砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

2022年有馬記念回顧

書いてたけど、書き終えられませんでした。きちんとしたものを仕上げようと書き直しを繰り返していたら、自分の書こうとしていることが分からなくなるという、そういうやつです。

校正ってのはきちんと書き上げてからするもんで、途中から「これいらない、ここを掘り下げる」とプロットもなしにやれば混乱もします。なんかこう、真面目になりすぎた気がすごくしますねぇ。

なので、意図して不真面目に書こうと思います。

 

とりあえず馬券は

◎タイトルホルダー

○ディープボンド

△ヴェラアズール

でした。3頭並んで入線しているので満足です。

 

イクイノックスを消したのは、よくわからなかったからです。彼が勝ったらそういうもんだという話で、それ以上でもそれ以下でも。

ハープスターがゴールドシップを凌いだ札幌記念を思い出させる勝ち方でしたね。Robertoの射程距離から悠々と離れていくFair Trialというのは滅多に見ないもので、ハープゴルシの例は「まぁ、ハープはピッチが速いし、ゴルシは泥みたいに走るし、札幌2000mなら、まぁ、こういう結果もあり得るかな」という納得はあります。イクイノックスとボルドグフーシュは実力差を感じさせたかなぁ。

ポテンシャルに差があるかは分かりませんが、現時点ではこれが全てかと。実力差がなくて、ボルドグフーシュがポンッとゲートを出る馬になっていて、そういう世界線ならジオグリフと同じ様にイクイノックスを差せたかもしれません。

かといって、イクイノックスのポジションは完璧の一言でした。これの直後につけてもジオグリフするのは難しかったと思います。着差以上の実力差を感じる余裕の勝利でした。

 

そもそもボルドグフーシュはWoodmanで、シャケトラとかと同じ系譜なわけですよ。後方から展開するのがデフォですから、ゲートを出てもマージンを稼げるだけで、競馬の内容自体は大きく変わらないかと思います。

ニアリーシャケトラが間に合ったレースと思えば、タイトルホルダーの逃げというプロフィール通りにシビアなレースでありました。結果的に調整が上手く行くことが大前提となったレースとも言えて、海外帰りのタイトルホルダーは自分の首を締めてしまった形。

海外遠征というだけでも頓挫+1くらいのイメージで、それに別の要因が重なれば一層辛くなります。かといって秋天や菊花賞を経由した方が楽であるという話でもなく、特に3歳馬は順調な成長と状態の維持を要求されるだけに、決して簡単な道のりではなかったはず。

 

イクイノックスは東京優駿も秋天も勝つ気満々で調整されていて、有馬が万全であったかと言えば、いささか怪しいものがあると思います。

それでも勝ちきったのは状態と成長のバランスが釣り合ったためです。ポテンシャルで掴み取ったのが秋天であれば、有馬の勝利は成長力に依るものというべきでしょうね。

今にして思えば、有馬記念勝ち馬の父は頑丈な馬が多いですね。例外らしい例外はアグネスタキオンくらいで、彼は早くに引退を余儀なくされた上に11歳で早逝した馬です。

だからドゥラメンテ産駒は勝てなかった・・・と言うつもりはありません。それならオジュウチョウサン産駒が有馬記念を勝てるという理屈になってしまいますから。やはりこれも勝てないとは言いませんけれども。

 

体質が弱いというよりかは、走りの本質に差があるのでしょう。ドゥラメンテは走りすぎた馬と言え、彼の持つエネルギーはあまりに大きく、真面目に走ると身体が持たなかったのではないかと。

キングカメハメハ系に属する名馬全体に言えることですが、彼ら彼女らはとにかく真面目です。G1レベルのキンカメは本当にクソ真面目で、良い位置を取ってから良い伸びを見せます。優等生なんですよね。

ドゥラメンテはキンカメ産駒として普通に真面目な馬でしたが、ルーラーシップの甥っ子というプロフィール通りの馬でもありました。「狂気を秘めた真面目なルーラーシップ」というべき馬だったでしょう。

ただ、これは使い勝手の良い言葉なだけで、厳密には異なります。ルーラーシップが気性難でも強かったのは身体が柔らかくてアクションが大きいためです。叔父と比べれば流石にドゥラメンテのアクションは小さいというべきでしょう。

このアクションの小ささはルーラーシップ的狂気を受け止めるには足りなかったはずです。ましてや真面目にレースをしてしまう馬。ルーラーシップとの比較をすれば、消耗は大きかったでしょう。

