砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

宝塚記念出走馬を見る

もう配合も見慣れた馬ばかりで、パッと見た感じで買った方が当たる気もしている。

かといってそんな予想が楽しいはずもない。見慣れているのであれば、更に一層潜り込んで悩みのタネを引っ張り上げるのが血統予想の面白さだ。

アルバート

近年の日本には珍しいピュアステイヤー。12秒台で溜める脚がないってのが実にステイヤーらしく、確かにステイヤーというのは12秒ラップでロスなく脚を使えるってのが特徴である。

PrincequilloをKey to the Mintから引くばかりってのが特徴で、ストライドの小さいタイプではないが中山の小回りを上手にこなす。正しくNijinsky×Tom Foolのイメージであり、スタミナ任せに外からぶちかます競馬は妥協の色が濃い。

本来は好位から脚を展開するタイプで、小回りよりも外回りが得意。15年ステイヤーズSの様な立ち回りも出来るタイプなだけに、もう少し東京の長丁場で走る姿をみたい馬だ。

宝塚記念はさほど厳しいラップを刻むことがなく、馬場状態の悪いレース。13秒を刻むこともあるだけにアルバートにもチャンスはありそうだが、シュヴァルグランでさえ順応できなかったことを思えば厳しすぎるか。

キセキ

叔父にグレーターロンドンのある血統で、日経賞の行きっぷりは近親であることを再確認させられた。DanzigというかPrince Johnクロスはショウナンマイティがそうであったように気性が厳しい馬が多い。

軟さを伝える血統ってのは、基本、気性の荒さも伝えるものだ。そうでないとストライドを伸ばせず、血統として繁栄することなんて適わない。キセキはそういうストライドで走る馬で、重馬場でも真面目に走りきったことからも伺える。

ルーラーシップ×ディープインパクトということで実に晩成の色が濃いのだが、上記の気性から仕上がりそのものは早かったことだろう。ただ身体が出来上がるまでに時間を要したようで、ちょうどいま時期が心体のバランスが取れた状態だと思われる。

ミルコという乗り手はこの類の気性を手繰るのが得意で、菊花賞での騎乗はコパノリチャード高松宮記念を思わせる内容でもある。ここも重まで渋れば楽勝だろうが、週末には傘マークが今の所ついていない。

サイモンラムセス

母Roberto3×3で、本馬はHail to Reason4×5*5*6。一旦完全アウトとした方が具合は良いと思うが、なかなかそういった試みは見られない上に牡馬がなかなか出ない女腹。キングズベスト種の弟は未出走のままで、馬産というのは難しいもの。(NDクロスで非Hail to Reasonなんて種牡馬は結構多いと思うし、ダート血統ならば候補はいくらかあると思うのだが。)

母がPrincequilloを引かないだけにLady Rebeccaの影響を強く受ける形で芝を走る。意外にもダートの経験がなく、芝向きのフットワークとして完成しているのかもしれない。Wild Riskの影響が大きいのかな。

気性が完全にRobertoで、競りかけられるられるほどにファイトバックする馬だろう。競りかけてくるであろう馬の母父にはTiznowというRoberto殺しがあり、血統的な見どころの一つだ。

チェリーメドゥーサをやっちゃったら、捕まえられる馬はとっても限られる。阪神内回りの4角で外へぶっ飛びながら差し込める馬は・・・過去の例からしても決して多くない。

小牧太の楽しみってのはそれよ。3角過ぎてから「すわっ、やつを捕まえろ!」と焦らせる展開が一番美味しい。勝ち切るのは難しいけれど、そうなると3着確保の可能性が非常に高い。追いかけてくるのはジリ脚ばっかりで、Robertoを萎えさせる展開にはなりづらいのだ。

サトノクラウン

父母Flame of Taraが完全な異系血脈で、その分だけ能力は持続しただろうか。ジャパンカップの敗戦で見限ることも馬券として一つの手だろう。

キタサンブラックの引っ張る2400m戦での凡走は過去の敗戦のいずれにもない絶対的な敗退だ。凡走の条件が揃ったレースではあったがいくらなんでも負けすぎ。

しかし、だからこそここで見直すのも一つである。東京や中山でも敗戦、スローとなったDSCで負けてもそんなに気にすることはない。ジャパンカップレイデオロに競りかけておきながら、すぐさま突き放されている。あれは馬のやる気を失わせるに不足のない内容だ。

ただ昨年ほど馬場が荒れるということもないはずで、そうなると時計以前に展開が厳しくなる。ジャパンカップと同じ様に直線で突き放される様な展開も覚悟しなければならない。積極果敢の逃げがなければ今ひとつ走り切れない性質の馬だ。

ただ昨年のパフォーマンスは圧巻。オルフェーヴルディープインパクトといった歴史的名馬が相手であっても勝ちきっていたのかもしれない。

サトノダイヤモンド

大阪杯はある程度仕方のないものではあるが、金鯱賞の負け方はひどい。スローの瞬発戦ならば十分射程距離であり、サトノノブレスがいくら中京の達者といっても本馬も達者なのだから2着はもぎ取るべきだった。

