砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

鬼のTudor Minstrel

未だ展望の段階に至らず、まずまず予想は躓いている。やばいくらい。

とりあえず一つ一つやっていくしかなくて、展望のネタ集めに集中するしかない。

Tudor Minstrelもその一つ。

驚異の春天適性

Tudor Minstrel持ち繁殖のデータを探ると、これだけの名血統であるからそんなに大げさなデータは出てこない。データ派の血統予想家たちが跋扈しているためか、回収率なども実に平坦である。

名血統は大概そんなもんで、それはもう恐ろしいほどである。

しかし春天Tudor Minstrelを結びつける人間は少ないのかもしれない。勝率17.5%で単回収371円という驚きの数値を叩き出すのだ。ミホシンザンからの人気勢に始まり、大穴ビートブラックに2連覇フェノーメノにまで波及する驚愕のデータ。

立ち回りの妙

化物たちの様に豪快な勝ち味は見せず、展開や仕掛けによる勝ちが目立つ血統だ。大舞台に弱く、底力に不安がある。関東でシビアなレースになると人気でも飛んでしまうし、アンビシャスby中山記念デニムアンドルビーbyジャパンカップの様に追い込んでも2着止まり。

しかしエイシンフラッシュソウルスターリングアドマイヤムーンの様な馬もいるのも事実で、古い独仏のスタミナをリンクさせるとこういった馬に出やすいようだ。TatiemeとCrepelloを引っ張ってくるKrisは特注。

他にはブエナビスタマンハッタンカフェを出したSanta Lucianaがある。これも独仏のスタミナをオンにしてズルズルと鋭く差し込んでくる。アドマイヤムーンはどちらかと言えばこちら寄りの馬だろう。

早熟の先行技術

若い時分には先行をこなす特徴があり、3歳時に見せる出足の速さは素晴らしい。

これは血統的特徴としての先行ではなく、早熟的なスピードの完成が理由かと思う。古馬になって更に上向くという様な馬は少なく、どこかで機会を掴んで勝利を得るというパターンが多め。(エイシンフラッシュ秋天とか)

それだけに2歳~4歳春までのマイル適性は高い。阪神JF・朝日FS・桜花賞NHKマイルCでの勝率はえげつないく、いや、それは笑えるほどだ。NHKマイルCなんかは14年から17年まで4連勝中である。阪神JFも14年から16年まで連勝中だった。

早熟スピードの転化

もう一つ注目したいのはフェブラリーSでの戦績で、14年から18年まで5年連続で連対中。

1番人気はベタ買いプラスであるがコパノリッキーアグネスデジタル頼みのデータでもある。種牡馬になることが約束されている様な馬ならば、という条件付きだ。

また晩成馬の好走も目立つのが面白いところで、勝ち時計が35秒台に入ると芝砂両刀のアグネスデジタルしか勝てていない。ノンコノユメコパノリッキーによる3勝は36秒まで時計がかかっての勝利だった。

展開に対するしぶとさではなく、馬場に対するしぶとさを得られる血統とも言えるだろう。

Nasrullah×Hyperion」として

著名な経由としてはBlushing Groomがあり、これは「Nasrullah×Hyperion」の血脈。またKrisも母系にNasrullahを引くので同様のことが言えなくもない。アグサンも似たようなものだろう。他のTudor Minstrelを見ても「Nasrullah×Hyperion」の血統を抱えるパターンが非常に多い。

またそれらはトニービン・Special・Bold Ladの様なFair Trialを絡めたものだ。「Nasrullahと同じLady Josephine」「Fair Trialと同じLady Joror」「Hyperion直系」としてのTudor Minstrelを弄る形である。

加えてLady Angelaとは「Hyperion×Swynford」が共通するし、Gulf Streamとは「Hyperion×Pharos×Swynford」が同じ。賞金上位に「サンデーサイレンス×Northern Dancer」の馬が多いのは決して偶然ではなく、この古い血統が近年の日本競馬に影響を強めている事実がある。

サンデーサイレンスNorthern Dancerも究極的には「Nasrullah×Hyperion」なわけで、この組み合わせの化物であるドゥラメンテが「Northern Dancer4本+母父サンデー」の配合を取った。ダービーを勝ち切ったのは、割と、自然な流れだったのかもしれない。

