砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

適性だけで直線一気 桜花賞展望

正義の配合形で勝ち切れるわけではない、とは思う。


ディープインパクト自身はハイインロー配合で、血統をそのまま考えるとブラックタイドの形に出るのが正しいらしい。それなのにディープインパクトは柔らかさを伝える。だけどブラックタイド的なところで硬さを補完しやすい配合形でもある。このバランス感覚が桜花賞向きなのだね。ディープ産駒は桜花賞の近道ではある。だけど他の種牡馬が遠回りの果てにそこへ辿り着いている可能性があるはずだ。

今回はクイーンズリングを考える。

桜花賞の歴史において最も勝ちに近かったマンハッタンカフェ産駒と言えばレッドディザイア。母父はCaerleon。ライバルだったブエナビスタと母父が同じであったのは非常に面白い共通点だったね。父父サンデーも同じであったから半分が同血。(「だった」とかいっても6年前は競馬をやってない)

ただし、レッドディザイアブエナビスタと同じように「格」で突っ込んできたタイプ。秋華賞ブエナビスタを破ったり、ジャパンカップで3着したり、アメリカの芝中距離で好成績を収めたり。基本的には中距離馬だった。

だけどクイーンズリングはどうなのだろう。フィリーズレビューは格で突っ込んできただけだ。マンカフェの1400m~1600m馬ならば母父にDanzigを置くくらいの意気込みが必要。DanzigLyphardを3*5で持っているから阪神内回りを走る下地くらいはあるのだろうが、それでもナスキロラトロのRivermanをクロスを母が持つのだから基本的には外回り馬だ。Rivermanはジワジワと切れる血統なので決して内回りに優れているわけでもなく・・・そこはほら。ルメールだから、と。(ルメール✕ Mデム◯)

マンカフェ産駒のG1勝ちはフェブラリーステークスグレープブランデー)、天皇賞春(ヒルノダムール)、秋華賞レッドディザイア)、NHKマイルCジョーカプチーノ)。ダート芝問わず、長短問わず。共通点は東京と京都というところだけ。

次に重賞勝ちを見てみると・・・フィリーズレビュークイーンズリング)、きさらぎ賞ルージュバック)、函館記念ラブイズブーシェ)、函館スプリント(ガルボ)、東海Sグレープブランデー)、札幌記念フミノイマージン)、ダービー卿CTガルボ)、大阪杯ショウナンマイティ)、東京新聞杯ガルボ)、愛知杯フミノイマージン)、マーメイドSフミノイマージン)、福島牝馬Sフミノイマージン)、大阪杯ヒルノダムール)、フラワーC(トレンドハンター)、シルクロードSジョーカプチーノ)、愛知杯セラフィックロンプ)、府中牝馬Sテイエムオーロラ)、ラジオNIKKEI賞アロマカフェ)、京都新聞杯ゲシュタルト)、共同通信杯ハンソデバンド)、シンザン記念ガルボ)、神戸新聞杯イコピコ)、札幌2歳Sサンディエゴシチー)、京都新聞杯(ベストメンバー)、ファルコンSジョーカプチーノ)、オーシャンSアーバニティ)、シンザン記念アントニオバローズ)、愛知杯セラフィックロンプ)、福島記念マンハッタンスカイ)、京都新聞杯メイショウクオリア)、フローラSレッドアゲート)、札幌2歳Sオリエンタルロック)。

32勝の内19勝が平坦だ。残り14勝の内4勝が東京、6勝が阪神、2勝が中山。残り1勝が中京ダート。新中京芝では重賞をまだ勝ってないのだね。

そしてスプリント勝ちはガルボジョーカプチーノだけ。やはり基本的には中距離馬を出す種牡馬で、マイル以下の距離に強い適性を持つわけではなさそうだ。スプリント勝ちにしても1分8秒台の決着で、強いスプリント能力で勝ち切っているわけではない。

