雨が降らないとこんなもんですか
長距離戦でありますから内追走の馬が断然有利、というのは春天でも重要なことでした。
フェノーメノもホッコーブレーヴも内で溜めてから直線で外へ持ちだした。
初っ端から外外を行っていたのはウインバリアシオンくらいで、これはガチな馬でした。
あとキズナ。
今回の菊花賞も同様。とは思えるんだけど3着以下を突き放した内容は強かったねぇ。
でも内枠から溜められていたらワンアンドオンリーも同じことが出来たとは思うよ。
スペの牡馬はパワーに向きすぎて走らない、というのが定説でありまして
エピファネイアの母であるシーザリオやブエナビスタなど、代表産駒は牝馬に偏る。
しかし全く出さないというわけでもない。リーチザクラウンがいる。
こいつが菊花賞を5着で、スペシャルウィークが全く菊花賞へ向かない、ということはないのだ。
「それでもやっぱりスペシャルウィークで外回り京都?」というイメージがあった。
現代でスペシャルウィークがG1を勝つ?いやいや7年位遅くないかな、と。
勝っちゃったよねぇ。
サウンズオブアースは「サンデー系+ディキシーランドバンド+ホイストザフラッグ」の配合で、
父ダンスインザダークのデルタブルースと似た配合であるから長距離に向く可能性はある。
それが栗山求先生の予想でありました。「ははぁ、なるほど」と。
今年は3分1秒フラットの決着で・・・つまりレコード決着。
ソングオブウインドの3分2秒7を大きく更新しての勝利でありました。
3000mはつまり15ハロンで、1ハロン12秒のペースで走り続けたことになりますか。
今年の春天は12秒2のアベレージであるから延長分などなどを含めればほぼ同ペースと見ていいでしょう。
今年の春天は13秒でペースを刻まなかった珍しい展開で、ほぼ緩まずに推移しました。
(と言えども12秒9を3ハロン連続ラップ)
対して今年の菊花賞は最遅ラップが初っ端の13秒を除けば1400-1600m間の12秒5。
めっちゃくちゃ速いんです。昨年のジャパンカップなんて12秒8を刻んでいるんだぜ!4回も!
全く緩まないのだから内追走の馬へのメリットって蓄積するばかり。
そして・・・こうなってしまえば差し脚は残らない。ダラダラと坂下りの惰性で突っ込むだけ。
このペースで外を追走して差し脚を残せるのは本職の長距離馬ですよ。
だから同じように下っていく先行馬を捉えきれない・・・。
つまり如何に距離ロスを減らすか、ってのが焦点。
「お前!なんでそのスムーズさをダイワマッジョーレで・・・!!!!」
と憤るほどに完璧な最内一気を見せたのがサウンズオブアース、蛯名正義。
4角でザクッと内へ進路を定めた瞬間は「あ、これ来たわ」と思ったものだが
前を交わしたトーホウジャッカルが全くもって止まらない。
あの脚色はまるでサウンズオブアースに格の違いを見せつけるが如く。
でも馬場の違いもあったんだろうね。差がない状態で直線に向いたら外が有利だったのでしょう。
京都の直線を惰性でダラーと下っていけば馬場の良し悪しで1馬身差が出てしまうのかも。
馬場を言えばワンアンドオンリーは外に膨れすぎた。
そもそもあの位置から京都で弾けられる脚は持たない。あるなら皐月賞で連対できたでしょう。
トゥザワールドも切れる脚がないから前受けしなきゃならないのにあの位置では・・・。
でもペースも速かったし外枠だったし、やりようはなかったですよね。
タガノグランパが想像よりずっと頑張ってくれて「よし、これもまた・・・よし!」と。
でもピンク帽のサトノアラジンにひどいことしすぎ。浜中立ち上がってたじゃん。
あれがなかったら3着まであったかもしれなかったからなぁ。ちょっとあれは。
やっぱり内馬場有利=内枠有利という結果だったのでしょうか。
マイネルフロストみたいな間隙突きしか出来ない子脚のある馬がトーセンスターダムに先着しているんだもん。
トーセンスターダムは下ってなんぼだからああいう競馬になるのも仕方がないのかな。
前に行きたかったけど内枠で先行集団はほとんど埋まっちまっていた。
むしろ先行のチャンスがあったのは外枠の馬、というのもまた面白い。
というか実況の人が1分1秒を平均ペースとか言ってて面白かった。
「そういえば菊花賞はここから落ち着くからこれで平均だよなぁ」
「その割に全く止まらんなぁ」
「もう手綱動かし始めてる奴いるじゃん。」
「おいおい、これから登るのに大丈夫かよ」
「あー、下っちゃった。横山追わないのか。ペース速かったんだなぁ」
「でもこの体制では・・・」
「サウンズオブアースキタ━(゚∀゚)━!」
「いけいけいけ・・・止まらん。トーホウジャッカル止まらん」
