが目につくくらいだろう。エピファネイアの配合から学ぶのであればMr. ProspectorNorthern Dancerのどちらかだけを継続すべきであるのに、その最低条件すら満たさない。 ヴィットリオドーロがリーディングサイアー、あるいはG1をいくつも勝ったルーキーサイアーであれば問題などない。しかしヴィットリオドーロは1000万下を勝ち、故障で引退した3年目の種牡馬である。目指すはサムライハートオンファイアなのだ。それで4分の4ND&4分の3MrPってのは。 例えばこれが「Mr. Prospector×Northern Dancer×Nasrullah×Princequillo×Tom Fool」を共通としたクロス群として整理がつくなら褒めようがある。こうしてただ雑多に主流血統が緊張されてしまうのは下策というべきだ。本当にヴィットリアドーロが名サイアーであることばかりを願う配合。 せっかくのサドラー種牡馬でいい感じなんだけれどねぇ・・・。Northern DancerNasrullahくらいに無視出来るのであれば好配合かもしれないけれど。 ワールドエースについて ワールドエースなら4分の4NDだけで済む。Mr. ProspectorBold Ruler、In Realityに対しては無関心な種牡馬であるから問題らしい問題が起こらない。NDクロスが当然となる世界を考えるのであれば有意義な配合かもしれない。 この配合は母ちゃんの素質にすべて預ける形になる。どちらかと言うと強い緊張を持った名牝に対する配合であって、名繁殖に対する配合ではない。それこそシーザリオに対する配合で、リオンディーズはHtRアウトのNDイン、エピファネイアはNDアウトのHtRアウト、って寸法。 なのでこの配合における4分の4NDは気にする必要がない。大切なのは、何を以ってそれを為したかだ。 リオンディーズNijinskyクロス&Nureyev≒Sadler's Wells&トライマイベストマルゼンスキーというアホなことをしていたし、エピファネイアはRoberto×Sadler's Wells×Seattle Slew×サンデーというエルコン的な組み合わせだった。この兄弟の配合はシーザリオへの理解度を高めようとする知性と愛情が伺える。 それに対してLyphard×Be My Guest×El Glan Senor×Nijinsky×Northfielrdsというのは知性と愛情に欠ける。本当に課題の繁殖が好きなのか、そう問われたら答えられない。それではいけない。 ・・・なんか「箱入り娘に男を紹介する高級官僚の父」というキャラクターが理解できたかも。そうだよなぁ、良い相手見つけてやりたいし、その相手に信用している部下を採用するのもよくわかる。お手馬同士の配合って夢だものね。 今回の様に配合が先に来てしまうと愛情に薄いところが出てしまう。愛を以って配合をすべきだ・・・と言うことはないのだけれども、愛の無い配合は駄目な高級官僚の目線であり、純愛ラブストーリーの敵役まっしぐらである。娘を愛さねばならない。 次回、「この愛のために」 [fin]