まくりってのはその状態作りが大切なのではないか。
元天才三浦皇成が巻き起こした大事件がある。
原因はよく分かっておらず、数々の有識者がいろんな説を出した。クルマの後輪が滑ったという喩え、馬が窮屈な状態にストレスを感じて外の馬を蹴った、内ラチにぶつかって外へ流れたなど。
わかっていることは中山の4角、それもダートコースにしては三浦皇成の馬はスピードに乗っていて、内にも外にもマージンというものがなかったことだ。
これに似た現象を北村宏司が引き起こしたのは記憶に新しい。決して良い記憶ではないが。
騎手としては4角でストライドロスは防ぎたいもので、北村宏司は特に東京4角をストライドもコースもロスせずに走りたがる。馬群の中に入れてなお外へプレッシャーをかけた結果の後藤浩輝落馬だった。
武豊や戸崎もこういうロスのない形を好むが彼らは狭い空間を作らないことに特筆すべきところがあって、また窮屈になってしまえば窮屈なりに仕事をする。VMの武豊スマートレイアーなんかは狭いところではあまり無理をせずに追わなかった。毎日王冠のエアソミュールもまたそうだろう。基本的に彼らは引き出しが多く、その場その場で最適な形で追ってくる。
ナタ切れストライドが身上のこの馬を内々で伸び伸びと走らせ4角ではノーリーズンアタックを仕掛けた。コースロスもストライドロスも最小限とした圧巻の騎乗である。「俺の馬券が崩れるとき、それはミルコがノーリーズンした時だけだっ!」とサトノクラウンとリアルスティールとキタサンブラックを買った俺は「ミルコやりやがったっ!」と叫んだ。サトノクラウンはどのみち無理だっただろうし、何よりノーリーズンを予想した俺は嬉しかった。これはこれで勝ちだと。
※ノーリーズン 15番人気で勝った皐月賞馬。内々追走から4角をスッと外へ開く騎乗が綺麗。
こういった風に小回りコースでスピードに乗せると外へ膨らむわけで、それはスパイラル式をとっているコースでは当たり前のこと。だから外に馬をつくらないことがまくりの最重要項目で、川田や武豊、浜中もほとんどの場合で外に馬がいない。
川田ラブリーデイもまたレッドデイヴィスの仕掛けに一呼吸遅らせることで、自身の機動力を武器にササッとまくる姿勢を作っている。
これによって自分より後ろの馬は差し追い込みの馬にまくられるから外へ流れられずに窮屈な形となった。ラブリーデイは外に誰もいない状態だからフワッと膨らむことも出来るし、あの状態になれば急いでまくらなくとも良い。元々が高度な機動馬だから馬なりにジワリとまくっても十分速いのである。
先行まくりに関して川田は本当に巧みに組み立てていて、もはや老獪とも言える戦術で状態づくりを行っている。いつも川田は最高の状態でまくれるから強いのだろう。にしてもこの駆け引きをせずに最初っからレッドデイヴィスに任せてガーッとまくっていたら・・・浜中デニムは届いていただろうか、それとも外に流れる馬が邪魔で差せなかっただろうか。そこらへんの捌き方が浜中はちょいと不安なんだよなぁ。
松山あたりを壁につかってまくっていけば小倉記念も面白そうだが・・・。メイショウナルトが本調子だった場合はこれを捕まえることがだいぶ難しいんだよなぁ。テン乗りの秋山がどのタイミングで仕掛けるかは分からないけれど、道中がスローだったら3角前から仕掛けることは考えられる。小倉における秋山の騎乗の色も調べなきゃならん。
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