砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

熱烈なる迎合 タイムフライヤー

母タイムトラベリングはダート界に一時代を築いたタイムパラドックスの全妹。

「母ちゃんがダートの好配合で、父ちゃんがハーツクライか」
「こんなのパワフルに走るに決まってるべや」
「ほら、案の定だ。ごっつい脚しやがって」
「まぁホープフルSくらいが関の山じゃないの?」

というのが今までの評価だ。ちょっと違う見方をしたい。

タイムパラドックスディープインパクト

基本的には緊張と緩和の一つ技で走った様な配合。特筆すべきニックス、驚嘆に値するニアリークロスなどはなくて、ただただ真っ当な配合を繰り返しただけのベター配合。(ブライアンズタイム×Northern Dancerはニックスというべきかな)

しかし種牡馬としてパッとしない理由も明確であって、ジョリーザザがPrincequilloを抱えすぎているのよね。ディープインパクトブラックタイドに比べると雑多な遺伝というべきだろう。

モノホンのA級種牡馬は8分の1から影響を受けて競争馬として大成するし、S級種牡馬はその8分の1を16分の1に落としてなお、明確な表現として産駒へ伝えてみせる。

ディープインパクトの秀逸はAlzaoニアリーに集約される。相手がダンシングブレーヴでもStorm Catでもフレンチデピュティでも「ディープインパクトのLady Rebecca」から的を外さない。相手には決して主導権を譲らない凶悪な遺伝力がS級の証。

ディープインパクトのLady Rebecca

この強烈な遺伝力はHalo≒Sir Ivorでは少し説明がつきづらい。なので「Halo≒Lady Rebecca」を提唱している。

これはHaloが「Blue Larkspur4×4」であるのに対してLady Rebeccaが「非Blue Larkspur」であり、逆にLady Rebeccaが「Princequillo4×3」であるのに対してHaloが「非Princequillo」であることを理由としている。つまり「緊張と緩和」を含んだ形。

これを「緊張」と「緩和」の頭2文字を略してキンカンキンカンといえば明智光秀。そんな感じで「明智流相似血統式と命名しよう。(提案)」などと立ちはだかるエアロヴェロシティにて書いた。

このLady Rebeccaの息子がAlzao。これは「非Blue Larkspur」としてのLyphardを後継する名血統だ。ダンシングブレーヴにも同じ傾向があり、ウインドインハーヘアに似た血統構成のホワイトマズルを輩出した。(Alzaoダンシングブレーヴの差異を語ると楽しいことになるので省略)

RobertoとLady Rebecca

「Halo≒Lady Rebecca」が成り立つのであれば「Roberto≒Lady Rebecca」もありじゃないの?なんて疑問が湧く。

然様。その柔軟性が明智流の弱点である。しかもこの場合はより複雑になって周辺の処理が肝要。そしてタイムパラドックスは寸前までそれを成功させた血統だと言える。

Princequilloの緊張がA級たり得ないのが勿体無いところ。さりとてボールドラッドがいなければGraustarkとの邂逅に成功はなかったのよねぇ。Misty Mornでなくてはならない理由ってのが確かにあるのだ。

Misty Morn≒Natalma

究極的にはこう言うべき。この組み合わせはLyphardとHis Majesty=Graustarkを巡り会わせる数少ない手段で、特にRobertoを交えるパターンでは絶対的な成果をもたらす。

正確に言えば「Northern Dancer×Fair Trial×His Majesty=Graustark×Roberto」の成功に役割を持つってことだ。Sadler's WellsやNureyev、Danzigではさほど困ることはないんだが、Lyphardはやたら難儀するからねぇ・・・。

それでもNorthern Dancerを重ねるほどに難しさはなくなるし、「4分の3Northern Dancer」の配合ではMisty Mornを必要としない。けれど、タイムフライヤーの様なLyphard4×4を成立させるには不可欠だ。ディーマジェスティのようにLyphard×Sadler's Wellsを取るなら別に困らないのだけれども。

緊張と緩和の険しき道に果てを見て

最後に、タイムフライヤーは相似配合を取る。Hail to ReasonLyphardがそれぞれ4×4のクロス。

しかし背景が全く異なっている。Blue LakrspurとHyperionの融合に成功した「サンデー×Lyphard×Hyperion」であるハーツクライ、Blue Larkspurを独自色として「4分の1Roberto、4分の3非Blue Lakrspur」を貫いたタイムトラベリング。

ハーツクライとして正しくなくとも、ブライアンズタイムとして正しくなくとも、「例外」と判を押すに相応しい好配合である。

彼は久しく出ていなかったボールドラッドの好配合馬だ。日本競馬史において、最もそれらしい馬とも言えるかもしれない。


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