砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

アウトブリードとインブリード

堀田茂氏の記事に触発されて書きますが・・・。

実際問題、アウトブリードを支持する「血統論」をあまり耳にしたことがありません。インブリードありきであるのは私もそう。

 

一介の血統マニアとして、これに差し出口しますと、インブリードの方が分かりやすいのが、まず、当たり前の理屈としてありましょう。それは近い代であるほど分かりやすい。

エルコンドルパサーのSeattle Slewへ、第一に着目する血統マニアは少ないかと思います。誰だってSpecial=Lisadellに目を奪われてしまいます。

かといって、「だから素晴らしい」とする血統マニアも多くないはずです。数々の血統家による啓蒙を受けた血統マニアたちは、Special=Lisadellをアウトブリードした血統の内容にこそ素晴らしさを感じるでしょう。

問題とされるのは、そのインブリードが5代の外にて図られていた場合に、それを是とする血統マニアがあるのかどうかということで。「5代の外にあるからこそ素晴らしい」とする血統マニアは珍しいと思います。

 

 

理由は色々あると思いますが、一括すると、「面倒くさくて時間がかかる」≒「単純明快でない」≒「シンプルでない」ということでしょう。それは血統マニアからしても、生産者からしても。

濃ゆいインブリードを持つ名繁殖なんかは、そのインブリードされた血統が大きな財産みたいなものです。それで成功したことは明白であり、その傾向を引き継ぐことに注力すれば、おおよそ間違いがありません。

一切の前情報をなしにディープインパクトの血統表を見て、産駒の理想像を思い浮かべ、ジェンティルドンナやキズナの血統表を想像出来る人は少ないでしょう。もしかしたらキタサンブラックの血統表が浮かぶかもしれません。ウキヨノカゼの血統表かもしれません。

しかし濃ゆいインブリードを持つ場合は、5代アウトのそれに比べ、圧倒的に選択肢は少ない。種牡馬であっても繁殖牝馬であっても、選択肢の狭さはある種のメリットです。(それが時勢に沿えば最強ですね)

 

繁殖牝馬デアリングタクトに関して、生産者は「サンデーのインブリードを継続する」「あるいはしない」という選択肢を持ちます。極論、そればかりが焦点となるでしょう。

デアリングタクトが10歳となるころには非サンデー種牡馬の輸入が成功しているかもしれません。ハービンジャーやルーラーシップくらいのレベルがゴロゴロしているかもしれません。その中にはキンカメ級の逸材があるかもしれません。

仮にそうであったならば、デアリングタクトの誕生は時勢に沿ったものだと言えるでしょう。

 

私の血統マニアとしての方向性は「如何様なインブリードがなされているか」です。

「4分の3と4分の1」「ニアリークロス」。ニアリークロスとは理想的なインブリードの追求であり、4分の3と4分の1とは血の凝縮による異系血脈の構成です。

血の凝縮なくして「4分の1異系」ってのはありえません。そして、その血の凝縮とは過去の例からはじき出されたニアリークロスという理屈からなされるべきです。

かといって、5代アウトと濃密インブリードの各時代に周期性があるわけではありません。政治的な事情からそのような配合が可能となったこともありますし、歴史的な名生産者により練りに練って作られた5代アウトもあります。

 

つまるところ、生産者の意識改革が必要であるということは、間違いがないはずなのです。オルフェーヴルやデアリングタクトの成功に引っ張られて濃密インブリードを是とすることは、あってならない。

それは意図されるべきであり、流行の中で行われるべきではありません。その意図はSt. Simonの再来を願うとかでも問題はないと思います。大事なのはマイノリティであること。此度のモーリスのように濃密インブリードが多数派を占めることはは、決して面白いことではないと思います。

 

まぁ・・・サンデーサイレンスやノーザンテーストだからはっちゃけられるってのはあると思います。輸入種牡馬で間違いなくアウトに出来ますんで。

エアグルーヴにおけるノーザンテースト、トキオリアリティーにおけるIn Reality、こういった種牡馬を今年の2歳馬から送り出せたならば、それはそれで一つの財産でしょう。

今は国外へ売りに出すというルートもありますし、サドラーだとかを抱えるよりも、サンデーの強いインブリードを抱えた馬のほうが売りやすいってのはあると思いますな。

 

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