芝の外回りではG1を含めて・・・15勝。残り19勝は内回りになる。これは面白い話だねぇ。基本的には柔らかい種牡馬なのに内回りや小回りの方が成績が良いのか。しかしその19勝から内外両方共勝っているガルボジョーカプチーノヒルノダムールの勝ち鞍を削ると14勝になる。これは桜花賞オークスを2着したレッドディザイア安田記念2着のショウナンマイティの勝ち鞍を除いていないものだ。更に言えば秋天4着のラブイズブーシェとか外回り巧者と思われるクイーンズリングとか、そこら辺も除いていない。

つまりマンハッタンカフェというのは「非力だけど伸び伸びとストライドを伸ばして外回りをバキューンとする馬」を作らないのだ。きっちりと力強く、じっくりと堅実に伸びる外回り馬や内回り馬を作る。境界線上をウロウロする種牡馬なのだね。それだけに距離適性もウロウロ出来る。力っぽくするのも非力にするのも自由自在なのだ。それこそショウナンマイティの伸び方が俺にとっては象徴的だ。良馬場安田をすんごい勢いで突っ込んでくるくせに、ドロンコ安田でもじっくりと堅実に伸びてきた。あれがマンハッタンカフェなのだね。

ただ、その上で重賞を勝てるタイプというのは限られる。阪神での勝ち鞍が微妙に多いように、芝の重さに対してアドバンテージを握ることが多い。ダートG1勝ちを出したように手先の強さは折り紙つきで、洋芝への適性が非常に高い。それに加えて京都新聞杯を3勝している。京都新聞杯は持続力勝負となりやすいレースであるからスタミナを求められる。これもまたマンハッタンカフェのキャラクターだろう。

それらを踏まえてクイーンズリングの血統表を見てみると・・・

3代母のBlue Riverが相似配合。それに重ねられるBeringもまた少し相似配合気味。Beringの持つPrince Bioのクロスを継続する形で2代母のシーリングはSicambreのクロスとなり、全体的に・・・うん。やはり相似配合となるわけだね。そして1代母のアクアリングが強烈な相似配合となる。RivermanNorthern Dancerのクロス、Aureoleハイハットのニアリー。相似に相似を重ねられているから非常に濃ゆい配合だ。

それにマンハッタンカフェで、5代内に父母間のクロスはない。ないのだが・・・水面下ではさりげな~くニアリーが入っていたりする。Admiral's Voyage≒Summer Tan5*6とか。後はPrince JohnやTuder Minstrel、Romanなんかもクロスしている。Danzig×LyphardでLady Joror増幅のTuder Minstrelクロスとかワクワクするな。それに加えてRiver ManクロスのPrine John継続だからマンハッタンカフェらしい内外兼用気味の実直なストライダーに出そうだ。

Prince Johnの継続にはショウナンマイティがある。といってもコイツはAllegedさえもをクロスしているがね。他に共通点はCraFty Admiral=Gallant Foxの全兄弟クロスを持つことだろうか。あとSomething Royal持ちとか。

ん?Allegedのクロスに似たことをクイーンズリングはやってるかもしれんねぇ。

Allegedをクロスすることで強烈な突進力を誇るTom Rolfeも一緒に増幅するわけだが・・・。RomanとPrincequilloは継続しているし、SickleやBlandfordも継続している。Pocahontasを綺麗に継続の対象としているよ。コレ。

そんでAlleged自身はWar Admiral3*4とPrincequillo3*5だろ?War AdmiralDanzigでクロスしているし、Rivermanの中でWar Admiralの父であるMan o'Warを継続しているわけだよ。というかRivermanはPrice John×Roman×Sun Teddy×Man o'Warだからこれが綺麗にAllegedへ継続されているわけだね。

母のアクアリングの視点で言えばでRivermanをまるごとクロスすることでMan o'Warが継続が図られている。そして母父Anabaaの時点でDanzig×Rivermanの形でMan o'Warの増幅がされているのだね。そしてDanzigの持つMan o'Warの後継であるWar AdmiralがそのままAllegedへ脈絡していく、と。