ルーラーシップの持っていた安全装置を可能な限り取っ払ったのがドゥラメンテというべきで、その尖った要素を伝えるからこそ種牡馬としても怪物でした。

 

それをどの様に伝えているかがポイントで、ドゥラメンテはルーラーシップ的狂気を伝えていないでしょう。キンカメ系らしい真面目さは間違いなく伝えていて、スピードも上手いこと伝えている様子があります。

この狂気の欠陥は大した話でもなく、キンカメの真面目さが発揮される限りにおいて問題がありません。タイトルホルダーはキタサンブラックほどに食らいつけないでしょうけれど、キタサンブラックよりスタミナとスピードに秀でています。これでゴリ押せばいいんです。

その結果がこの2着の少なさで、「ゴリ押したか」「ゴリ押せなかったか」の2つばかりが彼の競走結果なのです。ドゥラメンテは、ルーラーシップ的狂気に火がつく限りにおいて、必ず2着まで突っ込んでいます。

総合的な能力に父と産駒に大きな差はないでしょう。ただ、競争に最適化されているかどうかに違いがあるだけで。

 

サラブレッドの比較において「競争に最適化されているかどうか」なんてモノサシはバカの用意するものです。血統マニアが持ち出すのであれば尚更で、誰もが「いい馬」だとかのコメントでぼかす部分ですね。

それを語ることが出来るならばホースマンは誰も苦労しないでしょう。「最適」が規定されているのであれば、それを目指せばいいのです。それが分からないから、様々なアプローチを試みるわけですよ。目指すのは最適ではなく、よりよい状態です。ワンバイワンですね。

それでもドゥラメンテやディープインパクトといった馬は「あれを目指すべきだ」「あれが理想形だ」と語りたくなるものです。キンカメやサンデーという種牡馬から出ているのであればなおさらでしょう。

時代を代表する種牡馬が輩出した、その系譜に沿った名馬というのはそのくらいに価値があるのです。それは「同型のライバルがいなかった」という言い訳を許さない、圧倒的パフォーマンスで同型をなぎ倒す存在であるためです。

父サンデーの時代にディープは最強を示したし、4分の1サンデーの時代にドゥラは最強を示しました。名血の類が流行血統の王者に立つという説得力は、最適化というバカの世界に片足突っ込んでいるのです。

 

残念ながらタイトルホルダーという馬はその世界にありません。弱いという意味では全くないし、ドゥラメンテより劣っているという話でもないのです。

キンカメやディープといった「流行」というべき血筋が絶えた現代においては、ドゥラやディープといった強さを見られないという話なのですよ。

逆を言いますと、現代の種牡馬戦国時代が加速した状態において、ドゥラメンテという競争馬は弱い可能性があるのですよ。彼はほぼ全てのレースで狂気の火を携えましたが、それは全てのレースでハマっていた、ハメられていた、という言い方も出来ます。

様々の適性で殴り合う現代でそれを同じ様に出来るのかと言えば、果たしてどうでしょうか。そりゃ強いには強いにしても、どこかでドゥラメンテらしからぬドゥラメンテを拝むこととなったのではないか。

 

タイトルホルダーに限らず、現代の競争は「最高の自分を見せられたかどうか」で決まることが多いと思います。いつの時代にもある考え方ではありますが、それがより加速しているということです。

スクリーンヒーロー×Alydarの組み合わせなんてのは有馬記念専用の気質に近いですからね。パワーこそスタミナ、機動力こそパワー、スタミナこそ機動力、みたいな考え方の組み合わせですもん。それがビタッとハマって2着3着です。

イクイノックスは実にLyphardな強さで、「外回りを制する最強の末脚、それを支えるスタミナを見よ」ですね。一側面にすぎない能力で圧倒してしまったのは、ちょっと周りが走らなさすぎた気も。

イクイノックスとボルドグフーシュの間にエフフォーリアがいても良かったと思います。これもやはり調整が間に合わなかった感があって・・・ちょっと消化不良な有馬であったかもしれませんねぇ。

 

まぁ、出走馬中最も有馬記念制覇という箔を必要としていたのはイクイノックスでしょう。凱旋門賞に浮気していた2頭に比べると、本気度が違ったかも。

エフフォーリアにしても「全盛期に戻す」ことが重要であったわけです。ヴェラアズールも「まずはG1を勝つぞ」というローテですね。

イクイノックスはここを勝たなければ最優秀3歳牡馬にすら届かない可能性がありましたからねぇ。王道ローテでダービーを奪取したドウデュースを凌ぐには、秋天制覇はイーブンの材料に過ぎません。ここで皐月賞馬と一緒にダービー馬も沈めていれば別であったでしょうが。

