砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

スプリンターズSの出走馬 その2

ラインミーティア

 メイショウボーラーは基本的に嵐猫らしい短足を伝えるが、あまりSecretariatの柔らかさを伝えない。ブワッと広がるストライドではなく、バネの様に伸縮の強いストライドで走る。これはThachへSpecialを絡めた産駒が多いのも一つの要因だが、ボーラー自身にThachを特定の方向へシフトさせる仕組みがあるからだ。

 それはアルゼンチンとフランスの北米繋がりが産むもので、それは本馬ラインミーティアの母系にも同様のものが見られる。そしてSheer Audacityによる「8分の1Alycidon4×3」。これが作用するかがこの配合における分岐点だ。

 この類の8分の1が表現されるには、Alycidonへ対するニックス血統が4分の4で配される必要がある。それはある程度の主流血統を伴っているべきであり、例えば現代日本に繁栄している「4分の3ND、4分の1サンデーサイレンス」では4分の4AlmahmoudがHyperion表現の土台となっている。これはLady AngelaNearcticを支える名繁殖だ。

 この場合の4分の4は各1本ずつ引くのが理想であり、この場合はNative Dancerが担当することとなる。これもやはりNearcticの支えとしてNorthern Dancerを構成する血統である。

 こうしたNative Dancerを主軸とした考えは、Northern Dancer×Blue Larkspurの根幹へ迫る題である。キングカメハメハという競争馬の解明にも繋がる面白いものであるから煮詰めていきたい・・・というのは私事。おそらくこれは成立している配合であり、それならG1勝ちの可能性も見込める。

ワンスインナムーン

 アドマイヤムーンは異質のMr. Prospectorなので、ベタベタにニックスで固めたヘクタープロテクターの様なMr. Prospectorに対して相似をまるで取らない。それを利して「ND+Tom Fool繋がりのダンシングブレーヴ君にBlue Larkspurのアウトを任せたいましたー」というのが本馬の配合。実に適った理屈である。

 ヘクタープロテクターWoodmanWar Admiralを処理しきった配合であるが、緊張と緩和に過ぎた側面もあり、つまりBlue Larkspurの本数が常識外に多い。これで種牡馬入りして一定の結果を残したことにNorthern Dancerの素晴らしさを見る。

 NDを異系としたヘクプロはNDのインブリードによって更なる異系を得ることが出来る。この黄金パターンを得た本馬の配合はヘクプロにおいて高度なものだと言えよう。アドマイヤムーン×ヘクタープロテクター×ダンシングブレーヴは想像以上の好配合。

 だがこの類の配合は重賞を制してようやく評価へ繋がる。配合から青田買いする馬ではない。

ダイアナヘイロー

 16分の1サンデーというだけあって筋肉量が並外れている。短距離のサトノダイヤモンドという風な本格化具合であり、キングヘイローはこうした表現も出来る血統だ。

 サンデーの遠のき具合から正しく次世代のスプリンターという配合であり、この段階になると非サンデーよりスプリントの強化が著しい。このHaloの使い方はジェンティルドンナなどに見られる「Lyphardクロス+Danzig(Sadler's Wells、Nureyevなども可)」と同じものであり、合間にRobertoを挟んでいるからこその表現。

 秀逸なクロスを持たないがキングヘイローの存在が既に大技(「4分の3Drone≒Sir Ivor≒Halo、4分の1Lyphard」)であるので平々凡々に配合を組み込むだけで十分である。と言えどもDrone≒Sir Ivorからの切り離しを図ったこの「Haloクロス+Roberto」の作用でG1勝ち負け級と見られるのだが。

 また、おそらくであるが、これは牝馬でないと走らないタイプの配合だ。Robertoであっても例外ではなく、むしろこうした性別バイアスのきつい血統をサンドイッチにするとバイアスの逆転が生じることがある。条件は「父の母が名牝であること」「父の母の父系をクロスし、母の直父系によるクロス血統の研ぎ澄ましを為していること」「研ぎ澄ましを担当する血統が性別バイアスを持つこと」だ。

 牝馬は父の影響を強くし、父(牡馬)は母の影響が大である。そのため牝馬は父の母から受ける影響が大きく、その父系をクロスすることで影響をさらに強める。そのクロスの合間に性別バイアス血統による研ぎ澄ましを行うと、その影響は父の母を通して伝わる・・・という考え方。

 Robertoバイアスにしても父の母系から伝わる分にはさほど感じられないところがあり、例えばクロフネなども牝馬の活躍が目立つ。カレンチャンホエールキャプチャ、アイスフォーリスの競馬をみてもRobertoの「突き抜けてからが強い」という特性が受け継がれている様子があり、この馬も同じなのではないかと。

レッドファルクス

 スプリンターズSディフェンディングチャンピオン。今春は高松宮記念で3着しマイル路線でも良い競馬を見せた。良い意味でAffirmedなオールマイティであり、ベスト条件は中山千二に違いない。

 溜めのないミドルペースで十全の脚を使うことがAffirmedの特性であり、その脚はやや悪い意味で自由自在。日本競馬では内外兼用になりがちであり、絶対王者やドハマリした馬を交わせないことが多い。しかし400mで末脚を展開する様なミドルペースで京都外や阪神内、中山外を走らせると非常の強さを見せる。(メイショウドトウナリタトップロード阪神大賞典オールカマー京都記念菊花賞京都大賞典宝塚記念で勝ち切った)

 本馬もそのパターンであるので阪神千四や中山千二がベスト条件。好走必至であるが勝ち切りの画を描くに至るかどうか。

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