砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ダノンプレミアムへの疑念 下書き的なもの

ここまで強いともなると弱点ばかりに目がつく。

サウジアラビアRCの勝ち方からさほど考えることはなかったが、朝日FSと弥生賞の勝ち方は短距離Hyperionに良く見られるスロー巧者ぶりが見られる。


Danzigは基本的に、実に分かりやすく、短距離血統だ。これを長目に引っ張るためには相応の中長距離血統が必要であるが、これほどの名血統でありながらも手段に乏しい。

限りある手段において有力なのはChief's Crownの枝を使うパターン。Secretariatという超のつく名フィリーサイアーが大きな役割を果たしており、サドラーの牙城であった英ダービーを切り崩すに至った。

サドラー→ガリレオと続く欧州中距離~長距離の最強リレーを切り崩すのは、不思議なことにDanzig系であることが多い。近年ではサドラー×Danzigのニックスも良く見られるし、Frankelがその代表格。だがSinndarは非Sadler's Wellsの身で英ダービーを制したのだった。

(Sinndarは英愛のダービーを制覇し、凱旋門賞をも制覇した名馬)


もう一つはPretty Pollyを使うパターン。DanzigはLady Angela≒Heliopolisの配合で、直仔の代でPretty Polly弄りを敢行して成功した例は上記のChief's Crownしかない。それだけに次世代以降でAureoleなどの名血スタミナを導入するパターンが見られ、それがオンとなった枝も少なくない。

この代表格こそがハービンジャーで、ハイハットAureoleの光る名配合馬。しかしNorthern Dancerの本数が多いだけに目覚ましい効果は見込めない。それはNearcticの本数が多いってことでもあるし、またそれに依存したBlue Larkspurの本数も多い。

つまり異系を抱えづらいからせっかくのニアリークロスも効果が薄いのだわ。ワークフォースなんかは名血名繁殖の異系を抱えすぎるくらいだけれどね。

Danzigの難しさもそれへ集約されがちだ。現代の異系とはBurghclereのようにHyperionやFair Trialの塊を指すことが多い。クラシックなドイツ血統であれば異系とすることも出来るが、タイガーヒルの母The Fillyとて完全な異系と認めるのは難しい。(Hyperion4×5×6)


そんなDanzigにも長所がある。そりゃそうだ。

非Blue LarkspurとしてのNorthern Dancerを後継している点がそれ。大抵のDanzigはBlue Larkspurを周辺に抱えており、この場合のクロスは非常に成功しやすい。サンデーに対するHaloクロスの様なもの。

加えて「HyperionまみれのGenial Jenny」と「Bull Dog=Sir Gallahad×Blue LarkspurまみれのIntikhab」の間でクロスされているのがより良い。ヴィルシーナも「Hyperionまみれのディープインパクト」と「Roman≒Nothirdchance≒Miss DogwoodのMachivellian」、「Nasrullah×Hyperionのハルーワソング」の間でHaloクロスされており、クロスの成功にコンセプトの違いはマスト条件。

超がつくイマイチ血統があったとして、一人の変態生産者がその血統を紡いだとして、その変態が超がつく優秀であったならば、おそらく成功の枝葉は一つに限られる。どれほどの配合を重ねたとしても道は一つだ。

違う道=コンセプトの違いが許されるのはDanzigが優秀な血統である証明で、ニアリークロスにしか活路が求められない血統というのはむしろ優秀ではないのだと。逆に言えばニアリークロスというのは平凡な血統の遺伝を良化させる手段なのだ。

Danzigが優秀であればこそHyperionを弄らずに血が継続するし、優秀であればこそ異系を得られる。だからソウルスターリングの成功とはFrankelの素晴らしさを証明するし、ラッキーライラックの成功はオルフェーヴルの素晴らしさを以下略。


よってインディアナギャルの配合をけなすつもりはない。これは良い配合だ。しかしディープインパクトという素晴らしい血統に対しては要求が強すぎるのではないか。

いや、インディアナギャルがディープインパクトなみの名繁殖なら良いのだけれども。それに満たない繁殖がディープインパクト様に何を要求するのかと。基本的にディープの配合ってディープの良いところを抽出することだもの。じゃなきゃクラシックは勝てない。

ディープ様の偉光により母の長所を抜き取るパターンもあるし、インディアナギャルはそれにあたるだろう。それでもちょいと要求が多い。短距離Hyperionの要求がね・・・。

彼女はDanzigTudor MinstrelQueen of Lightといった短距離Hyperionに対して、Intikhabの非Hyperion性が光る配合馬だ。これへDanzig×Buckpasserを脈絡させたことが大きい。

