モチジュン先生はジェイドロバリーやヘクタープロテクターに対してかなり冷淡で、KingmamboやOur Emblemでニアリーをかまさないと絶対に褒めない。けれどその理由を掘り下げて説明したこともないのも事実。だがヘクプロ持ちやジェイドロバリー持ちがニアリーなしにG1を勝ったこともないから結果が全てでもある。
そこでダンツプリウスVSアストラエンブレムを考えるにあたり、ヘクタープロテクターが一つの切り口になりやしないかと思った。
少し掘り下げてみて思ったのがDjebelクロスの有効性だ。Korveyaが「4分の3Djebel、4分の1異系」となっているのだが、異系の担当がRiver Ladyというのはいかがなものか。Prince John✕Romanという濃厚さだ。
Tourbillonの血はLyphardとの好相性を代表として欧州血統との組み合わせが吉である。ディープインパクト産駒の傾向を見てもそれは明らかだし、ジュエラーの配合を見てもそうである。ハイインローとの相性が格段に良い。
Rivermanもハイインローとの相性が良い。トレヴやウオッカなどを見れば一目瞭然。
ではTourbillonの極端なクロスとRivermanが共存した名馬があったかを考えなければならないが・・・Klairon≒My Babu2*3のダンディルートを持つウオッカがそれにあたるかなぁ。
またこれの母父ルションがRiverman✕Marshua's Dancerの形で、Marshua's DancerはRaise a Native✕NashuaだからMr. Prospectorと4分の3が同血。つまりヘクタープロテクターと限りなく血統構成が似ている。ルションからウオッカが出てヘクプロからウオッカ級が生まれない理由はなんなのだ・・・。
名血度を言えばヘクタープロテクターは段違いに高い。それでどうこう言われるのだから名血統が喧嘩しているという風に考えたほうがいいのだろう。では喧嘩の理由はなんだ。
やはりBlue Larkspurを切り口にしてみたい。この血を中心としたニアリークロスがいくつか見られる。
Sequence≒Not Afraid4*5 Count FleetとBlue Larkspurが共通
By Jimminy≒Blade of Time5*6 Sickle=PharamondとBlue Larkspurが共通。
Buckpasser≒Highland Fling3*5 PharamondとBlue LarkspurとMan o' Warが共通
Be Faithful≒Businesslike La TroienneとBlue Larkspurが共通
ニアリーというほどニアリーしているかは怪しいのだがね。
このあたりの硬さをいかに処理しているかが鍵となる。The Tetrarch(Nasrullah)的に処理するのかTourbillon(Djebel)的に処理するのかだ。ここらへんは一貫性が欲しいところなのだが両方やっているのがいけないのだろうなぁ。
ヘクタープロテクターの4分の3兄弟にはシャンハイがあって、これは同じ父父Mr. ProspectorだがNever Bendクロスが発生する。その産駒からはジャパンダートダービー勝ち馬のオリオンザサンクスが出ていて、これがRiverman3*3のクロスがはいった配合。
同牝系のRivermanクロスにはカリフォルニアメモリーという香港馬がいる。Highest Honor✕スピニングザワールド✕Mr. Prospector✕Konafaという配合形だ。
あとヘクプロの全妹にBosra Shamという最優秀3歳牝馬がいる。Wikiを見ると「20世紀の10代牝馬」「1990年代最高の英国牝馬」とされ、ミエスクやオールアロングに次ぐ評価を受けているのだとか。オールアロングはその血を継いだ馬が山ほど日本にいるけれど、重賞勝ち馬は出ていないな。
Bosra Shamの仔はA.P. Indy産駒のRosbergがいるくらいで、これも重賞を一つ勝ったくらいにとどまる。やはりヘクプロは良くない配合であるのかな。
父Woodmanはティンバーカントリーなどを輩出したミスプロ系の有力な枝葉で、日本でもかなり馴染みの深い血統。母父として強い活力を伝える種牡馬でもありエイシンデピュティやアストンマーチャンなどを出している。
ただ他の産駒を見てもNever BendというよりBold Rulerが似合う様子で、Bold RulerというよりND系の有力な枝葉が似合う。よくよく考えたらNever Bend✕Buckpasserの名種牡馬っていないよなぁ。Nijinskyを最良として次点にDanzigなんかかな?Danzig✕BuckpasserからはPolish Precedentが出て、Danzig✕His Majesty✕BuckpasserからはDanehillが出た。Lyphardはいまいちかな。
少し趣の異なるところではNorthern Dancer✕BuckpasserのEl Gran Senor=トライマイベストの兄弟がある。トライマイベストの産駒にはラストタイクーンがあって、これが例外的なBuckpasser✕Never Bendの種牡馬だろう。
Kingmambo✕ラストタイクーンからキングカメハメハが出たのだからヘクタープロテクターも処理の仕様はありそうなものだ。しかし実際にそうはなっていないのだからMill ReefとRivermanには大きな差があるのだろう。そりゃMill Reefクロスからトレヴが産まれるかと言えば違うもんな。
やはりRomanの存在が大きいのだろうか。この血統はNothirdchance(Hail to Reasonの母)やNashua(Mr. ProspectorやRobertoの母父)やNantallah(Specialの母父)やRevoked(My Bupersの母父)に脈絡する。特にRivermanの場合はPrince Johnが大きく作用してしまうんだよねぇ。
これを本当に綺麗に処理するにはRibotを使うしかない。Allegedという名馬までたどり着いたこの名血を使わない手はないだろう。Our Emblem≒ヘクタープロテクターはその処理をも施しているから素晴らしい。
このニアリークロスは「増幅」というより「最適化」に近い。ヘクタープロテクターの持つ血統が本来どうあるべきかをOur Emblemは示しているのだろう。
トレヴとウオッカの配合からもRomanの処理を学びたいところだが・・・。方向性が真逆だ。
トレヴはRibotを一切使わない。大阪杯へ出走した牝馬もそうだったが切れる牝馬にRibot系は必要ないのかもしれない。Romanのクロスも持たず、Sadler's Wells(Hail to ReasonとSpecial)などを使うにとどまる。Rivermanクロスだからこれ以上は必要ないのだろう。
ウオッカは父タニノギムレットがGraustark3*4でRoman5*5だ。自身はRoman6*6✕6である。
この違いが大きく出るのはハイペース時の耐久力だろう。RibotとRomanのクロスが入らないトレヴはガチンコの中長距離戦で牡馬を圧することが出来ないと思うが、ウオッカはそれをやってのける。ダイワスカーレットを秋天で制し、オウケンブルースリをジャパンカップで凌いだ。牝馬の身でダービー馬の栄光を勝ち取ってみせた。安田記念すら勝ってしまう。
するとアストラエンブレムはハイペースで突っ込んだほうが旨みがあるかもしれない。ただダイワメジャーにRomanスピードへの親和性があるかどうかはまだ分からない。次のネタはこれだな。
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