砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

音無調教師 アンビシャス論

ミラクルアドマイヤのカンパニー、母グレースアドマイヤリンカーン&ヴィクトリー兄弟らを見ての通りにバレークイーンと馴染みの深い調教師だ。

アイルランド血統のトニービン持ちや欧州で一大勢力を誇るサドラーズウェルズ持ちと好相性。現役時代もスタミナのあるタイプと手があった様で、オークス2着のユウミロクオークス1着のノアノハコブネらで重賞勝ちを得た。ノアノハコブネは後方に控えた競馬での勝利。騎手としても折り合いをつけさせてからの末脚勝負に一家言あったのだろう。

その色を調教師になっても強く出していて、大阪杯へ出走予定のアンビシャスには折り合い難を調教するコメントをアナウンス。それなら折り合いの上手い騎手を起用すればいいものを若い騎手や中堅騎手への依頼がトップクラスのトレーナーにしては多い。

特に所属の松若君をかわいがっていて人気にも乗せている。それでも2歳3歳の1勝馬への騎乗は非常に少ない。若く完成の目処が立っていない馬に癖をつけられるのを嫌っているのかもしれない。そのあたりの境界をしっかりつけた調教師だろう。

一貫性がありすぎるきらいもある。総称金額トップスリーのカンパニー、リンカーンオウケンブルースリなどはそれで結果を出したわけだがいくらなんでも極めが早過ぎる。3歳秋くらいには目処をつけるから晩成の靭やかな馬を育てられない。

上位陣を見てもFair Trial(と米血統)でビュンッと加速する馬か、欧州由来のしぶとい血統でドンドコドンドコ走る馬かの二つしかいないのだ。ナスキロクロスの芝中距離馬はヒストリカルディープインパクトクラフティワイフで母父ノーザンテースト)、リアファル(母クリソプレーズがエルコン✕Riverman)、アンビシャス(ディープ✕エルコン)などが「総賞金上位」。ここ最近のことである。

それもエルコンを経由したりカンパニーの弟だったりと決して靭やかな馬ではなく、Seattle SlewSecretariatなどのボルキロを使うパターンがほとんどで、仮に入ったとしてもRivermanだ。ミッキーアイルRiverman

上記のようなFair Trial✕米血(War AdmiralやWar Relic、Roman)でガーッと行く馬が本当に多い。ナスキロやボルキロのクロスが入ってもロードカナロアエイシンブルズアイ的に米血統で突進してしまう。

アンビシャス✕デニムアンドルビー 

アンビシャスとデニムアンドルビーの相似性については前回触れたが「ディープ✕Kingmambo✕ND&Special✕Sharpen Up」までが同じ。アンビシャスの母母カルニオラはTudor Minstrel5✕6*5だから血統的な回転力はアンビシャスが上手だろうが牡馬のPretty Polly弄り&Wild Riskクロスである分スタミナはあるはず。

だから後々は阪神大賞典ゴールドシップの2着と息を吐いたデニムアンドルビーの様に中長距離馬として完成することも見据えられる。・・・のだけれど音無調教師がそれをするかどうか。

今レースにおいて面白いのはブラックタイドサクラバクシンオーキタサンブラックディープインパクトエルコンドルパサーのアンビシャス、この二頭の比較かもしれない。経過は全く違うのに結果的には距離適性は似通い、前脚の前方可動はキタサンブラックが上手なくらいでアンビシャスのほうがピッチで走るというのは面白い。

キズナから端を発し、ディープインパクト産駒とは短足気味の馬体を非常に柔らかく動かすものだ。立ち姿は映えないがストライドを目一杯伸ばす姿が非常に映えるという点がディープインパクト産駒最大の特徴である。

ブラックタイド産駒はもとより黒い馬体を引き継ぐために立ち姿が映える。長い距離にアドバンテージがあるのでキタサンブラックのように脚長で腹回りのスッキリした中長距離馬だと特に格好良い。ただ横綱相撲より立ち回ってからの粘り腰で勝ちを拾う種牡馬だから馬体に似合わずいぶし銀な競馬になる。だから靭やかには動いても柔らかくは動かない。

だのにアンビシャスよりキタサンブラックの方が柔らかく動くんだ。これはアンビシャスがディープインパクト産駒としてどこか高いレベルに到達した証でもあるんだが・・・でも本格化してなお靭やかに動くのはブラックタイド産駒ってのがイメージと全く異なる。

ディープ産駒は父が強く伝えるHalo≒Sir Ivorの緩慢とすら言えるスピードをどうにかしなきゃならない。それゆえに母親は常に頑強であり、本格化のエネルギーを頑強≒スタミナな血統から手繰り寄せなければならない。下手こけば米血統の硬質によってHalo≒Sir Ivorスピードが死ぬしさ。実に塩梅が難しい。

ブラックタイドはHalo≒Sir Ivorが縁の下にいるから母ちゃんからスピードを補完してもいいわけよな。そのバラエティは豊かだ。キタサンブラックの様にサクラバクシンオーからスピードを補い、サクラバクシンオーに対するニックスを使ってTourbillonの靭やかさで走るという選択も出来るのだ。(と言ってもキタサンブラックの配合は素晴らしすぎる。)

ディープインパクトのスピードを支えたBurghclereのスタミナは強烈過ぎるわな。母がDanzigクロスのマイネルフロストや母父Danzigテイエムイナズマが芝1800mのオープンや重賞を勝つというのは化物過ぎる。ブラックタイドはサンデー系随一のスタミナ血統として生き続けることだろう。母系に入ってもHalo≒Sir Ivorのスピードを刺激してやれば中距離馬を出せるだろうし、自前のスタミナで支えた母系のスピードを刺激してやれば短距離馬も輩出できるはず。

サンデーサイレンスウインドインハーヘアの配合は偉大だなぁ・・・ということで

[fin]