砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

何故ブラックタイド産駒が高速で粘って見せるのか

典型的なブラックタイド産駒とは

・道悪でゴリゴリする

→ディープと違ってダートでの実績もある。

→ただし、ディープ嵐猫やディープエルコンは道悪でヌルヌル抜け出してくる

・前受け必須

→末脚を使ってどうこうという馬はいない

→ディープは末脚を使う傾向

・身のこなしが硬い

→その分俊敏であるということはない

→内回りでまくるタイプも多い

・アベレージがイマイチ

→ガチンコG1クラスはキタサンブラックのみ

これはディープという前例を元に配合しているパターンが尽く失敗しているからで、逆に力っぽい配合がそこそこ走ってしまう。「したらどうしたら上手く行くんだ」って状態でブラックタイドの配合はどん詰まり。

そんな中でようやく出たぞ成功例・・・と思えば、そのキタサンブラックはトントン拍子に現役最強の座を手にしてしまった。最強馬ドゥラメンテの頓挫も手伝ってはいるが、これがいたとしても怪しかったのはジャパンカップくらい。大阪杯を制し、更に宝塚記念も勝っちまって、そのまんまの勢いで秋天をも制して古馬路線春秋完全制覇の偉業へ突き進むかどうか。夢の広がる馬だ。

ブラックタイドPrincequilloディープスカイほどではないにしてもかなり硬い性質であるから、これに触れないことがまず一つ。これに触れた配合馬は大抵の場合でゴリゴリする。これはDanzigなどをLyphardへ被せるのが成功パターンであるからで、こういった配合からPrincequilloを引いても靭やかにはなりづらい。Danzig×Princequilloは北米ダートの名配合である。

その中においてチーフベアハートを使ったブラックオニキスは褒められるべきであろうし、岡田の馬において狙うべきニックスかと思う。

なのでLyphardLyphardのままに処理してしまうべきであろう。DanzigやNureyevによるLyphard弄りはどうしてもダートパワーが混じりがち。ディープインパクトLyphardクロスにはこれらの助けが必要なのであるが、これはディープインパクトが異様な靭やかさを産駒に伝えるからこその処理だ。ディープはむしろダートパワーを積極的に取り入れるべきである。取り入れ過ぎてなお芝で切れてみせるのがディープだ。

Lyphardをそのまま処理するということはブラックタイドからの路線変更を許さないことを意味する。相似配合的な手法を求めるわけであって、そこからブラックタイドを加工していくという考え方がベター。その中における考え方はなかなか厳しいものである。

まず、働きを失った「4分の1Princequillo」には触れがたい。やるならば「4分の2Princequillo」の繁殖を引っ張ってくるべきであろうが、ディープの方がいい結果は出るかと。全兄弟クロスを将来に見越すのであればやるべきこととは思う。

したらPrincequilloは棚にしまっておくとして、どこから靭やかさを持ってくるか。そりゃ当然Wishing WellとBurghclereからしかない。HaloとAlzaoは望み薄なのだから。

基本は相似とするわけだが相似配合と言うほど近い代でクロスを入れやしない。Lyphardクロスを根幹としつつも、ブラックタイドとは全くの別路線でとっても淡い相似を取る。これは4×4以上のクロスを組み込んだ配合における基本中の基本である。

キタサンブラックの場合はChop Chopに対してRomaがニアリーであるが、6×7*6の淡さにとどめている。そもそもがうっすらとしたニアリークロスであるのだからこれは効能を見せない。他にRoyal Chager≒Nasrullahなどがあって、これもやはり表へ出ない類のもの。直接のクロスはLyphardひいてはNorthern Dancerくらいしか近い代には見られないのだからすごい。

してWishing WellやBurghclereに関してはまずWild Riskが大きいクロス。7×7に留まる強いインブリードではないにしても、ここの共通点を持つのはBurghclereにとって大きい話。だがこれでも足りない。

究極的に・・・Burghclereを靭やかに動かすためにはSon-in-Lawを靭やかにしなければならないのである。それはおおよそドイツ的なやり口であるから、ドイツ的な血統によってそれは成される。ここでサクラユタカオーの意義が見えてくるわけだ。

サクラユタカオーの父テスコボーイの偉大なる親戚と言えば甥っ子のSurumuである。また母父ネヴァービートがNever Say Die×Big Gameであり、この2血統はドイツ血統によく見られる。Never Say Dieの6代母Skysraperは2代母がIlluminataで2代父がHampton、4分の2がLadasと同血の間柄。Big GameはHyperionと親戚のBahram(Friar's Daughter産駒)×Tetratemaの配合。なおPrincely Giftもわりかしドイツ血統に見られる。

言ってみればサクラユタカオー自身はかなりドイツ的な配合馬であり、トウショウボーイがフランス的な斬れと相性良く育ちトウショウ系の名馬を多く輩出し、またその果てにウオッカがあるのもそれが理由と言える。

だがドイツ的と言えどもサクラユタカオーは日本で産まれ日本で育った血統である。ドイツってのは速さを見ればパワーをつぎ込み、パワーを見ればスタミナ化しようとする競馬であるから、速さを見てより速くへ傾倒させた日本競馬とは一線を画する。手先の強さなど不必要とばかりにストライドを伸ばさせようとする文化だ。

そのような競争の中でサクラバクシンオーは産まれ、現代までその血を繋いだ。疾く疾くと望まれたこの変態は頑強で靭やかなスプリントを強く遺伝させる。古今東西にこの様な速さを紡いだ血統はDominoくらいなものかと思われ、もしも日本がスプリント文化に盛んであれば重用されたことだろう。

このスプリントはサクラユタカオーの回転とノーザンテーストの短距離体型が引き起こしたものだ。なのでノーザンテーストの影響さえ払拭してしまえば良い。それだけで靭やかな速さだけが抽出される。これはステイゴールドオルフェーヴルから考えて仏英愛のスタミナによって解決されることだろう。

だがそれは限りなく非Ribotで非Princequilloなやり口であり、それはとってもRibotPrincequilloな方法なのである。これらを通さないPapyrusによって解決されるわけであるから。正確にはOsirisからって話になるのかな。

この血統はVictoria ParkとVice Regentから通したパターンしか見たことがない。つまりVictoriana経由オンリーという話であって、かなりレアリティの高い血統だと今までの記憶を遡って思う。うん、多分、そう。あとダイアモンドジュビリーもこの血統でしか見たことがない。

Northern Dancerに対してTraceryなアプローチをかけることは珍しくないし、ノーザンテーストの様なアホなことをしている血統であれば当然の処理だ。しかしHyperion的な頑強を強めるほどにTracery的な靭やかさを重ねて行かねばならず、いずれはPrincequilloへたどり着く。なのでいずれはTraceryをPapyrusから脱却させなければ脱Princequilloとはならない。

それについては次回。

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