砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ジャパンカップ回顧 Halo&Bold Ruler&Tom Foolの共演

・・・これってさり気なくハーツクライ産駒のジャパンカップ初制覇か?2400mで弾ける脚があるとは意外というか、今秋の中距離~長距離G1は馬場抵抗が強いなぁ。

キタサンブラックは前走の反動が大きかった分だけレイデオロに差されたろうが、ちょっとこの内容ではシュヴァルグランには抗えなかったかもしれない。「ハーツクライキラー」たるレイデオロがとうとうこの大舞台で前を行くハーツクライを捕まえられなかった。

「血統ビーム」の記事ドンピシャじゃないか。俺の血統論とは相容れないけれども。

ロスなく前受けしたA級ハーツクライが馬群を割ってしまうとダービー馬も最強古馬の相手にならなかった。ハーツクライ産駒の場合は無駄なパワーを得ずにこうして内枠から位置を取ることが非常に難しいのだが、シュヴァルグランはそれに成功している。

秋天に続いて濃密な内容が続いている。否応なしに有馬記念にも期待してしまう。


キタサンブラック

序盤3Fは武豊らしいドスローであり、全体の流れはエイシンヒカリに近いものだろう。素晴らしきはこの道中のラップであり、「2代目坂路の申し子」に恥じない驚異的な頑強≒スタミナである。強い負荷を得た前走から中3週、この条件でこれほど行き切った逃げを打てるのは非常なことだ。

これほどの頑強はダート適性すら思わせる。種牡馬としてはダートで成功するかもしれない。

レイデオロ

競争馬としての素晴らしさを最も見せつけたのはキタサンブラックであるが、サラブレッドとしてはレイデオロがすごい。ロスなく運んだとは言っても位置は明らかに後ろ。シュヴァルグランに比べて全く二の足がついていなかった。

完成していないウインドインハーヘアらしい遅れ方であるし、間隔が空いた競争馬らしい遅れ方でもある。実戦から離れていた分だけロスを得たわけだが、直線での反応はずば抜けていた。

また2番人気の競馬とは思えないほど落ち着いたルメールもおかしい。この大舞台で冷静にあの後出しを見せられるのだから流石の名手。同じような展開で直線を向いた四位洋文byダービーに比べると雲泥の差(笑)

しかしあの位置からの「予定調和」では抜け出しきれない。ゲートを出ていたら勝ち負けまで持ち込んでいただろうが、シュヴァルグランの前を取れなければどうにもならないだろう。

ここで前を行くキタサンブラックを捕まえたことは評価できるのだが、臨戦過程に差がある以上は格付けされる様な内容ではない。もちろん馬齢のこともある。

とまれ前を行くハーツクライを捕まえられないのは血統的にも妥当である。ようやく捕まえられない相手と出会った。


シュヴァルグラン

このレースに向けてなんの考察もしなかったことは馬鹿の所業であろう。だがジャパンカップステイヤー系の馬を追わなかったのは仕方がないかな・・・と自らを慰める。

福永祐一からすればずっとこんな競馬がしたかったであろうし、それはエピファネイアのときと同じだ。「動かずに直線へ向きたいけれども展開からしてどうしようもない」という形で福永もミルコもルメールも動かしてきた。血統からすると遺憾の意を表明スべき出来事であるが、馬の素質がそうなのだから仕方がなかった。

その点で最もハマったレースというのは、阪神大賞典ではなく、むしろその2走前の、オリオンSだっただろう。位置を動かさず・・・むしろ下げる勢いで長いスパートに付き合ってからの後出し、これが本来のシュヴァルグランだった。

宝塚記念で福永が逃げて、とうとう降ろされてしまった。しかしこれは英断ではなくとも男らしい青い決断である。どんな長いスパートになったとしても追い出しを待つ立場であれば勝機がある・・・というのはHaloとして正しい。3F瞬発と追走能力は表裏一体の優秀である。

まとめ

こうしたミドルペースで流れ続ける展開は2Fや3Fで弾ける馬が非常に有利だ。

キタサンブラックは早め抜け出しで2F瞬発からダラダラ流れ込んだ。
シュヴァルグランはその流れに乗りながらも終い3Fできっちり脚を使い切った。
レイデオロは後方にありながらも終い2Fでじわっときっかし伸び切った。

Bold Ruler追走を駆使して現役最強中長距離馬が作り出したレースは、最もHaloを表現した名馬の仔に利した。しかし全く違う流れの中にあった非Haloが猛追したところに見どころはあっただろうし、2走続けて強い負荷をこなしながらも秋天組で再先着したBold Rulerも実にすごい。

この3頭のパフォーマンスはエピファネイアに匹敵するものだ。


蛇足

ブームタイムは本質が千八なのでしっかりとした中長距離戦だと勝負にならない。一度反応したが50mも持たなかった(笑)

サトノクラウン

サトノクラウンはぶん回しが響いた。ゲートで後手を踏んだ時点で宝塚記念的なこと・・・つまりアドミラブルするつもりであったのだろうが、サトノクラウンはアドミラブルほどなんでも出来る馬ではない。

アドミラブルは下れるし登れるしのハイブリッドを優れたスタミナでこなす馬。なので東京の一番苦しい区間で勝負をかけられるし、格下相手なら何をやっても突き放せる。

しかしサトノクラウンというのは平坦適性に全振りした馬であり、下りは良いとしてもその後の登り区間で失速してしまう。登坂中の脚色はレイデオロと雲泥の差であり、ああいう形でレイデオロに迫ったのはミルコのミスと言わなければならない。あんなの突き放してくれと言わんばかりよ。

マカヒキ

マカヒキはかなり頑張った4着であるが・・・これはDeputy Ministerの表現が強いのかもしれない。

ディープインパクト×Deputy Ministerの牡馬ってのはこういう本格化の仕方をする様子であり、基本は差し脚なんだけれどもジリっぽくて馬群を捌けるのよね。また道悪が得意。

アパパネのSalt Lakeと合わせて、Halo的な血統構成のMitterandでフレンチデピュティを輩出したDeputy Minister。これはジリ脚系の前受け血統なのかもしれない。

Vice Regentというのも重いイメージであるが、ボストンハーバーを思うと表裏のパワー&軽快を表現する可能性がある。ショウナンパンドラVice Regentの軽さでフワッとオールカマーを舞って見せたのか・・・?

マカヒキDeputy Ministerの母系を表現したためのジリっぽさとも思えて、その点ではサングレーザーと似ている。今回の様に捕まえに行く競馬ではなく、好位から馬群を割った方が良いのかもしれない。その点でダービーの競馬が理想的なのだろう。


[fin]