砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

憧れの品物

俺はそろばん塾に通っていた。随分と目をかけてもらって、人一倍叱られたし、人一番教えてもらった。級が上がる度に、段位を取る度に新しいことを覚えていくことが楽しかったのを覚えている。小学生へ立法を教えることはとても難しかったろうに、理屈までをもきちんと教えてくれた先生だった。

答え合わせは大抵自分でするもので、その時に赤いボールペンでマルをつける。けれど大会前や試験前日は先生自身が答え合わせをして、「繰り上がりでミスったね」だとかの細かな失敗をきちんと指摘してくださった。俺は先生のつける太くて力強い色鉛筆のマルが好きで、なんとなくその答案だけは捨てづらく思ったものだ。

その色鉛筆は鉛筆削りで芯を出す様なものではなく、芯の先辺りに糸があってそれを引くことで芯を出す仕組みだ。それを頼りにTSUTAYAの店内を探し回り、見つけ、購入した。気持ち新たにし、競馬への執念を燃やすこととした。

だが非情に使い勝手が悪い。早くも後悔してしまった。「なんなんだ。先生、これはなんなんだ。」と思いを馳せる。あれから時代は変わって競馬の血統表もパソコンから簡単に手に入るし、またこのよく分からない色鉛筆の情報も手に入る。調べたのだ。

この鉛筆は「紙巻き色鉛筆」であるらしく、鉛筆自体に「WRITES ON EVERYTHING」とある通りに色々なものへ書き込めるもの。ノートだけを相手とするにはとても意味のない選択であったらしい。

そうか、と頷いた。俺は鉛筆立てにそれを立てかけ、ボールペンを取った。

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