「伸びる伸びる伸びる伸びる・・・止まらん・・・」
「おぉぉぉー」(感動)
実況「レコードです」
「やっぱりなぁ。速かったもん」
実況「3分1秒」
「え・・・」
「ちょ、ちょっ待てよ!」
「それって・・・」
12.2-11.7-11.7-11.6-11.6
2000m~3000m間のラップ。
あの流れでも止まらねぇのか。サングラスの脱落を思えば勝ち馬は5ハロンに渡って11秒台を刻んでいる可能性すら・・・。
この底知れなさってのは確かに神戸新聞杯に通じる結果でしょう。
登りで失速して12秒に落ち込むのが阪神ですが京都はそのまんま11秒で突っ込んでくる。
だからラップの性格としてはほぼ同一と見ていいはず。
あれの結果を希釈したような終い3ハロンになったと俺は解釈いたしまして、
最後に伸びていたのはトーホウジャッカルだったし、食い下がっていたのはサウンズオブアースだった。
だからこそ同じ内枠で勝負を出来ていたのならばワンアンドオンリーが絶対に勝っていたとも思う。
だけどG1馬、ダービー馬というのはここから勝たなきゃならないのだって話なんですよねぇ。
本当に強い馬たち、ディープインパクトにオルフェーヴル、テイエムオペラオーは不利を乗り越えて圧倒してきたわけで。
でも今回の不利は仕方ないわ。これらの馬と比べるのは極論。
そりゃ今回の菊花賞でもディープインパクトは大外まわってグーンと突っ込んできたでしょう。
テイエムオペラオー(全盛期)なら先行かましてざっくりとねじ伏せたでしょう。
でもオルフェーヴルはどうだったろうか。
このハイペース京都の菊花賞をねじ伏せるだけのものがあったかなぁ・・・。
単純に適性の問題としてね。
とりあえずワンアンドオンリーの脚質からして4角でねじ伏せられなかった時点でアウトでしたよね。
外枠から菊花賞を展開するならそれしかなかったでしょう。
結果論を言えば先行策がベストではあったけども・・・。
ペースが速いから折り合いもつけられただろうし。
でもトゥザワールドを飛び越して先行するにはリスクがありすぎた。
ゲート出が良いわけじゃないし、かといって出ムチ使って突っ込むには先行争いが短すぎる。
行き脚がついたころには隊列が整っているから手の打ちようが全くない。
せめてトゥザが2番3番手まで冒険すれば話は違ったのだろうけど・・・
それはワンアンドオンリーに利することであるし。
菊花賞は怖いな。みんな人気馬を殺すことばかり考えている。
でもG1はそれがあるからこそ面白いんだよね。
さぁ秋天ですよ。
最も層の厚い2000mで行われる栄誉ある天皇賞ですよ。
条件戦レベルではディープの庭になっていますが上位条件はまるで違う。
スタミナ、スピード、決め手。これらが高度にまとまって・・・その上で飛び抜けたものがなければならない。
今年の人気陣は皆東京的にまとまった素晴らしいオールラウンダーばかりで阿鼻叫喚です。
ジェンティルドンナをディスりながら今年を過ごしてきた、と俺は自負しておりますが
ここに至っては・・・どうでしょうねぇ。
オルフェと叩き合ったジャパンカップは伊達じゃない。
この馬場、この展開ならばジェンティルドンナは強いでしょう。
[追記]
そういや「長距離は騎手で買え」なんて常識じみたものがありましたよね。
今年は「とりあえず前に行っちゃえ」という若手~中堅のアグレッシヴさが全てだったなぁ。
酒井学34歳、蛯名正義45歳、吉田隼人30歳、菱田裕二22歳、吉田豊39歳、浜中俊25歳、柴田大知37歳・・・
しかし最も老獪な競馬をしたのが浜中という面白さ。
ピンク帽のサトノアラジンを無理矢理内に沈めて進出していく・・・というね。
でも9番人気だからこその所業であります。
「とりあえず最内に!」というアグレッシヴさもまた一つでした。
武豊なんて最内に沈めてから3角前に引っこ抜いて大外からまくりに動いてるからねっ!
外から行った馬の中では最も速い脚を使っている。
前が崩れていれば最先着にはなりましたね。
ハイペースが原因で前崩れが起きていれば、起きていれば・・・武豊伝説色褪せず、と。
確かに前が徹底的に崩れても仕方がないペースだった。栗山求ブログによれば世界レコードらしいからね。
それだけ京都馬場が高速であった、と。
確かに京都大賞典も雨の割に随分と速いペースだったし、秋華賞もレコードだ。
ファビラスラフインのレコードを1秒1も縮めるほどの。
菊花賞もレコード決着になったのは当然と思える。
しかしそれでも・・・3週目だよ。3歳馬が踏破するにはあまりにも厳しいペースだ。
やはりアグレッシヴ。積極性が大切だったのだな。
[fin]