砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

金鯱賞はヤマカツエース Ribotと中京競馬場

これで変則の2連覇となった。

中京がとても不思議なコースであることは競馬ファンの多くが感じられていることだろうが、特に困惑の色が濃いのは血統マニアではないかと思う。直線の長いコースであるのに東京、阪神外、京都外の適性とあまり似ないのだ。

先生のおっしゃる「Nasrullah×Princequillo」の組み合わせが猛威を振るうのは条件クラスの一部であって、今回のように緩みを含んだロングスパート戦であっても差し馬にその類の血統は見られない。前目の馬にSecretariatSeattle Slewが見られる程度である。

そんなことを考えていると実証の無理な仮説を思いついた。血統とはあまり関係がないのでここで殴り書きに記す。

中京はスパイラルカーブだったでしょ。あれはコーナーでスピードを乗せやすくするためのもので、今回の様な外差しの決着が多く見られる。それは馬場のバイアスに関係がないくらいの話。

けれど靭やかな馬がスピードを乗せて差し切ること、これを重賞の舞台で見られないわけだよね。高松宮記念においてロードカナロアビッグアーサーといった馬がそれに近いことをやっているのだろうが、どうしても中距離でその類の馬が飛んでこない。マーティンボロとかサトノノブレスとか今回のヤマカツエースとかそんなのばっかり。在りし日のクソッタレ馬場中京記念においてフラガラッハが靭やかに差したくらいであるし、今の中京記念ではグラスワンダー産駒のスマートオリオンが勝ったりしている。昨年もガリバルディ

つまり、コーナーで負担をかけた馬の尽くが潰れている事実があるんだ。福永騎手がやたらと中京を得意とするのもその証拠となりうる。彼はいっつも4角で済ました顔をしてのんびり構えている騎手だから!直線ズンドバ主義、福永祐一騎手でーす。

かといって、内でしんなりと構えていたらどうしようもなくなる。外から殺到してくるわけだから進路を外に求めることは出来ない。かといって内に進路を求めるとスパイラルカーブの恩恵を失うし、また中京コースの4角は複合気味に出口が狭くなっていることもある。800m弱の長い下り区間でどうしたってスピードは乗っているから登坂直前に必要のない失速をすることは避けたいのだ。

そして福永騎手の特徴がもう一つ。直線へ向く前に壁を退けるんだよね。退ける努力をする。アッタマおかしいんじゃねぇの!?ってくらいに壁を作りっぱなしにするのが四位のおっさんで、武豊ヒットザターゲット宝塚記念でそんなことをしていた。ヒッタゲは大抵の騎手がそういう乗り方するよね。戸崎も結構そのまんまだけれど、彼は中山ならまくったりもするし、VMストレイトガールで見られた様に、馬群を割る計算があるからこそ4角を過ぎてものんびりしているのだ。マンボ幸四郎が兄貴(スマートレイアー騎乗)のために追い出しを遅らせてから馬群を割ってきたのにはビビったよねぇ。関西騎手が関東圏でやる騎乗じゃない。

福永騎手は・・・あまり深い意味の感じられない壁の退き方をするんだ。他の騎手だったら「ほら、前の馬を抜かしてやれ!」という様なけしかけ方をするのだけれども、福永騎手ってそういうことしないでしょ。まくるでもなし、ただコースロスだけして緩々と4角を回ってくる。直線では前に馬がいないけれど、ロスを挽回するほどのメリットは見受けられない。けれど、中京ではそれがハマる。

少ないメリットが目一杯増幅されている。例えばストライドロスの回避だとか、進路が塞がるリスクの回避だとか、相対的に脚を余しながら外に出せるとか、外へ出しながらコーナーを回るからスパイラルカーブの恩恵を最大限に受け取れることとか、一杯あるわな。

この差し方ってのは・・・内回りの阪神マイル、その牝馬戦G1。旧桜花賞で鍛え上げられたものなんだろう。プリモディーネとかラインクラフトとか、こんな差し方で勝っているだろう。みーんな前のめりにロスまみれの競馬で突っ込んでいくから、緩々4角やや外出しのズンドバ差し、というロスを感じられながらも前向きな差しが届いた。これが中京でハマる。

だから同じ牝馬の男であり、秋華賞宝塚記念をヌルズバッとスイープトウショウで差し切った池添謙一なる男が、金鯱賞の変則2連覇をやってのけたことも無関係ではない。オルフェーヴルのベストパフォーマンスを小回りの有馬記念で見せたことも無関係ではない、と。

もう一つ違う視点から考えるならば、スパイラルカーブの恩恵と不利かな。

こう、傾斜がついてコーナーを回りながらもスピードが乗るって話でしょ?物理的に考えて、コーナーでのボトムスピードとトップスピードの両方が上がる。侵入速度はともかく、脱出速度はどうやったって上がる。

けれどそれは空力とボディバランスを整えた車の話だ。特に馬は上の方に重いものがある最悪の条件を抱えた四輪駆動であり、枝の様に脆い脚でギャロップという特別な走法を駆使する生物なのだ。更に、常にタイヤが路面に設置している車に比べて、サラブレッドはまるで逆の話・・・飛ぶことを良い様に表現する生き物。条件が違いすぎる。

コーナー中の馬がまともに走っているのは胴体を内へずらして荷重を移しているからだ。その上で脚は外から内へ巻き込むようなエネルギーを発生させる。この二つのエネルギーが遠心力と釣り合って、正しくコーナーリングが行われるわけだな。

スパイラルカーブにおいては遠心力のベクトルと路面から得るベクトルが正対に近づく分だけエネルギーのロスが少ない。ただし重力に対して馬体の傾きを増やす必要がある。これは、車ほどに全高が低く、車高が低く、全幅が長く、つまり安定した物体であればロスらしいロスはない。けれどバイクの様な全幅で全高の半分近くも車高が占める物体、更にその上へ車重の1割を占める物体が装着されていれば、もうロスまみれだよね。

そりゃ車と違って荷重の移動は思いのままだし、上に乗っている人間もその動きを積極的に助けるさ。その上で重心が高いのだから軽快に動くわな。つまりそういうことだろうね。この軽快な動きを中京競馬場は求めるのよ。一方向のベクトルで加速態勢を取る靭やかな馬にはそぐわないのだ。

だから車の様に重心が低い、脚が短い馬が活躍しやすいってことは多分ないし、むしろ長い脚を鋭くも力強く回転させるタイプの馬に活躍が偏っている。ディープ産駒で言えば、キズナよりアンビシャスというイメージかな。

逃げ先行であれば傾斜の利もクソもないから、ロードヴァンドールの様なバランスが良い様子。脚の短さも胴の詰まり具合もそこそこ。しかし前脚の力強さが目立つフロント駆動であり、その上でリアは靭やかにしなるシステム。ディースイーズRibot!といった具合。

1着から4着までRibotは7本。Tom Foolは5着6着までしか届いていない。最も前にいたロードヴァンドールがRibotを1本しか持たないのが面白いよねぇ。やはりクロスを持って重賞に挑んでくる馬は、そのクロスした血統に相反する要素も多く備えているわけよ。タップダンスシチーリアファルRibotは1本しか持っていない。

リアファルKingmamboを介したRibotクロス。

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