だからそのマイル適性をオンにしたし、それをよく息子へ伝えている。分かりやすい千八ディープだし、この類のディープが朝日FSを勝つのは正しい。

問題は位置を取って快勝したことで、それはDanzigクロスらしい操縦性の良さとDanzigらしい鋭さを両立した変態の所業だ。普通の千八ディープなら差して勝つ。

これはBurgheclereの「競り落とす英愛的なDonatello×Hyperion」がオフになった表現で、モズカッチャン的なDanzigの勝ち方に見える。アンビシャスのような短距離Hyperionではなく、モズカッチャンだろう。


突き抜けてからも真面目に走る姿にRobertoを見るが・・・果たしてグラスワンダーやGiant's Causewayの様に並びながらファイトバックし続ける変態を秘めるかどうか。そういった勝負強さをDanzigは・・・というかDanehillは伝えない。

Danehillってアホみたいにパワフルで速い血統だから、競り合いにステータスを配分しないのよね。ミッキーアイルも速さの一つ技で勝ち切るところがある。相手なりに踏ん張る様な難しさと強さはなかった。

それはBuckpasserの天才性とも言いかえられる。サイレンススズカマルゼンスキーもFrankelも速くあるばかりで強さを見せなかった。強いというより速いのよね。異次元の天才的速さ。

グラスワンダースペシャルウィークの戦いは「ひたすら踏ん張るRoberto」と「天才的Buckpasser」の頂上決戦であったし、天才の途切れ目にRobertoが滑り込む様な勝利があの有馬だった。


ダノンプレミアムは強い馬ではなく天才の速さを持つ馬だろう。ただ、Danzigを母体としたその天才は器用な秀才と判別がつきづらい。つまり、Buckpasserなのか、Tom Foolなのか、だ。

疑念としてまとめるならば、それはやはりモズカッチャンやジャンダルムに見る様な秀才だ。スローで弾けすぎる。天才ならば憤慨とともに駆け抜けなければならない。

サラブレッド界の天才に優等生はいない。治世の能臣、乱世の奸雄はいない。スローでもハイペースでもきっかし仕事をする天才はいないのである。いるのは仕事をほったらかして一人旅する奔放な最速ばかり。

エピファネイアだってそうだった。


まとめ!
・ダノンプレミアムは短距離Hyperionが強い。
Danzig×Tom Foolの器用な秀才がオンになっているかも。
・ディープ牡馬にありがちな馬群嫌いや遅い出足は見られない。
・厳しいペースはこなすと思うけれど、その後の競り合いでファイトバックはしないかも。


皐月賞は格の勝負で3着くらいに落ち着きそう。けれどタイムフライヤーやグレイルが勝つのも違うし、皐月賞は予想が面白そうだなぁ。

オウケンムーンってのも社台系の繁殖だけあって好配合で、とあるブログでも熱狂されておられたけれど、ボトムラインの配合の重ね方が実に芳しい。ただND3×3に対して完全アウトを取らなかったことには疑問で、オウケンブルースリはND4×5×4だから相手としてはベターだけれどG1には届かないかな。

パッと見た感じで即消しするくらいには傷だ。けれどそれを覆すほどには素晴らしい累代であるし、オウケンブルースリによる完全HtRアウトも格好いい。(シルバージョイによる「4分の1Gold Digger4×3」が良い!)

これってムーンフェイズNorthern DancerとSpecialからしHyperionを引かないのがミソで、この2点からHyperion祭りのジャングルポケットに最高の脈絡を見せているのが本当に素晴らしいのよねぇ。

「ニアリークロスは緊張と緩和のリズムの中でこそ」という持論からして、このNureyev≒Fairy Kingは最高級と認めなくてはならない。これほど素晴らしいヌレフェアリー(=サド)は見たことがないもの。

嵐鳥を見ればノーザンテーストとのニアリークロス・・・というくらいにはベッタベタな手段だけれど、これは放置が正解だと思うわ。尽くがHtRに食われているから・・・。

オルフェ黄金配合の肝と考えている「HtR全クロス状態」にあたるが、これを成功させるにはVaguely Nobleによる異系が必要だ。「HtR重視だけれども、Hyperion絡みの強烈な異系もあるよ!」というのがオルフェの大好物かと。


とあるブログについて。

そこに行き着いたのは3月の頭で、「ガーサント≒Biologie」で検索をかけて見つけた。Spring Cleaningのことはとっくの前にそこで解明されていたという・・・。一人でめっちゃ喜んでいたのに。

それから2日くらい経って、近頃放置気味のTwitterを覗いたらフォロワーが一人増えているわけ。あらまぁ、どうしたことかしら、と思ったらそのブログのTwitterアカウント。しかも2月下旬の時点で・・・。

オウケンムーンの母系についてもつぶやきで「ホントだわ」としみじみ頷いたわけで、色々勉強させていただいている。


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