初めての有馬記念は13年、衝撃のオルフェーヴルだった。
当時の血統知識は「NijinskyにFlambetteあるじゃん!」くらいなもの。あれから5年、積み重ねた知識量はそこそこのもんだと自負している。
それをもうそろそろ処理しなくてはならない時期が来ているから、ここいらで一発当てておきたい。話はシンプルにしよう。
Q1,勝ち馬候補はなんだろう
有馬記念を制する馬は大きく分けて7パターン。
1,Ribotスタミナタイプ。菊花賞を制した3歳馬がそのまま戴冠することも多い。マンハッタンカフェなど該当多数。
2,ノーザンテースト×Princely Giftタイプ。向正面からの長いスパートが特徴。母父バクシンオーのキタサンブラックもこれに含める。
3,Lyphardタイプ。瞬間の爆発力によって差し凌ぐ。ハーツクライ・ディープインパクト・ジェンティルドンナなど。
4,Haloタイプ。4角の機動力とHyperion的な速さを以って華麗に勝ち切る。ヴィクトワールピサを代表としてハーツクライやサトノダイヤモンドも少し該当。
5,Buckpasserタイプ。登坂後に一気の猛追を届かせる。ゼンノロブロイとサトノダイヤモンドが該当。
6,Robertoタイプ。まくりと抜け出しに強さがある。ナリタブライアン・マヤノトップガン・シンボリクリスエス・ゴールドシップ・グラスワンダー・ゴールドアクター。
7,Wild Riskタイプ。気性的な俊敏性から豪腕の勝ちがある。ディープインパクト・キタサンブラック・テイエムオペラオー・マヤノトップガン・オルフェーヴルなど。
このままだと出走馬全てが該当するので補足を行う。
1,Ribotスタミナタイプ。Princequilloとの関わりから平坦適性を取り出したい。菊花賞勝ちは特注であるが京都大賞典でも良い。(シルクジャスティス)
2,ノーザンテースト×Princely Giftタイプ。最強馬クラスかステマ配合の成功パターンのみ。ショウナンパンドラでは厳しかったと考える。
3,Lyphardタイプ。展開と名手の助けが最低条件。本当の意味で該当するのはハーツクライとジェンティルドンナのみで、非常に例外的なパターン。
4,Haloタイプ。仏血統や英血統による異系を必ず要する。展開を問わないが有馬記念ガチ勢には抗いがたい。
5,Buckpasserタイプ。スペシャルウィークとその産駒ブエナビスタからして、追い込み勢は除外対象。
6,Robertoタイプ。現代の有馬記念においては先行抜け出しのみ。ゴールドシップやグラスワンダーに見られるぶん回しは論外である。2500m超の実績持ちのみが勝ち切り。
7,Wild Riskタイプ。ジェンティルドンナもこれに該当する。古馬三冠・牝馬三冠・クラシック三冠といった格が欲しい。例外は少頭数スロー逃げのマヤノトップガン田原成貴。
ということで勝ち馬候補は以下の通りである。
クリンチャー 条件1に該当
パフォーマプロミス 条件1・条件6に該当
サトノダイヤモンド 条件1・条件3・条件5に該当
キセキ 条件1に該当
主観に過ぎないので、参考とする方は判断ユアセルフ。なので更に補足を行う。
Q2,なぜキタサンブラックは二度も敗れたのか。
3歳時に3着、4歳時に2着、5歳時に1着。好走を繰り返してラストランにて有馬記念勝ちの栄冠を得た最強馬キタサンブラックのこと。
敗れた理由はいくつかある。まずLyphardタイプにあたらないこと。条件を狭めすぎるのもどうかと思って「Lyphardタイプ」としたが、実際は「ビューパーダンス=リファーズスペシャルタイプ」が正しい。この血による好位先行の中距離馬が正しい条件であるから、キタサンブラックは除外対象だ。
一番大きな理由は晩成のノーザンテースト×Princely Giftであったことだろう。早い段階においてはクロスされた血統が表現のメインを張るもので、ステマ配合がまさしくそれ。3歳時のオルフェとゴルシはゴールデンサッシュで制した。