しかしタイトルホルダーを相手に有馬記念を制したことで、最優秀3歳牡馬はほぼ確定させました。それどころか年度代表馬にも手が届きます。

 

誰もが年度代表馬を目標に走っているわけではないにしても、ちょっとタイトルホルダーには驕りがあったのではないかと思わないでも。

春天と宝塚をあの内容で勝った馬ですから、春の段階でほぼほぼ年度代表馬は手中に収めていたはずです。まぁ、秋天とジャパンカップを同じ馬に取られたら困るなぁってくらいですかね。それがシャフリヤールだったらめちゃくちゃやばかった。(DSC・秋天・JCを同一年制覇はエグい)

凱旋門賞をガチで取りに行っても、有馬記念を勝てなくても、まぁ、消去法的にタイトルホルダーしかいないかな、みたいなね。イクイノックスの強さは他人事であったでしょう。

それが自分たちの敵、非常に明確な立ち位置にあるライバルなのだと理解できたのは秋天制覇から有馬へ来ると知ったときかな。「有馬を勝つとか以前に、ここでイクイノックスを負かさなきゃいけない」という。

究極的に、有馬で先着すれば年度代表馬は手に入ります。なんだったらイクイノックスとの共倒れすら考えていたかもしれません。少なくとも「タイトルホルダーのゾーンに引っ張り込む」とか、格好いい言い回しにして考えていたと思いますよ。

 

全ては当事者にしか分からないことですが、まぁ、タイトルホルダーは勝負できる状態なら有馬を走らない理由がなかったかなぁ。イクイノックスが秋天で満足して春に備えていたら、良い状態に戻っていないとかで有馬を回避しても良かったかな。

いや、イクイノックスもいない、タイトルホルダーもいない、そんな有馬は開催できんぞ!という話でもありましょう。骨折とかの切実な理由がない限りは走る必要があった。

そもそもタイトルホルダー自身の適性からしても有馬記念を積極的に走る理由はないのですよね。アスクビクターモアが逃げてくれるなら、まぁ、走ってもいいかなくらい。有馬のテクニカル中長距離はあんまり逃げたくないんじゃないかな。

逃げるにしても楽逃げ希望で、外枠からメイチでコーナーワーク込みで争うのは嫌だったでしょうね。だから欧州のスタミナは辛いんですよ。

 

イクイノックスも欧州スタミナですが、スッと収めてから外を回る競馬です。外回り的な部分を活かしやすかった。

ボルドグフーシュとジェラルディーナはスクリーンヒーロー×Alydarの有馬専用。馬場的に内を避ける面はあるにせよ、立ち回りやすくて勝負どころでの加速にも大きな不足がありません。

 

ただ、まぁ、ジェラルディーナはモーリス×ジェンティルドンナですから。

米仏融合で天下を取ったメジロの血筋と、英愛のスタミナを背景に北米スピードで駆け抜けた名牝。この配合は英愛仏米の合作というべきで、あえて言えばフランス的というべきでしょう。

この晩成とスタミナはモーリスとかディープとかじゃなくて、ステイゴールド的なものです。ボルドグフーシュ福永の仕掛けは「俺は元主戦だぞ」というジェラルディーナ潰しでもあり、彼女がまくりを主導していたらワンチャン1着あったかもしれません。

ジェラルディーナの在り方を思えばこの3着は強い内容。まくりの初動を潰されて、内へ潜り込んでの競馬でしたから。Cデムーロ騎手でなくては3着まで来れなかったとも思いますね。ああいう形で脚を使い尽くして来るのは本当に尋常じゃない。

しかし、そういう器用さもまたジェラルディーナというか、ジェンティルドンナの娘というか、そこがどうなのかという。

スクリーンヒーロー×Alydarな機動力は持っているでしょう。宝塚記念を最内からガーンっと差し込んだゴールドアクターが持っていた部分で、これはボルドグフーシュにも言えることですね。

「ニアリーステマ配合の牝馬だぞ」という言い分を通せるのかが難しく、大阪杯や宝塚記念でそれを考えたいと思います。

 

さて、年末です。来年のPOGを考えつつチャゲアス聴きますかねぇ。

 

[fin]