これだけの増幅が行われつつも5代血統表は綺麗なまんま。これは美しい。惚れるわ。

もうちょい考えるとAlmahmoudの継続もあるよね。Beringが3*5で持っていて、それが母父のDanzigへまた継続。そしてまたサンデーサイレンスへ継続されていくわけだ。

このAlmahmoudがMahmoud×Peace Chance×Chicle。やってることはつまりMahmoudの増幅。NasrullahHyperionの共存を図る綺麗な血統とも言える。

先んじてそれをやっているのがLaw Societyで、3代母がBahram≒Mahmoudの4分の3兄弟クロスを2*2。そこからHyperionBold Ruler系と重ね、Allegedの持つDetermineがAlibhai×Mahmoudなので揺り戻しが起こる。

これを父に迎えたサトルチェンジの母父がLucianoで、この父祖をたどればTuder Minstrel。これがLady Jororを牝祖とするHyperion系なのでDetermineほどではないにしても少しの増幅が起こる。その上にサンデーサイレンス。父祖はRoyal Chager。Nasrullahとは4分の3が同血の叔父と甥の関係になる。そしてサンデー自身がMahmoud4*5なので継続のクロスだ。

つまりマンハッタンカフェはMahmoudを基礎に据えてちょいちょいHyperionNasrullah≒Royal Chargerを重ねていて、それをひたすらに重ねていった配合とも言える(大概のサンデー直仔がそうだが)。そしてそこにアクアリングが累代で重ねてきたAlmahmoudクロスがやってくるからやはり継続クロス。

アクアリングのAlmahmoudはノーザンダンサー的なんだよね。でもマンカフェのもアクアのも平たく言えばネアルコハイペリオンなわけよ。そう豪語してやまないのがAlmahmoudとかいう凄腕銀行マン。これによってNasrullahHyperionノーザンダンサーも華麗に共存してしまう。それが実直な切れ方に繋がっていると思うのよねぇ。

こうして見るとマンハッタンカフェの産駒は相似的なところが多い。ルージュバックも相似配合らしいじゃない?だから強い産駒は強いけれど大物をコンスタントに出せる種牡馬ではないのだね。相似配合で増幅してきた繁殖じゃなけりゃならん。

結局クイーンズリングってのは実直に伸びるショウナンマイティみたいなイメージで、一瞬の化け物みたいな脚はないにしても、外回りでは脚の使いどころに困るタイプではないと思うのだ。

マイティの弱点はやはりその速さ。現役最強の速さを使うために犠牲になっているものが多いのだね。その靭やかで力強い馬体はスタート直後はさっぱり反応しない(笑)。その上、このヘタクソな競馬しか出来ない馬は気性まで荒いのだから・・・笑うしかない。クイーンズリングはその速さを持たない代わりに競馬の巧さは・・・まぁそこそこある。ヘタクソと罵られるほどではない。

だけど仮にショウナンマイティみたいな馬に阪神マイルを走らせたら最強だと思うよ。桜花賞はそういった愚直な競馬がハマる。ブエナだってヘタクソな競馬で勝っちゃたもんなぁ。中距離馬だからヘタクソにならざるを得なかったという事情はあるけども。

その若干の器用さがどう結果へ繋がるか、というのはモチジュン先生がブログで仰るとおりに今年の桜花賞に不可欠な一つの要素だろう。その器用さを使うのは人間、騎手だから騎手買いも一つの考え方だよねぇ。「外国人買っときゃいいんだよ!」というのは今年に限ればディープ買いよりも信ぴょう性は高そうだ。

愚直なるルージュバックを防ぐのは器用さ。しかしこのタフな阪神マイルでは小手先の技など通用はしない。やれることが少ないのであれば「ちょっとの器用さ」と「j実直な直線一気」を持つクイーンズリングで決まってもいいのではないか。

[fin]