砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

朝日杯FS展望

阪神1600mで争われる2歳牡馬の王者を決める一戦だが、ホープフルSがG1へ昇格した今となってはやや存在が薄くなっている。

中山時代はトリッキーなレイアウト故にスペシャリストが台頭していた。阪神外1600mとなったことでクラシックへの直結が見込まれたが、実際のところはコース替わりから4年間の間にクラシック勝ち馬が出ていない。

ステルヴィオ(マイルCS)・ケイアイノーテック(NHKマイルC)・エアスピネル(マイル重賞2勝とマイルCS2着)・クラリティスカイ(NHKマイルC)・ダノンプラチナ(富士S)などマイル重賞勝ちがメイン。マイル以外ではスプリント重賞勝ちなどもいるが、2000m級での重賞勝ち馬は昨年の覇者ダノンプレミアムのみだ。全体的に短距離傾向と言っていい。

 

育成と調教の勝利

「じわじわ伸びて最後に差し切る」という勝ち馬はおらず、どれも騎手の指示にグッと反応を示して交わしに行く。

壁の前でしっかりと折り合える、あるいは折り合わせられる状態が好ましい。壁を使わない馬は勝ち負けの一線で劣りがちで、それはダノンファンタジーとクロノジェネシスにも言えることかと。

かといって直線半ばまで壁を使うわけにもいかない。G1級と2勝級(ともすれば1勝級)が混在するレースである。4角の段階で壁を退けて、前の開けた状態で600mの負荷をかける必要がある。

2歳という時期にこれほど完成された競馬をさせるのは並大抵のことでなく、社台系列の馬を選んでおいて損がない。育成・調教・実戦の全てで圧倒する集団である。

 

ところがどっこいグランアレグリア

新馬戦では阪神JF勝ち馬を相手に圧勝。Swapsの影響が強い女帝を登坂後にもう一度突き放すという大パフォーマンスだった。

どこをどうひん曲げてもグランアレグリアの格は疑いようがない。ないが、ちょっと荒削りではある。

育成や調教に問題がある様なものではなくて、単純に素質がそういうものなのだろう。Aloeを累代したディープ産駒にはよくある表現だ。

馬群の内に入れると競馬になりづらいので、外を通る競馬が目立つ。壁を作らないでもないが、落としても良いレースというものがなかったので実戦で試すわけにもいかなかったかもしれない。本質は外だ。

今までの勝ち馬には見られない壁なしの勝負となるだろう。それで勝ちきれるかどうか。

 

先手のアドマイヤマーズ

ダイワメジャー産駒にはHaloニアリーが多く見られる。

その役割とはおおよそ「非Blue Larkspur血脈の導入」で、Drone・Sir Ivor・Red Godなどが該当する。

もう少し違う言い方をすると「非Blue Larkspurかつ非Flambetteによるパワー」が標的である。サンデーサイレンスとノーザンテーストの緊張に触れない類の強靭を、Haloという切り口から求めている。

だもんで、ダイワメジャーにHaloクロスを入れるとダイワメジャーの持つパワーがオンとなりやすい。わりと鈍足傾向の馬が出る。

代わりと言ってはなんだけれども、ダイワメジャーに全く関わりのない要素を取り込むことも可能である様子だ。

本馬の母ヴィアメディチはかなり秀逸な相似配合で、その母母SalvinaxiaはLyphard直系らしく非Blue Larkspur。このSalvinaxia→スカーレットブーケの「非Blue Larkspurの累代」に表現があるようで、アドマイヤマーズはLyphard的に二の足が速い。

ダイワメジャー産駒はゲートも二の足も平凡で、けれど一番奥まで競り合える。本馬はすぐに逃げを確定できる脚があり、あんまり父の産駒らしくない。そこがなんとも東京巧者らしくないところだ。

おそらくベスト条件は阪神1600m。すぐさまスローへ誘導できる強みがあり、ともすれば桜花賞のレッツゴードンキに似たことも出来る。

この馬の世界で勝負する限りは崩れることがないだろう。

 

非社台の壁づくり

ファンタジストは距離延長の1400mを制して重賞2勝。終始外を通った小倉2歳Sに対して、京王杯2歳Sでは残り400mまで壁を利しての競馬だった。

ストレイトガールやレッツゴードンキと同じ廣崎氏の所有馬で、またオーナーブリードである様子。一時期からWar Relic-In Reality好きとなったらしく、本馬もロードカナロアを介してその血を持っている。

1200mから1600mへの距離延長に実績がある馬主だ。内で詰まることも承知の戦術であるから、騎手もかなりの覚悟を持って突いてくる。(函館SSでのストレイトガールどん詰まりは閉口しただろうが)

今回もとにかく壁を作って距離延長に対抗してくるだろうし、間隙を突くには人気勢の競馬が噛み合わなさすぎてちょうどいい。

スローに落としたいアドマイヤマーズに対して、スローを積極的に潰せるグランアレグリア。ベストパフォまでが遠い世界に走る二頭ならば、なんとかかんとか交わせなくはない。(アレグリアが逃げハマりしたら厳しい)

一番のポイントは人気勢において最も登坂を得意としていることだ。Danehill×Robertoの母系は登坂でこそ光る。残り300mまで壁にあって、その上で射程距離の内に相手を捉えていられたならば、それが光ることもあるだろう。

壁に使えるとありがたいのはアドマイヤマーズ。ニホンピロヘンソンの番手、内ラチ沿いを走るこの馬を壁にしていれば、自然とヴィクトリーロードが開ける。出足はLyphardでも終いはダイワメ的なのでロードカナロア×ディープインパクトの配合馬には食べごろだ。

とにかく内にグランアレグリアが入って、外にズラーッと先行馬が入る枠が欲しい。そしてグランアレグリアの隣に本馬が、と。「へい彼女、包まれるのは嫌なのかい?」と積極的に包まれに行くファンタジスト。

阪神1600mで悠長な壁づくりが許されるとしたら。「人気の大外ぶん回しでペースが上がって残り200mでは完全な消耗戦となる」ってのが一番楽しいパターンかと思う。例年通りのペースではまるで機会を得られない。

 

[fin]