さて次はクロコスミアについて。
ステイゴールド×ボストンハーバー×Nashwan×Sadler's Wells×Ahonoora。親族にはCape Crossがいる名牝系。
母父ボストンハーバーと言えば父サクラバクシンオーのベルカント、父ハーツクライのマジェスティハーツ、父ゼンノロブロイのブリッジクライム、父デュランダルのカリバーン、父Cozzeneのエーシンハーバーなど。少しBold Ruler的にスルスルと軽やかに動く。
Seattle Slewに切れを依存すると重心が高くてスルスルと動く馬に出やすい・・・というのはエルコンドルパサーを見ての通りか。全身運動は中距離馬の理屈で、芝のSeattle Slewは長い距離で旨味があるからそんなものだろう。
しかし本馬の切れはステイゴールド牝馬という立場に依存していて、それをPretty Polly弄り+ノーザンテースト≒Vice Regentが支える。自身がまずPretty Pollyの牝系であって、しかもそれはAhonooraを伴ったもの。KraironはMy BabuやAmbiorix、そしてTurn-toと同牝系のスプリンターだからステイゴールド黄金配合の条件を満たしている。
しかもCape Crossを輩出する牝系なので経由は上等。そこにSadler's Wellsで中距離のTourbillonを補完。して、その上がディープと同牝系であるNashwan。こちらがHyperionとFair TrialのPretty Pollyだから長距離のスタミナではなく持続力のスタミナ、それもFair Trialの俊敏な動きを表現できる配合形。Nashwanの父がBlushing GroomだからSpecialとも脈絡する「NasrullahとFair TrialとHyperion」の組み合わせだ。
母父ボストンハーバーがマイラーなのでNashwanの強い持続力は距離の長さに影響しないだろう。Danzig配合論で書いたように短距離血統に強いスタミナを抱えることは大きなメリットで、それをNashwanとSadler's Wellsで脈絡するとなれば欧州の血統では最高のスタミナだろう。
更に言うと・・・理屈は分からないがステイゴールドってラトロ弄りをやっておくと良いんだよね。La TroienneはBull Dog=Sir Gallahad兄弟に見劣らないTeddyの伝道者で、ノーザンテーストの米血を弄る時に便利なのかも。ダイワメジャーもラトロを弄るでしょ。
クロコスミアはHyperionまみれのステイゴールドで切れる牝馬に出て、ストライドも大して伸びないピッチも大して速くない。けれどどんな位置からでもソコソコの脚を使って入線まで脚が鈍らないThe Hyperionな馬になった。
圧巻のパフォーマンスは札幌2歳S。9月初頭に行われる2歳限定の札幌1800m重賞は非常に厳しい展開となる。基本的に牡馬しか来ないレースなのだがここ数年はなかなかに牝馬が頑張っている。今年はクロコスミアが3着、昨年のレッツゴードンキが3着、一昨年がマイネグレヴィルとレッドリヴェール、次が10年のアヴェンチュラとアドマイヤセプター。秋華賞馬とドゥラメンテの全姉。その次が06年のイクスキューズ。ボストンハーバー産駒。
意外と牝馬は来てるな。出世レースだけあってメンツも上々だし。
ま、ボストンハーバーとCape Cros半姉とRed GodのスピードをRunaway Bride×Height of Fashion×Sadler's Wellsのスタミナで支えるのだ。ステイゴールドの配合としても上々である。
ここは勝ち負けではないか・・・と思うのだが。勝浦正樹にそれだけの期待をしていいものか・・・。でもある程度の位置から34秒の脚を使えばいいレースであって、それはHyperionの領域だと思うのだわ。
母父アドマイヤコジーン達より配合は断然上だろう。あちらはPrincely Giftクロスの緩慢さをどうにかしなければ始まらないが、こちらは元々が硬質な分だけ今が旬である可能性は否めない。レッドリヴェールと同じだ。
競走馬としての旬と狙い目としての旬は微妙に違っていて、Nashwanが関わるとそれが顕著になる。Hyperionを強く使ったPretty Pollyは硬質になりすぎるきらいがあり、時にそれは先行力を阻害するレベルになることも多い。ワンペースを究極まで突き詰めた先には俊敏性がないのだわなぁ。
これはレッドリヴェールやワールドエースが辿って道でもあって、33秒前半でビュッと俊敏に動けないから使えるレースがなくなってしまう。この二頭のベストは淀みなく流れる中距離戦で、切れる脚を使わずに押し切るレースが好みだ。
バゴ産駒のように極端な硬質化スタミナ化はしないだろうが、若き柔軟性とHyperionの硬質性が綺麗に噛み合う時期は非常に短い。クロコスミアはこれからの牝馬三冠路線でも強豪に数えられる馬なのだろうが、本格化を果たした後に馬券に絡められるかは怪しい。
メジロマックイーンの偉大さはHyperionもFair TrialもPretty PollyもBlandfordも、全部絡めて全部本格化の手助けをして全部役立ててしまってもなおTourbillon由来の靭やかさを伝えることにある。この靭やかさは異系故に色あせない。
クロコスミア唯一の可能性はAhonooraとDjeddahなのだが・・・Sadler's Wells的に本格化したらジャパンカップで弾けるしか道がないぜ。なんとかして共通点であるDjebelを使って本格化して欲しいもんだが。
ディープのBurghclere弄り牡馬がどんどん硬質化していく中でラストインパクトとキズナ、そしてトーセンラーとスピルバーグらだけが一定の靭やかさを持ち得た。これはMy BabuやDjeddahの影響だろう。ステゴよりもディープにこそTourbillonは有効であるはずで、それはLyphardの靭やかさを刺激できるからなのだ。特にTurn-toスピードの伝道師たるディープ様にはMy Babuは効果抜群でしょ。
もしクロコスミアにSir Gaylordがあれば・・・。Turn-to経由のナスキロがあれば話は違ったのに。それなら間違いなく牝馬三冠レース全てで本命に出来るHyperion娘になっていたのに・・・。
ちなみに母母父Nashwanのモチジュン先生ご愛好ホエールキャプチャ姉さんはMy BabuクロスにNever Bend、Ambiorixを持つ。My Babuの経由はDamascusとパーソロン。クロペリオン配合の影にはTourbillonがいた。
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