「ジャパンカップは当代最強の中距離馬を決めるレースである」
・・・なのですが、馬場が悪くなるとだいぶ違った話に。近年では4Rまで稍重であった14年の例がありまして、これは好位から追い出された菊花賞馬エピファネイアの圧勝でした。古くは・・・口に出す必要のない話。
エピファネイアとタップダンスシチーを道悪の例としますと、道悪のジャパンカップは、近年のジャパンカップと傾向を同じくしていることとなります。「如何にマージンを稼ぐか、如何に戦力差を浮き彫りにするか。」というレース。
「最強馬だからこそ」の世界が高速と道悪にはあると思います。通常の馬場においても当然のことですが、馬場に対して使える末脚は限度があります。高速と道悪ではその幅が非情に狭まっているのでしょう。
通常の競馬において・・・「ここから弾ければ勝てる」と考える騎手は少なくないかと思います。それはきっと正しいのだと思います。
しかし道悪や高速においては「弾ければ」の仮定がほとんど無意味となりましょう。弾ける、つまり他馬よりも脚を使うことは格の差を証明することに等しい。もはや展開以前に構造としてそうでなければ末脚に差は出来づらいはずです。
極論、同レベルの逃げ馬・先行馬・差し馬・追い込み馬が同じ位置同じ負荷から末脚を使ったとて、大きな差など生じはしない。内から乾くなどして馬場に差があれば違うでしょうが。
「椅子取りゲーム」と「戦力差」の勝負であることは高速馬場と同じですが、道悪となりますと中長距離適性もまた求められます。予想が難しくなったような、易しくなったような。
予想印
◎ムイトオブリガード
◯ルックトゥワイス
△ユーキャンスマイル
直伝の道悪適性
ハッピートレイルズの一族は道悪巧者でありまして、直仔シンコウラブリイは不良のマイルCS勝ち馬。彼女以外のG1馬は不在でありますが、これは競馬の質によるのではないか、と。
母系にセントクレスピン、シンコウラブリイに至ってはCaerleon直仔。馬群嫌いの中距離先行一家でありますから、素質があってもG1勝ちに届かなかったのでしょう。チェッキーノやコディーノが足りない素質であったとは思いません。
しかしここに来て馬群嫌いが一切のロスでなくなる先行有利の世界が生じました。「キンカメのくせに馬群嫌い」という難しさが弱点ではなくなったのです。
であれば、このタイミングでハッピートレイルズの戴冠があってもいいでしょう。これが届かないならば、どうしようもありません。けっぱれ。
Alzaoの牙
ルックトゥワイスは「しぶとい競馬だけれども、長い足では追い込めない」という矛盾が大きな弱点。大まくりでねじ伏せる様なステイゴールド産駒ではありません。
オープン入りを決めたグレイトフルSでは戸崎の持つ伝家の宝刀が大きな要因となっていて、やはり上がり3Fは最速でした。この軽さはAlzaoのイメージ通りで、ディープインパクトの軽快な現役時代の走りの根幹を見せられるようです。
スローだろうと、なんであろうと、末脚を使うしかない彼です。戸崎圭太や北村友一など溜めたがる騎手を配されたのは、そういう面が強いためでしょう
トップで上がらなくては勝ちきれない。かといって溜めすぎては勝ちきれず、溜められていなくては勝ちきれず。この塩梅の難しさにはどの騎手も難儀した様子です。これを爆発せしめたのは今春のスターであったレーンでした。
こういう馬に乗って怖いのがデットーリや横ノリで、彼らはギリギリアウトのラインで勝負の際へ馬を引っ張り込むことに長けています。「そういう馬じゃないから」と思う。
軽快であるがために末脚一発の競馬しか出来ないというのに、軽快に進出したり前受けすることを可能とします。技術云々よりもセンスとしか思えませんねぇ。
印を打つ予定はありませんでしたが、今週のデットーリは内への潜り込みっぷりがすごい。どういった競馬となるかは想像出来ませんが、何かが起きる気もします。
Princely Giftにあって
ユーキャンスマイルはTudor MinstrelかつPrincely Giftな馬でして、スタミナのある脚を持つくせに、なんだか薄弱で、機敏に動くという変な馬です。
ゴールドシップ・アンビシャス・ラブリーデイをごった煮にしたような馬。ゴールドシップであるがためにゲートからシュッと展開できず、アンビシャスであるがために機敏に反応することができ、ラブリーデイであるがために持続的に展開出来る。ゴールドシップ成分(Princely Gift)が本当にいらない。
しかし3400mをこなすスタミナを供給するのもゴルシ成分です。本質的には中距離馬でしょうし、なんだったらマイル気味ですらありましょう。まさしく距離的スタミナをPrincely Giftが供給しています。
ただ、本質には抗えないのも確かで、ゴールドシップもまた中距離馬であったでしょう。距離適性には抗えないはずで、位置からして勝ち負けは厳しい。
大接戦が見込まれる3着の一線へ切り込むだけの戦力はあると思います。後方から展開する競馬は進路を選びやすいという側面もあります。なんとか3着まで差して欲しい。
あとがき
散々悩みぬいた後、「もうこれはムイトオブリガードと心中だなぁ」と決心しました。
雨が降らねばもっともっと違うことを考えた・・・と思う一方、今回の結論はいずれにしても変わらなかったのではないか、とも。最初から最後まで心中はごっちゃごちゃ。
昨年の本命がキセキですから、もうジャパンカップでルーラーシップに逆らう気力はありません。いっそのこと逃げてはくれないか。ドバイのハーツクライみたいに、逃げてこれないか・・。
従来のムイトオブリガードにここで戦う力はさほどありません。戦力差はほぼ横並びですから、ここで新味を見せるしかない。新味こそが戦力差だ。
そういう意味では角田調教師がルメールを確保したときに腹は決まっていたのかもしれません。おそらく最後となる本当の挑戦で、乾坤一擲の競馬を披露するのではないか・・・と。
イイデザオウの鞍上であった角田調教師ならば、シンコウラブリイをこう走らせるんだと。
[fin]