砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

千四馬を支える濃厚な持続力

見出すまでである(キリッ)

とは思いもしたが無茶振りじゃないかね、自分自身へ。何が悲しくてそんなことをしなければならぬのだ。牝馬の千四馬は珍しいわけじゃなかろうが、それを発揮した例はとてつもなく少ない。発揮するべき舞台が少ない・・・。つまり血統論の拠り所である前例がない。

また千二寄りの千四馬は多くあっても、千八寄りの千四馬というのは希少である。前者であればダービー馬の全妹全姉に見られる。

ダービー馬の全妹全姉においては斬れへ転換すべきスピードがモロに出てしまった結果である。

牡馬は母の体型を以って父のスピードを疾走させるわけであり、つまり短距離(気味)の体型でキングカメハメハディープインパクトのスピードを表現することとなる。すなわち全身運動的なストライドを3歳春における若かりし身体にて行うわけだ。

だが牝馬においては父(父の母)の体型を以って母のスピードを駆ることとなる。柔らかさを支えた馬体を基礎に強靭なスピードで突っ込んでいく。この場合は千八への適応が先に来て、短距離馬としての素質は本格化に伴って表面化する。

もうちっと思考すれば、柔らかい身体を躍動させるには気性の助けも必要であろう。3歳春における過酷な東京2400mをぶっこ抜こうとするならば、特にだ。牝馬という相乗効果もあって突進力へ転化されているはず。

さて、ここで注目したいのはクイーンSにおける老齢馬の好調である。過去に多くあった3歳ウィナーによって数字はそれへ傾くが、それでも最も馬券妙味があって勝率が高いのは6歳馬。だが3-0-1-23であるからベタ買いしてどうこうという話ではない。かといって15年と16年で6歳馬が連勝しているという事実は否定できない

つまり晩成的に持続力を発揮しているということである。そしてそれが千四的なものである、と。5歳時にあってもバランスが取りきれず、ややズブさが発揮された6歳となってからまとまりが取れる様な素質であると考えられる。あくまでもニッチな千八における話だが。

ズブさが発揮される、というのは英愛の強烈なスタミナが発現されるということである。そんで、それは、近くにあっては調和が取れず、強調されては千四に出ず、というものであるから大げさなものではない。実に細やかな英愛が千四馬を千八へ向かわせる。

調和という点において、またそれは、Hyperionが主体であってはならぬのである。これはガチの短距離馬を輩出することもできる血統だ。しかもNorthern Dancerに脈絡するために半端な表現は不可能である。オーストラリアや香港競馬によく見られる名スプリンター、英愛にある変態的なステイヤー。そして日本、サンデーサイレンス×Northern Dancerのニックスを軸とした配合により、中距離~中長距離馬の分野では世界最高峰にある。(ただし米血統の靭やかさも伝わるので平坦ベター)

なので軸とすべきはあくまでも米血統。米血統って不思議なもんで、スピードが本質であるのに距離の融通が効くのだ。この米血統へ英愛の持続力を細やかに脈絡させる必要がある。

ここで想起して頂きたいのはクイーンSで猛威を奮ったとある血統である。

「勝ち馬は2頭いた」とまで高い評価をモンジュー相手に受け、種牡馬としては短命であったがキングカメハメハにも劣らぬ素晴らしい成果を残した。マル外であったために国内のクラシックへ出走は適わなかったがジャパンカップを3歳時に、それもエアグルーヴスペシャルウィークを相手に完勝した。またこの競走実績は悲劇の逃げ馬の評価を更に高める・・・。

みんな大好き、俺が大好き、エルコンドルパサーである。Special=Lisabell4×4*3、Nashua≒Nantallah4*6×6*5の変態配合、素敵配合、名配合馬。たまにSeattle Slewの存在を忘れそうになる。

驚異的なピッチ走法を支えたNashua≒Nantallahは後世にも影響を残した。産駒においては、ダート王者に君臨したヴァーミリアン、スタミナ的なピッチ走法で12歳まで中央競馬に所属して馬券に絡み続けたトウカイトリック(10歳時にステイヤーズS勝利、11歳時にステイヤーズS3着)が顕著。孫の代においては道悪宝塚記念にて最強馬2頭を圧倒したマリアライト、クイーンS2連覇を含む重賞4勝を挙げた名牝アイムユアーズなど。

このニアリークロスの根拠はNasrullah、Flambette、Sir Gallahadの共通が大きなところである。だがもう一つ小さな脈絡がある。それがSt. James≒Wrackである。この2頭は2台母Chelandryを同じくし、Hamptonを父系に頂くことも同じ。ChelandryはIlluminataの娘であるから、俺が大好きなLadasと同じ形をとるのである。

それと同時にこの2頭は異なる方向を向いたニアリーLadasである。

St. JamesはDark Ronald直系であり母父にはWillonyxを持つ。これを理由の一つとしてNashuaの持つGraustark=His Majestyへのニックスを説明できると考えている。St. James自身がSon-in-Lawと相似を取り、またWillonyxは近親にKampalaを持つ。Nashuaの母系にはSardanapaleがあり、これとLadas、Sans Souci(母父St.Self)の相乗効果がRibotのApelleへ流れ込む。

Wrackは俗に言う「ハイインロー」の方向ではない。二つの勢力圏のやや難しいところにあるわけだが、その状況はBurghclereに似る。Ayrhire-Robert le Diableという父系は決してポピュラーではないが英愛のスタミナにおいて、なかなかの影響力を持っている枝葉である。Friar's Daughter的な方向でもあるし、あるいはPretty Polly的な方向かもしれない・・・そんなどっち付かずをまとめ上げてあげることで現代日本競馬の実権を握ったのがFeola=Foxlawなのだよね。

クイーンSの基本はこの2血統であるから、持続力というものもやはりSon-in-Lawでなければならない。

マコトブリジャール

 母「8分の1Son-in-Law4×2、8分の1Graustark」

 父「Mr. Prospector2×3」「非Son-in-Law」

 自身「Nashua5*6×5」

メイショウスザンナ

 父「32分の1Son-in-Law4×4」+「32分の1Son-in-Law4×5」+「32分の1Tudor Minstrel」

 母「8分の1Son-in-Law6×5」

 自身「La France≒Omaha≒La Rambla8×8*8*7」

これは、ここまで書いてきた人間が申すことでもなかろうが、案外な結果であった。こんなに要所要所にしかSon-in-Lawを引かずに走っていたとは、案外である。このくらいでなければ6歳時に穴馬が激走することもないのだろうが、それにしても希薄でさり気ない。

マコトブリジャールミスプロはモロ出しだけれどもね。

またこれらのSon-in-Lawの何が素晴らしいかというと、GraustarkTudor Minstrelの関係。中距離を走り続けたマコトブリジャールGraustarkで、短距離に一度は進んだメイショウスザンナTudor Minstrelなのだ。この二面性を以ってなお、二頭は同じ重賞を制している。

それ故に、ラインハートには残念な気持ちが募る。Tudor MinstrelとSwapsとRound Tableを介したSon-in-LawがMountain Flowerへ流れ込んだところで、如何なる意味があろうか。この半端者め。

というわけで、今回は6歳馬を買うことはできなさそうである。

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