Count FleetとPrincely Giftが依るもの

多くはマイル、多くは中距離、多少なりスプリント、というのがTudor Minstrelの傾向である。Tudor Minstrel持ちのキンカメからロードカナロアが出て、Kris持ちのアドマイヤムーンからファインニードルが出ている。これらは全て父母間Tudor Minstrelクロスだ。

しかし、その一方で、上記の「春天ベター血統」としてのTudor Minstrelも存在している。いわゆる「ハイインロー」である血統が京都で絶妙に下ってくる姿は割と不思議である。

ここにはStefan Greatの存在が割と重くのしかかっている。

Stefan the Great的な下り

ビートブラックの父ミスキャストと母母父Rainbow Questの母系には「The Tetrarch×Persimmon=Florizel」の形が見られる。

加えてこれらの組み合わせの近くにBlenheim=His Graceがあるので「Blenheim=His Grace×Persimmon=Florizel×The Tetrarch」を4分の4で抱える事となる。(Almahmoud・Joan・Boudoir・Duke's Delight:5×7×7×7)

Blenheim×The TetrarchはMumtaz Begum≒Mahmoudで成立させているのだが、これにPersimmon=Florizelを絡める手段というのは、実に乏しい。だからこそ「Nasrullah×Count Fleet」は重宝すべき組み合わせであり、Princely Giftは未だにその影響力を残している。

トニービンによる下り

さて、ハーツクライ産駒は下れない、というのは先生の血統論に触れるものには常識だ。ところがルーラーシップ産駒のキセキは下った。これをルーラーシップ×ディープインパクトという組み合わせのイメージで終わらせるのは勿体無い。

仮説を立てるとすれば、トニービンの母母父Precipticの2代母Ishtarの存在を起点とするしかない。これはStefan the Greatの全妹である。

順序はこうだ。

1,「カンパラ≒Special5×3の成立(Nasrullah×Gold Bridge×Hyperion×Fair Trial)」
2,カンパラによる「8分の1Prince Rose4×4」
3,Prince Chevalierクロス・Biologie≒Montagnana≒Big Gameクロス
4,カンパラへのほぼ全クロス(8分の1の不成立)

この時点でトニービンらしさってのはほぼ薄れている。ノーザンテーストによる「8分の1Lady Angela3×2」がオンとなるための土壌が出来上がったとも言えるだろう。

しかしそれもこれだけでは足りない。Northern Dancerクロスでも足りない。Natalmaへの徹底したクロスが必要である。緊張と緩和の理屈からして。

5,Mr. ProcpectorによるNative Dancerクロス(「Nasrullah×Count Fleet」の導入)
6,Mahmoud≒Mumtaz Begum群

この段階でNatalmaとAlmahmoudまでは攻略している。残るはArbitratorである。

これはこれでCount FleetによるStefan the Greatクロスが入っているし、他の血統にしたってRaise a Nativeの母Raise Youなどで事は足りていそうなもの。しかしニアリーの関係を結ぶような存在には足りない。

7,MiesqueはIgual≒Arbitrator≒Sea-Change

このくらいでなくてはならない。IgualとSea-Changeの2血統によってArbitratorは強調される。そして代の遠近から、ノーザンテーストによる「8分の1Lady Angela」が完成したのだ。

そしてその次代によるサンデーの取り込み、この意味って「ノーザンテーストの諸要素を受け継ぎつつもMiesqueの緩和部分に切り込みますよ」ってものなのだわ。Natalma≒CosmahによるBanish FearアウトとHonoraクロスを利して「The Tetrarch×Persimmon」、Stefan the Greatをかっさらおうとしている。(Banish Fear≒Arbitrator)

キセキの母ブリッツフィナーレってのはもうHonora血脈の大乱闘よ。ディープ×DanzigでPettionクロスだし、Cosmic Bomb×Prince JohnでBanish Fearクロス(しかも3本)だし、母系にはEight Thirtyが入るし。

これによってキセキ自身は「4分の3Honora、4分の1エアグルーヴ」を完成させている。しかも諸HonoraにはBlue Larkspur血脈がついて回り、エアグルーヴはそれをもアウトとしている始末。今ならPrincequilloも付きますよ、ってなくらい。

これだけNorthern Dancerを振り回した配合のくせに傍系血脈の緊張と緩和はばっちり決まっている。これが昨年の菊花賞馬の配合だ。


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