しかしゴールドシップは6歳時にメジロマックイーンとして本格化して春天を制したし、オルフェーヴルも5歳時のラストランに見せたパフォはメジロマックイーンの影響がありあり。機動力としての俊敏性は鳴りを潜めて、中長距離馬としてのスタミナ化が甚だしかった。ドリームジャーニーもそのたぐいと見ていいだろう。
キタサンブラックも5歳春まではLyphardとして走っていたと考えられる。これはオーシャンブルーなどに見られるLyphardぶりと言えるので惜敗の内容にも納得。5歳秋に母父のサクラバクシンオーとして本格化していて、それは3歳時のオルフェやゴルシに近似した表現であったと。
いずれ母父ハーツクライが「好位先行の中距離ビューパーダンス」として有馬を制することもある。と、いう話さ。
Q3,Specialはなぜ不調であるか
キンカメ産駒が有馬記念を勝てていないのはTwitterでも呟いたが、もう少し踏み込むと、Special持ち全体が低迷している。勝ち馬はテイエムオペラオーのみであるから、最強馬でなくては勝てない。
有馬記念を理解するのに適当な教科書血統の一つがこのSpecialで、ステイゴールドと対をなす存在だ。この2血統は最強馬でしか有馬を勝てない。
大きな違いとしてあるのは、最強馬しか輩出しないニックスである「ステマ」をステゴが持っていたことだ。これは有馬記念に強い適性を示した配合で、ドリームジャーニーくらいの格でも勝ち切れた。(といってもG1をすでに二つ勝っていた)
Specialは多くの経由を持つ。そういったニックスを掴んでも不思議はないのだが、実際問題として現代日本のSpecialは2400mからの壁が高い。ルーラーシップやシュヴァルグランにとっても高い壁だ。
この理由のほとんどは「サンデー×Special」による速さに証明されるが、ルーラーシップが日経賞を取りこぼすなどの厳しさがある。非サンデーでも勝てないし、その勝てなかったレースがG2だ。ネコパンチの逃げ切りは仕方がないとしても、ウインバリアシオンに差される内容は、厳しい。
それだけに一流のSpecialはヒモとして大変優秀。勝てないのだからヒモ安定という悲しみを帯びた血統。
平成最後・・・というフレーズは聞き飽きたが、これを覆すのも悪くはない結末だ。平成最後のエリ女をハーツクライ産駒が勝ったのだし。
Q4,「ノーザンテースト×Princely Gift」はどのような表現であるか
ステイゴールド産駒の重賞勝ちレベルは「登りでアドバンテージを握られる」が最低条件で、マイネルミラノの函館記念やゴールドシップの宝塚記念・春天が教科書だ。
「一流のPrincely Giftは登ることを躊躇わない」ってなもんで、京都や中山のように「登り詰めた直後に下り始める」のレイアウトが得意。「下りながらペースアップする」のでは間に合わないので、「登りながらペースアップする」の前準備が得意分野であると。
ゴールドシップは「登坂を利した追い抜きによってRoberto気性をスイッチオンとする」なんて離れ業をしていて、春天では3角前の二段登坂目掛けてスパートしている。「登りでペースダウンして、下りの利にてスパートする。」という日本競馬において、天才かつアホの表現。
更に有馬記念においては「アホの世界に引きずり込む」ことが求められる。「そんな競馬知りません」とライバルたちに言わせるのがステイゴールドたちの一歩目で、ステマ勢はそれを容易くやってのけた。
だが馬場改修後の有馬は先行勢までたどり着けない。ジェンティルドンナはステマ世界を二度も回避した珍しい存在である。(ジャパンカップと有馬記念)
ゴールドシップの引退によってステマワールドは滅したかと思われたが、ゲート直後から世界を展開するチートキャラが登場したのがクライマックス。それこそがキタサンブラック(5歳秋)である。
登りも下りも関係なしにペースを刻む嫌味な逃げ馬だった。決定的だったのは「下りスパートから登りへ突っ込」んだ秋天である。出遅れによって想像された惨事は「ノーザンテースト×Princely Gift」としての本格化によって回避された。
あれこそが有馬記念勝ち馬の条件である
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