砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

函館2歳Sの出走予定馬を見るだけ その2

ナンヨープランタン

 ルーラーシップという種牡馬の長所はエアグルーヴトニービン産駒でありながらも完全な非Blue Larkspurかつ非Balladierであること。4分の1がこの態勢を取り、またキングカメハメハがBlue Larkspur絡みの名血であるMr. ProspectorBuckpasser、そしてNijinskyを持っていることが大きな材料。またキングカメハメハ自身はサンデーサイレンスとの配合で立身した種牡馬であるから、これとの組み合わせにも妙味は健在。

 であるからスペシャルウィークなんかのサンデーへBlue Larkspurを注入した血統とは相性が良い・・・はず。少なくともHalo・Buckpasser・In Reality・Bold ReasonDamascus・Qui Silentなどを抱えるテキサスルビーの相手としては上々だろう。

パッセ

 父パイロは日本では珍しい短距離ダート専門の種牡馬。自身は北米ダートの千四~千八で実績をあげた馬だが能力自体は一流半に留まる。だがNorthern Dancerを6代目(産駒の代では7代目)に引くのみであり、また非サンデーサイレンスであるため血統としての価値は低くあらず、そして短距離ダートというニッチな条件を得意としつつ仕上がりは良好。長期でも短期でも損のないコスパの良い種牡馬だろう。

 本馬はパイロに不足しがちな欧州のスタミナを引くホワイトマズルを母父に持ち、またパイロとホワイトパズルの両方に親和性の高いヘクタープロテクターを母母父に持つ。Ela-Mana-Mouが「8分の1Alycidon≒ハイハット」であるのが秀逸で、パイロに対するDonatello絡みのスタミナ源としては適当。母が「4分の3Tom Fool、4分の1Fair of the Furze」を取るのもパイロへは良好な姿勢。

 ミルファームらしい安価な種牡馬への良質な配合形である。前受けからしぶとい穴馬として注目したい。

ベイビーキャズ

 Mr. Prospector2×5かつDamascus4×5のパワースプリンター。代々にFlembetteパワーを組み込んだ配合なので今の時期はとにかく速い馬だろう。異系らしい異系を持たない近親配合馬なので重賞で勝負になるタイプではない。

ホワイトサクセス

 Auroraを3代母に持ち、そこからA.P. Indy、Unbrideled's Songの累代であるから名血も名血。本馬はSeattle SlewSecretariatNorthern DancerNashua≒Nantallahなどを共通とする相似配合馬。相似配合にケチをつけるならRaise a NativeBuckpasserを「4分の3と4分の1」の関わりとしてしまったことや、Le FabuleuxやIn Reality、あとYour Hostessを相似の対象としなかったことかね。それと嵐猫へFirst Roseクロスを入れられていたら。褒めるならSeattle Slew以外からHail to Reasonを引いていない点か。

 Son-in-Lawに絡んだ名血を持っていないのはアロゲートと同じだが、Le Fabuleuxをスタミナ化するためのIn Realityクロスを持たないのは致命的。またアルビアーノと比較した場合はAffirmedという米血を中庸へ傾けることに特化した変態を引いていないことが気にかかる。

モルトアレグロ

 2代母Visible Goldが好配合。短距離の父を持つ場合におけるHyperionとSon-in-Lawの使い方に優れており、特たる問題を抱えない。強いて言えば父母間に異系の名血をインブリードを組み入れたかったか。緊張の強いSpeightstownなのでアウトブリードに徹したのは正解であるが。小技がほしい。

 もっとも、その要求はG1クラスとしてのものであるからこの段階で気にすることもない。函館2歳Sくらいのレベルなら勝ち切る地力を抽出できる配合だ。

ヤマノファイト

 Northern Dancerの処理はゴールドアリュール直系として非の打ち所を持たない。母母父Danzigの配合としては一流どころであり、ゴールドアリュールの後継種牡馬への王道パターンかとも思う。4分の3HtRで4分の1をDamascusとしていれば面白かったが、それは目を瞑るべきか。

 芝の配合とは言えないが砂と断ずる材料も足りない。この段階で函館千二を選んだのは好采配かと思う。鞍上に物足りなさを覚えはするが逃げ先行ならデメリットは大きくなくて済む。

リンガラポップス

 4分の3Lyphardが特徴的で面白いがSir GaylordMill ReefSecretariatで柔らかさの強い繁殖。Princequilloの名血が作用すると英愛の古典的なスタミナ血統が必要になりがちで、それはLyphardにとっても同様。8分の1His Majestyでは説得力に欠ける。負荷のかかる馬場を踏破することに優れているが一味足りない配合。

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