元が早熟の配合であったし、その兆候は春天の段階でも見え隠れしている。悪い意味でHail to Reasonのスタミナがオンになったような状態で、京都4角を段違いの機動力で流れ込むあの姿はもう見られない。

また問題なのがHail to Reasonとしての本格化を支える血統を持たないことなのだわ。Burghclereは牝馬にならばそういう仕事をしてくれるのだけれども、牡馬にはしてくれやしない。スタミナがオンになっても力っぽさばかりが目立つ。

また宝塚記念はそこまで得意な条件でもなく、ベストは中山と京都の中長距離だろう。距離だけで言えば京都大賞典有馬記念、ベター条件はジャパンカップ。ここらを走って駄目ならばもう馬券を狙えるところはなさそう。

ステファノス

前走は大凡走だったが33秒1の上がりを使ったことを思えば展開が合わなかったと言うべき。調教のついでみたいなものだったろうし、度外視で良いだろう。態勢は整った。

2200mは対応可能で、オールカマーの様に先行することも出来るだろう。岩田を確保できたことであるし、ここは一発があってもいい。ただ配合からは2着3着が限界と見る。

Bold RulerTom Foolの小足で走るタイプだからねじ伏せる様に走ってはまずい。できれば先行から押し切るオールカマースタイルが良いのだけれど、好位からさばける様な気性でもない。

大阪杯キタサンブラックの2着となった展開はこれ以上ないもので、(事実上の)単独番手をとって外へ馬を置かず最後まで走りきれた。川田将雅らしい先行競馬であり、これを全く寄せ付けなかったキタサンブラックは強すぎる。

岩田ならばまくるだろう。2200mでまくる馬ともなるとこれより上手は多いか。これを上回る算段はつくが、目一杯ハマる必要がある。まさしく「一発」だ。

ストロングタイタン

DanzigによるNative Dancer過多配合。この配合がJRAのG3を勝ち切ったってのがもうDanzigの凄さを物語る。Buckpasserもすんごい。つまりDanehill最強。

本馬はDanehillを引かないのだが、やっていることはおおよそモズカッチャンと同じ。ズバッと切れやしないが、Danzig×Buckpasserとしての機動力が抜群。好位を取れるし、好位からズボッと抜けられる配合だろう。鳴尾記念の勝ち方通り。

ただ溜めが効かないという大きなメリット・デメリットがあって、阪神2200mは溜めの入りやすい条件。この距離延長を良いこととは思わない。

Danzigクロスであるが故の平坦巧者。阪神2000mがベストであり、次に京都2000mが来るか。雨の東京ならば2000mよりも1800mの方が良いかな。サトノアーサーとはいい勝負になる。

基本的にはTiznow競馬であるので前を行くRobertoってのは大好物。ロスなく立ち回ってからのジリ脚大戦争が期待される。ロマン馬券ならばこの2頭から入る一手だろう。

スマートレイアー

唯一無二とも言うべき「ウインドインハーヘアホワイトマズル2×2」の表現馬。四位のおっさんが起用されて嬉しいやら悲しいやらというこの春であったが、今週の四位は北海道で飲み歩く予定であるらしい。乗り替わりに松山弘平がイン。

立ち回りの出来る馬で、京都大賞典のイン突きは配合通り。逃げ先行も一つの手段ではあるが、内ラチ沿いからの捌きが本領だろう。武豊が育てた馬らしい傾向とも言える。図ったような差し切り・押し切りでなければ。

阪神2200mはベター条件の一つで、ここ2戦は度外視で良いだろう。けれどベターで勝負出来るほど甘い条件でもなく、スペシャリストがきっちりと納得の勝利を挙げるレースである。まして松山弘平テン乗りは適鞍ということでもない。

ゼーヴィント

同じディープインパクト×ブライアンズタイムでもディーマジェスティの方が段違いに褒めやすい配合。またディープインパクト×ブライアンズタイム×Pacific Princessという枠組みでも、父ディープブリランテのセダブリランテスがよっぽど上手。

つまり本馬の配合は大したものではなくて、G3勝ちがちょうどいいくらいだろう。G1にて大きく上昇する様な馬ではない。

この配合そのものはシルキーラグーンの後継なのだわ。誰が配合を決めたかは知らないけれども、後継繁殖を作るという目的として不足がない。

けれど競争馬として結果を出すには、ディープインパクトという選択は疑問。父ちゃんは非Native Dancerで構成したい。(無茶振り)

シーヴィーナスってのが好形の短距離配合であり、それを緩和するだけで一線級のスプリンターであるシルキーラグーンが出た。したら次にするべきことは緩和材料であるブライアンズタイムいじりだ。

ディープインパクト×ブライアンズタイムという配合は、既に表現されているブライアンズタイムの特性を効率的に運用する程度のことしか出来ない。緩和材料としてのソレへディープが出来ることは、少なくもないが多くもない。

これが父ブラックタイドなら全くイメージは違うのだけれど。


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