・アエロリット
前受けを可能とする素敵なクロフネ牝馬。クロフネは牝馬に対してブルーエヴェニューを伝えるだけに気性が難しい産駒が出る。ホエールキャプチャの様に気持ちの問題がために調子を落とすことも多い。
性別に関わらずズブいのが特徴的であるが、カレンチャンやスリープレスナイト、セイコーライコウなどを見ての通り基本的なスピードに劣る種牡馬ではない。Icecapade×Robertoという非瞬発の配合がために末脚へ転換されることがないためにズブいだけで、スピードを持続させる術は持つ。
Hyperion系のスピードを積むことでそれは作用しやすい。本馬はKrisやNureyevが入るので基礎スピードに優れた配合と言えるだろう。
隠し味として優秀なのは母が「Hyperion×Nasurullah」をKris・Nureyev・Alydarで共通させていることで、この遠回しな「Hyperion×Nasurullah」はクロフネのClassic Perfectionにも繋がる。これによる靭やかさがマイル~中距離での底力となっている点は見逃せない。
だが秋華賞という舞台は基礎スピードで乗り切るにはやや不適切である。阪神内二千や札幌千八~二千といった平坦基礎スピードで押し切れる舞台ならともかく、京都内二千とはもう少し斬れっぽく踏破すべきレイアウトである。8分の1サンデーという弱点を露呈させる可能性は高い。
・ラビットラン
父のNijinskyクロスに対してDixieland Bandを使ったのことは評価される。Bull Lea×Blue Larkspurという観点では継続であるが、主軸とされるのはLady Angela≒Alibhaiという配合であるから。
しかし中距離×中距離の本格派の配合であるのはローズSぶった斬りとドンピシャ過ぎる。デンコウアンジュやデニムアンドルビーのぶった斬りと被る展開だ。小回り二千はハマるだろうが、京都二千は果たして。
またIn Reality由来のスタミナは牡馬の方が有効であり、Crafty Prospectorやリアルシャダイの種牡馬成績を見ての通り。TapitがベルモントS種牡馬になっているのはこの傾向のためかと思う。このスタミナ&パワー(≒頑強)は牡馬に対して春天や菊花賞向きに発現するが、牝馬に対しては頑強な斬れを伝えやすい。
その点で二千はちょいと長いのかもしれない。前走は良い意味で北米的な馬場と展開だったし、この馬の本質は日本の芝に適わないと思うのだ。
この馬が外差し一辺倒なのは母母父ミラーズメイトがMill Reef×Vaguely Nobleというスタミナ配合であるためで、Mill Reef×中長距離大物の配合形は馬群嫌い&スタミナを伝えやすい。
突破口があるとすればSadler's Wells×Shirley HeightsのWells Fargoであり、これを基点としたFair Trialな気性を展開しているのであれば、武豊の外差しに対して「ズブいから壁を作らずにトップスピードを乗せている」という考え方が出来る。サドラーのSpecial弄りはズブくも鋭く抜けるタイプを輩出するので。
個人的に「4分の3ND」の繁殖へ対する「4分の1サンデー、4分の3ND」は評価したくない。キングカメハメハの様に一本のNDが7代へ遠のく形なら別であるが、5×6*5*5ほどの緊張は何処かに矛盾を抱えてしまう。ましてやMill Reefクロスなわけであり、これくらいの濃度で継続をするのであれば周辺血統は多角的であるべき。
どうも本馬はG1勝ちクラスの配合に見えない。無理を通した好走級ではないかと。
・ディアドラ
ハービンジャー×スペシャルウィークの通りに重たい動き。ハービンジャーもスペシャルウィークもBuckpasser&Aureoleの観点から効率と持続に特化したところがあり、それが重なるとやはりこういった馬になってしまう。
そもそもからしてソニンクがそういったタイプの繁殖である。Kingmamboに近い配合ではあるが、Northern Dancerに対してBlue Larkspur過多のMachiavellianというのは割りとスタミナ的な組わせで、母系のProud ChieftainやBustedといったスタミナ血脈もそれへ加担する。Kingmamboは母方のスタミナに対してMr. Prospector×Nureyevという速さを重ねた配合だが、ソニンクはNureyevのスピードに頼んでスタミナを重ねた配合と言えるだろう。
スペシャルウィークはBuckpasser×Princequilloらしい靭やかで持続的に動いた馬だが、血統としてはやや力っぽい。スペ自身が力っぽいというよりも、スペが相手の力っぽさを表現しやすくて、またそれで成功したというべきかな。「パワーを背景として靭やかに動くぞ!」という中距離~中長距離馬によくある。
また代が遠のいてこれが成功したのはレディーシラオキが「Donatello&Udaipur&Harina=プリメロ」というTHEスタミナのBlandfordを4分の4で抱えているのが大きな要因。Harina=プリメロに至っては3×3という濃度であり、スペ直仔においてはこれが8分の1を担当する。Aureole絡みのスタミナとしては特筆ものであり、主張が強すぎる血統だろう。
ということで本馬の母ライツェントは「Halo×NDを軸としてBlandfordスタミナを取り入れた」という観点で父母相似を取る。そして本馬自身はAureoleを父母間クロスしているので、そのあたりの傾向を受け継いでいるというべきだ。
それでも靭やかにジワジワと伸びるのはBuckpasser的というよりもCrepelloがNureyevへ流れ込んでいるからで、父母間Crepelloクロスのハービンジャーをソニンクへ取り入れたという観点ではロジユニとやっていることが近い。(Krisの母父がCrepello)
もうちょっと言えばアドマイヤリードと同じ質の斬れであり、大きくも鋭くもないアクションで33秒台の上がりを記録することが似通っている。HTB賞は3歳牝馬と思えない圧巻の勝ちっぷりであり、ディープには辛い馬場だったとは言え良血ディープを抑えて勝ちきったのは流石。
ただここ2戦はハマり過ぎだ。まくって並びかけて競り落とす、という。秋華賞はそのたぐいのレースになったとしても、内か外か、一気の脚で突っ込んでくる馬がいる。
・ファンディーナ
CozzeneにA.P. Indyを母系に持つディープ牝馬にしては大柄で、累代を思えば「Nasrullah×Princequillo」を寄り代にパワーを本格化させたと言うべきだろう。
この類の頑強をまとめるのに定評がある・・・というのもSpecialの素晴らしさで、例えばディープブリランテなんがそうだが、Crepelloで処理したSpecialというのはごっつい馬体を靭やかに躍動させることに優れている。
しかし本格化しつつある本馬はややその傾向が強い。前走の526kgは行き過ぎとしても今回も520kg前後で出走してくるだろう。これほどの馬格を牝馬の中距離戦で躍動させることをディープとNureyevに託していいものかは。
実際、持続戦でドンドコするのが得意なはずなのにローズSでは手応えなく沈んでしまっている。この負け方はエピファネイアでもイスラボニータでもなく、やる気なく沈んでいったアンビシャスに似ている。Fair Trialの難しい気性が表現されていて、瞬間的な斬れに秀でているくせに追いつけなくなってしまったら自ずと沈むタイプ。ゴールドシップ型とも。
皐月賞もローズSも4F的な斬れを求めたレースであり、こういった長い脚で差し込めるタイプではないのだろう。
ただローズSの負け方はちょいと深刻かもしれず、以前コメントで指摘されたことだが、気持ちが上向いていない様子が見て取れる。「あ、ダメだわー」となった時のテンションダウンがスランプ馬のそれ。高野岩田コンビの負荷が強い環境で気持ちを悪くしてしまったかな?
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