ディープの仔はディープに似過ぎるということはないのだが、基本的にディープから受け継がれるHalo≒Sir Ivorで走っているのが現状。だからディープの後継を作るならばサンデー✕ノーザンテースト的な逆ニックスの名馬か、HaloかSir Ivorのどちらかを極端に表現した化物に仕上げるしかないというのが持論である。
後者のパターンにキズナなど「ディープ✕嵐猫」が該当するのかどうかが今後の楽しみ。それにHaloの化物サトノダイヤモンドの将来が加わるのだからディープ後継の未来は明るいだろう。
だがディープインパクトが存命であることもあるし、また8分の1サンデーの需要がどこまであるのかも分からない。中距離戦線は4分の1サンデーが勝ち続けているし、今年の日本ダービーもディープ産駒が上位を占めたのである。
そんな中で4分の1サンデーの産駒を短距離やダートに送り込み続けたのがフジキセキ。サンデーサイレンス産駒における最初の化物にして不遇の種牡馬である。
父の圧政に苦しみ、父の代用品としての種牡馬生活を送った。社台グループに属したのだから不遇というべきではないかもしれないが、非NDという観点で父と早々に相対することとなったことは不遇と言うべきだろう。サンデーサイレンス末期に誕生していれば違った未来もあったかもしれない。
だが後継種牡馬も多く輩出した。それに悲願のクラシック勝ちを実質上ラストクロップとなったイスラボニータで叶えたのだから山あり谷ありの種牡馬生活は有終の美を迎えている。最初のサンデーサイレンス後継種牡馬にして、最もサンデーサイレンスを尻に敷いた配合であるのがフジキセキだ。
よーく考えてみりゃおかしなもんだぜ。「4分の1Hyperion、4分の3非Hyperion」の仕組みで米血統を鋭く持続的に動かすサンデーサイレンスに対して、In Realityを突っ込む愚策を成功させるだなんてさ。それで弥生賞を押し切る楽勝ってのはとてもじゃないが想像出来やしないぜ。
実際にその産駒はIn Realityのパワーを受け継いだダートや短距離芝馬が多いわけよ。それなのにフジキセキ自身は中山2000mのガチンコ中距離戦をサンデーサイレンスらしくきっちりと突き放して勝ってしまった。「朝日杯がベストパフォーマンスなんだ。なんたってIn Realityだ。」と言わせない圧倒的パフォーマンスを見せたのだ。
もし故障がなければ・・・という話はある。幻の三冠馬だってね。
けれどその先をイスラボニータが見せてくれたと思う。ダービーを取り逃し、米血スピードが本格化してマイルあたりをちょろちょろ走る。それがフジキセキの未来であっただろう。それで良いのだとも思う。
して本題。その産駒ロサギガンティアの謎とは。
例えばサダムパテックなんかを比較対象とすると分かりやすいが、短距離の芝馬に出す場合はアメリカの靭やか系スピードを取り入れるのがモアベター。
キンシャサノキセキみたいにフランスな配合形にまとめ上げることもありだが、これはまぁ中距離配合だろう。これで短距離に出るというのは結構不思議だな。弟のクリュギスト(父フレンチデピュティ)だって砂の中距離馬だし、全妹のマルシアーノだって砂の中距離馬だ。
これはおそらくフレンチ中距離配合の影響を受けながらも、フジキセキの推進力だけはきっちり受け継いだから。そこまで強いスプリンターだとは思わない。けれど配合形に対して素直に産まれて、その配合の中で絞り出せるあらん限りのスピードを発揮した名馬だろう。
だから競走馬としてよりも種牡馬としての期待のほうが大きい。まだシュウジくらいしか出ていないけれど、Northern Dancer系に対する適切な処理を見出すことが出来れば大物の輩出は可能だろう。クロフネ繁殖なんかはディープをつけるよりこちらをつけたほうが配合的には楽しいと思う。
で、サダムパテックとの比較に戻る。これはFairy KingやSeattle Slew、Mr. Prospectorなどを使った配合だ。つまりSpecialのナスペリオンを加え、Seattle Slewの一本調子なスピードを組み込み、Mr. Prospectorのナスフリートでスピードの補完を行う。Nashua≒Nantallahでサンデーサイレンスのスピードも使えるわけだから、これは理に適った配合である。
ところがロサギガンティアの場合。Bold ReasoningはあれどもSeattle Slewはなく、Elevation(Raise a Native✕Royal Chager)はあれどもMr. Prospectorはなく、Specialなどのナスペリオン血脈もまた・・・持たないと言ったらおかしいけれども、ナスペリオンの名血統は持たないな。(Elevationを経由した形のRoyal Chager✕Hyperionはある。)
Northern Dancerもさほど面白いものではないシャーディーを経由して伝わっている。このターフローズという繁殖は今ひとつキャラクターが掴みづらいし、今ひとつ血統的な面白さを見出し難い。フジキセキに対してここまでアウトブリードとした重賞馬は珍しいだろう。
Danzigが入っているからそれ相応の短距離力は持っていると考えるべきだが、主たるクロスはHail to ReasonやNasrullah≒Royal Chager、Hyperion、Tourbillon、War Admiralなど。フジキセキ✕Danzigなのだからそりゃ短距離に向いて当然だが、ゴリゴリスプリンターとなるには少し甘いかな。
母父Big ShuffleはMy Babu✕Alycidonを持つからLavendula絡みのクロスを持ち、Pharos✕Swinfordの組み合わせを累進しているのがミソ。これはサンデーサイレンスのスピードを支える一つの要素であり、「使えるものは使う」という精神はフジキセキ産駒において大事である。
ただ、やはり母親の、この場合ターフローズの素質に頼るところが多いよな。しかし彼女自身もまた5代アウトであり、「4分の1ドイツ零細、4分の3流行」の配合形をとっている。4分の3の流行血統中においてもアウトブリードだから主張の見えづらさがある。
結局はフジキセキ産駒はフジキセキ産駒なわけで、フジキセキってなんなのかって話になれば・・・「靭やかIn Reality」という答えになってしまう。モチジュン先生がフジキセキ産駒とIn Realityの関係性について過去に言及されている。
だからIn Realityをそこそこ弄っておけばそこそこ走る馬は出るわけで、あとはアウトブリードな配合の中でフジキセキの持つスピードを絞り上げるだけだ。それだけに奇跡の配合馬フジキセキを超える産駒は出なかったろう。
逆に言えば・・・アウトブリーダーであるが故に「父に似た後継種牡馬」にも妙味がある。セントサイモンと同じ理屈だ。30年後にその時代のホースマンがフジキセキをもう一度顕現させようと試みるのであれば、その願いが100%叶うことはなくとも90%・・・あるいは別の角度から120%叶うこともあるのではないか。
そういった話をするなら、とりあえず非NDかつ非SSの名血統の誕生が望まれるがねぇ。
ロサギガンティアがフジキセキの枠を出ない以上はマイラーとしての活躍は考えづらい。ただ、フジキセキから名マイラーが出なかった理由がよく分からないんだよね。ストレイトガールとの比較でそのあたりを明確にしておきたいところだが。
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