過去の勝ち馬に非力な馬・・・例えばミスエルテの様に米血主体の配合であっても柔らかく靭やかに動く馬で勝ち負けした例はない。いや、あるわ。強いて言えばディープインパクトくらいなものだろう。
この観点からまず考えたいのは、キタサンブラックがパワーに秀でた馬であるかどうか・・・ということだ。ブラックタイド産駒にしてはひどく靭やかで柔軟なスタミナを持っている。これは全弟ディープインパクトの靭やかさを血統上のスイッチとして活用した結果である。
サンデーサイレンス×ウインドインハーヘアはHalo≒Sir Ivorの靭やかさとMountain Flower×ウインドインハーヘアの頑強スタミナを両立した配合である。最高傑作であるディープインパクトは最強クラスのスタミナを背景としてHalo≒Sir Ivorを表現し、その産駒はその融合を強く受け継いだ。既に完成されたものを劣化して受け継ぐ産駒はスタミナ・頑強・スピード・靭やかさの・・・せいぜい2つ、ジェンティルドンナなどの最高級牝馬は頑強・スピード・靭やかさの3つは受け継ぐかな。牡馬はたいていスタミナ・靭やかさ(キズナやトーセンラー=スピルバーグ、ディープブリランテetc)、スピード・頑強(リアルインパクト、ミッキーアイル、フィエロ、ダノンシャークetc)の2パターンだろう。
ブラックタイドは頑強・スタミナの2つに特化したサンデーサイレンス×ウインドインハーヘアであり、スピードや靭やかさは別の所から補完する必要がある。ディープほどに強い遺伝を持たないために補完という仕組みを得ることを可能とし、キタサンブラックはサクラバクシンオーからそれを得ている。それでもやはりスピードばかりは得られなかった。そしてまた補完によるデメリットとしてブラックタイドの頑強という強い要素を淡く留めてしまったのではないか。
血統は往々にしてこういうことが起こる。頑強な父を持つからこそ靭やかさを伝え、靭やかな父を持つからこそ頑強を伝える。スタミナとスピードもその関係にあり、ダンスインザダーク繁殖が優れた中距離馬を輩出するのもそれが理由かと。(アルバートのことを考えると伏線になりかねないな)
伏線になっていない伏線はともあれ、これはサクラバクシンオーにも同じことが言える。この優れたスピードはスタミナによる裏付けがなければ表現されるはずがなく、その影のスタミナを表現することによって菊花賞-春天勝ち馬が誕生するのだ。つまりそれは頑強≒スピードを影に押し込むことと同義だろう。
サクラバクシンオーから頑強≒スピードを補完するにはノーザンテーストをいじることが重要で、それはVictoria ParkではなくLady Angelaこそ肝要。短距離系Hyperionを組み込むことで頑強なスピードを得るわけだが、キタサンブラックは逆にそれを長距離系Hyperion(Burghclere)に取り込んでしまったから。
Victoria Parkはほら、Flembetteの血統だからエルコンドルパサーみたいにしてしまう手もあるんだよね。Bold Rulerと上手く合わせたらスタミナ化することが出来る。そんでもって、Flembetteだからこそサンデーサイレンスをニックスとするのである。
ビッグアーサーをサンデー系繁殖と合いそうだっていうのもそれが根拠であるし、サンデー系のG1馬としてキタサンブラックが成り立っているのもそれが根拠。それでもMountain Flowerを底に敷いているのはLyphardクロスのなせる業だな。Solario絡みでサクラユタカオーからスタミナを引っ張ってきたのは実に珍しい。ハクサンムーンはそのスタミナを糧に更なるスピードの上乗せを図った変態。種牡馬としては分からないが血統としてはこちらの方が有用かも。
というわけで、Burghclereを伝えるブラックタイドだからこそディープインパクトには頑強さに劣るのではないか・・・という話。
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