砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

インブリードの深さ

最近はもうレースの予想よりも血統表を眺めて「へー」としている方が楽しくなっている。

なんかねぇ。名血だからこそ後世の残るわけで、後世に根強く残るほどに遠くクロスされるわけで、それが後世の名血同士で起こるからまた面白い。HamptonやTeddy、Cylleneがどのように伝わってどういう馬を出したのか、それらが回り回ってノーザンダンサーとかミスプロとかに至ったのか、そういうことを考えてると楽しい。

Cylleneの父とThe Tetrarchの母父は同じBona Vista

Cylleneはその子孫にMr.ProspectorNorthern DancerNasrullahなどを持つ。つまり現代競馬の父系をたどればほとんどはこの馬にたどり着くというレベルだ。この血はセントサイモンと寄り添う様に伝わっていて、St. Simon3*4の「奇跡の血量」を支えているのは大抵Hamptonかこの馬である。

WikipediaによればCyllene後継のPolymelusは現代を生きるサラブレッドの8割以上を子孫としているらしい。その配合形はSyllene×Hamptonであるからセントサイモンの強い血統を支えるためにあるようなもの。Native Dancerの祖であるSickleとNearcoの祖であるPharosは二頭ともSt.Simon3*4のクロスを抱えている。

また面白いのよな。この二頭は次世代のNearcoとUnbreakableでセントサイモンを更にクロスするわけだが、「4分の3セントサイモン、4分の1非セントサイモン」と「8分の1セントサイモン、8分の1非セントサイモンの組み合わせ×4」の配合形をそれぞれ取っている。

これらはNorthern Dancerクロスへの対処法と全く同じ。Nearcoのやり方はサンデーサイレンスの孫の世代が使う方法で、Unbreakableのやり方はモーリスと同じ。

そして現代競馬が直面する問題に対しての解決方法を歴史は提示してくれる。

Unbreakableが後継Polynesianで行ったことは「4分の3セントサイモン、4分の1非セントサイモン」で、非セントサイモンを担った母父Polymelianは偉大なるご先祖様Polymelusの直仔。上の通りPolymelusはCyllene×Hamptonで、セントサイモンの緊張に対する最強の武器である。

Nearcoはここで二手に別れる。Nasrullahは4分の1異系を取り、Nearcticは母に「8分の1セントサイモン、8分の1非セントサイモンの組み合わせ×4」を持ってきた。つまり、「16分の1セントサイモン、16分の1非セントサイモンの組み合わせ×7。加えて8分の1非セントサイモン」ということになる。もう何がなにやら。

なかなか収集がつかなくなってきているな。まぁ、何はともあれ、これらのCyllene父系がThe Tetrarchにたどり着くには随分と長い時間をかけている。それはそれぞれNorthern DancerMr. ProspectorNasrullahの代まで待たなければならない。

Nasrullahは1940年生まれでNorthern Dancerが1961年生まれ、Mr. Prospectorが1970年生まれである。そりゃミスプロナスルーラを経由してムムターズ・マハルを持ってくるわなぁ。

これらの馬というのはなんども書いた「CylleneとHampton」によってセントサイモンを緩和して来た奴らで、ここまでの道中で必ずこの組み合わせを「緊張と緩和のリズム」においてクロスしているのだわ。ネアルコ×ハイペリオンとかもそう。

セントサイモンとシリーン、ハンプトン。これらの組み合わせを上手くごちゃまぜにしたのがニアークティックポリネシアンだ。しかしナスルーラだけがそのごちゃ混ぜを回避している。果たしてこれはメリットなのかデメリットなのか。

まぁ、最終的にはセントサイモン地獄に落とされるわけだが・・・。

この微妙な血統的な余裕が「ナスキロ」という組み合わせを可能としたと言っても過言ではない。むしろナスルーラが完成(=ノーザンダンサーミスプロに肩を並べるレベルに達する)のはこの「NasrullahPrincequillo」の組み合わせを待たなければならない、ということでもあるのかもしれない。

なんだかんだで父系を伸ばしているのは甥っ子のロイヤルチャージャーなのである。カスタマイズの幅は主流血脈でもナンバーワンではあるのだが・・・。

「4分の3と4分の1」が絶対正義ではない、という話でありました。

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