砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

ソールオリエンスの母系は果たして重いのか

前回のやつを少し簡単にまとめます。

 


これは5代血統表内の競争馬を主な勝鞍にあたるレースの距離により色分けしたものです。緑が2400m以上、黄色が1600m~2399m、赤色が1000m~1600m。この設定に特たる根拠はなく、これもまた「独断と偏見による」わけです。

説明しますと、色分けに関わるレースはG1勝ち馬ならばG1レースのみで、G2勝ち馬ならばG2のみで、というようにしています。ただしマイル戦においては黄色と赤色の両方に設定がありますので、マイルG1のみ勝っている様な馬はG2やG3の結果を参照して赤か黄を決めています。

グレード制導入以前については、導入時のグレードに添って判断しています。とはいえ、専門ではありませんので「独断と偏見による」の前置きが必須となります。Twitterに上げないのは、こうした説明を要するためです。

例を挙げますと「Hail to Reasonが赤ってどういうこと?」という話ですね。やはり専門ではないのでアレコレ言う事は難しいのですが、どうやら当時の北米2歳戦線はマイル未満が基本であるようです。(当時も現代も北米2歳路線は分からない)

Hail to Reasonは2歳牡馬のチャンピオンですが故障により引退しました。参照すべき戦績は全て2歳時のものでありますから、全てマイル未満となります。しかしHonest Pleasureなどのように2歳時にG1を勝利した馬が中距離チャンピオンとなる例もありますから、Hail to Reasonを赤とすることは誤解を生じさせやすい。

チャンピオンスプリンターであるサクラバクシンオーの赤と、マイル未満が基本となる2歳戦線のチャンピオンであるHail to Reasonの赤は違うのだ・・・なんて説明は沼でしかありません。芝とダートの違いすら放棄しているのに。

そういった良識を持って「独断と偏見による」という文言の意図を察することが出来る人物にしか見て欲しくないタイプの画像です。置くにしても、ある程度の説明を費やせる場所であるべきでしょう。

 

さて、これほど長く書いてしまうと画像の意味がありません。もう一度貼り付けておきます。

 

パッと見て理解出来てしまうのが、良いところでも悪いところでもあり・・・ですね。

ソールオリエンスの母スキアは欧州的に重苦しい血統であるのか?というのが本題であるわけですが、この画像においてはたしかに重苦しさを感じます。母かその父が北米系のスプリンターといった血統に比べれば、圧倒的に重苦しいというべきです。

こういった血統的な疑惑に関してはキタサンブラックが大先輩でありまして、菊花賞を勝つまでは距離適性に疑惑があり、種牡馬となってからはスピード不足を疑われていました。結果が出てみますと中長距離~長距離チャンピオンとして紛れはなく、種牡馬としては抽出可能なスピードを所有していました。いいとこ取りというべきでしょう。

「いいとこ取り」というのは、父母中距離配合のスプリンターであるサクラバクシンオーから先行力を受け継ぎつつ、その先行力≒スピードを産駒へ受け継がせている・・・あるいはそれをトリガーとして配合相手である繁殖牝馬から抽出することに成功している、ということですね。

逃げ先行の中長距離~長距離チャンピオンからしますと「それが出来れば苦労はしない」という類の話。中距離血統からスプリントを表現することの美点、その先にキタサンブラックが表現されています。例えばドレフォン×グランアレグリアの牝馬がシュガーハートのポジションに収まってもいいわけですよね。

 

それを踏まえてソールオリエンスの3代母Gleam of Lightを見てみましょう。

 

この画像から覚えておいて欲しいのは、母系にあるSouverainが緑であることです。NearcoやRibotと同じ緑です。フェデリコ・テシオ氏の傑作及び系譜、あるいは遺作というべきNearcoやRibotと同じ緑。

ということで次の画像です。

 

Gleam of Lightに関しては生産国とレース距離の相互関係が必須となります。デインヒルはイメージ通りの北米っぷり。それに対してGold Runnerは真っ黄っ黄です。

件のSouverainという馬は、当時のイギリス長距離戦線を荒らし回った数あるフランス馬のうちの1頭です。その際にフランス人は「イギリス競馬は短距離志向に過ぎるんじゃないの?(距離的スタミナ軽視しすぎだよ)」という批判を行ったとか。(wikipedia)

イギリス人はブラックジョークがお好きなので、こういうことになったのかな、って思います。Souverainをポツンと配置して、3代連続で英国スプリンターを種付けされています。壮大な皮肉です。(途中から愛国生産となるが)

そこから北米血統のデインヒルが加わり、4代連続のスプリンター配合となりました。つまり、ソールオリエンスの母スキアは「4分の3中距離~中長距離・4分の1偏執的スプリンター」というべき配合なのです。

 

それを踏まえてソールオリエンスの話へ戻りましょう。

今度はソールオリエンスの血統表を生産国で色分けされたものです。

いささかにファンキーなGleam of Lightですが、Quest For FameやMotivatorに対してそういった見方は出来ません。しかしプロフィールをよくよく調べて見ますと、ちょいとイメージと異なりました。

Quest For Fameは「最弱の英ダービー馬」の有力な候補であった馬で、晩年は北米の芝戦線を走りました。北米芝2000mでG1を勝利しており、BCターフでも3着の実績があります。その後は北米で種牡馬入りしました。

英ダービー馬にしては珍しく長い現役生活を送った馬で、決して最強格であったわけではありません。そのため英ダービー馬としては様々の「◯◯年ぶり」な記録を持っているようです。「英ダービー馬」のステレオタイプでは決してありませんね。(詳細は「世界の名馬列伝集」さんなどを参照されると良いかと思います)

Motivatorは有名な話ですかね。英国王室縁の血統となるかと思えば結果を出せずにイギリスから放出された悲しき英ダービー馬です。フランスで安い種馬となったもののトレヴの輩出で評価は一変。しかし以降が続かずに種付け料は元の水準へ戻ったとか。相当極まった一発屋ですが、日本競馬におけるBMSとしてはスキアとメーヴェで安定志向というべきでしょう。

 

 

まとめますと、スキアは言うほど重い血統構成をしておりません。メーヴェほど重くはなく、トレヴほど軽くもなく、ですね。トレヴは北米構成のフランス牝馬ですから、そりゃ素軽くて速い。

どちらかと言えばスキアはトレヴ寄りであると言えます。そこから更に分けると、トレヴはどちらかと言えばスノーフェアリー寄りのサドラーぶりであると言えまして、スキアはシーザリオ寄りかな。

しかしシーザリオ的な構造はあまり伝えませんから、末脚の爆発力は今一つ。であればこそディープやキタサンとの配合で成功しているとも言えて、シーザリオ的な素軽さを身に着けようというのがヴァンドギャルドとソールオリエンスの方向性となっています。

じったりと待つことは出来ますし、そこからの末脚もそこそこ。しかし先行力が足りません。先行力を持ってこようという動きがSpecial絡みのニアリーであり、末脚の強化を図るのがWild Risk絡みのニアリーですね。(大まかに言えば)

 

だから、スキアは重たいけれど、やりようはある繁殖牝馬でしょう。字面よりずっと素軽くて、末脚の爆発力を秘めていますよ。

あとは皐月賞予想で。

 

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