砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

巧みでないからこそ石橋脩は侮れない CBC賞予想

石橋脩は高度な計算能力を持たない。しかし他人の行いに対して違うこと躊躇なく、危うい精神状況と展開に対するバランス感覚がまた優れている。穴馬騎乗に優れている・・・というのも間違いではないのだが、本命馬でも思い切りを持てるところが素晴らしい。

本命馬での重賞勝利経験はない。一桁オッズでの勝利は3度に留まり、十倍台で4度の勝利、67.2倍の11番人気コスモネモシンフェアリーステークスを勝利したのが初重賞勝利。そして159.6倍の万馬券を演出した春の天皇賞ビートブラックが初G1勝利。

平場でも特別でも穴馬基調であることに変わらない。それならば・・・という話になる。しかし石橋脩はサンデー使いでないことが大きな特徴で、サンデーサイレンスらしい馬は大抵人気しているのだから、そりゃ1番人気で勝利することは少ないだろう。

この場合における「サンデーらしさ」には、まず「スロー耐性」と「瞬発力」にある。バッシュはこの辺りの能力に対して大きな弱点は持たない。だがもう一つ「気性難」ということになると危うい。バッシュは当たりが強い方である。

だから気性の荒い瞬発馬をスローの好位で落ち着かせることが出来ない。この類の技術を持たないバッシュに対して人気馬が集まらないのは当たり前であり、「不遇の名騎手」という感は全くない。むしろ手に合う馬を上手に供給されていて恵まれているとすら感じられる。

一時であったがドゥラメンテを預けられたくらいである。外国人大好きの堀厩舎において、一定の騎乗馬を得ている現状は決して悪く無い。いや、悪いっちゃ悪いんだが結果を出すに連れて何かしらの機会を得られる状況だろう。

また今回のエイシンブルズアイのように結果を出してみれば主戦として使ってもらえるだけの信頼を得ている。野中厩舎とバッシュはそこまで強い関係を持ってはいないのにも関わらず、だ。つまり競馬サークル全体において「石橋脩は乗れる騎手だ」という認識があるのだろう。ちょっと主戦と予定が合わなくて誰かいないかな、って状況において「石橋脩がいますよ」と勧められれば「それならそれでアリだな」と思われているのではないか。

特に福永からのテン乗りは絶妙な結果をもたらす。好位から淀みなく差す福永では活かしきれない馬がバッシュでは案外光る。バッシュのほうが動かす騎手であるし、福永が好位中団差しであるのに対してバッシュは好位先行の押し切りを好む。切れに劣る馬は福永の不得意分野である(であった)が、バッシュはむしろそれを得意とする。この差。

だが福永が下手糞というわけではなく、むしろ福永の実戦調教のおかげでバッシュが乗っても動いてくれる。この点において福永は強豪厩舎強豪オーナーから好まれているわけで、ミルコなどの勝負師に対するストロングポイントと言えよう。気性、脚質、ゲートなどの要素に対して悪い影響を与えず、ある程度前を捌けるから脚を余して戻ってくることも少ない。馬鹿みたいな逃げを打って気性難に拍車をかけ、ひどい消耗を抱えて帰ってくることはないってわけだな。

バッシュはこういったアスリート(笑)とかプロフェッショナル(笑)よりも勝負師(キリッ)寄りの騎手だろう。リーディング争いと全く以て無縁である身で重賞をそこそこ勝てて、あまつさえG1すら勝っているのだ。サテツもまたリーディングと無縁でありながらも、95年から11年まで重賞勝ちを続けていた。

さて、そのバッシュが2枠2番からどう思い切るのか・・・というのが本題である。

おそらくCBC賞の先行争いに加わることは難しいだろう。しかも内から捌いて旨味がないのが中京であるから外に出さざるをえない。全体的な展開のロスが発生することが予想される。

電撃の6F戦においてロスは避けるべき要素である。中距離戦においてロスというものは最小限に抑えるべきものだが、スプリント戦においてロスはあってはならないものだ。スローの流れで不用意な出し方をすれば、それだけでレースは終わる。前が少し塞がっても終わることがある。

スプリント戦に絶対はないが、スプリンターには絶対がある。真のスプリンターとはいかな展開であろうと自らの領域を以って勝ち切って見せるものだ。エイシンブルズアイの淀みない流れ込みはスプリントではなく1400m的であるため、これは不安要素と言えよう。

中京を走るならば・・・どちらかと言えばマイルの方がねじ伏せやすいかもしれない。CBC賞を差しきる様な脚はあまりないのではないか。

勝機があるとすれば中団内を進んで行く手だが、これは4角で少しのペースダウンがあったほうが決まりやすい。4角を回るころに進出のチャンスなく進まれると直線で前が止まるわ後ろから差し込まなければならないわで後手後手になる。内を回りながら徐々に押し上げ、淀みなく目標を持ちながら差し込む方が効率は良いだろう。

より良いのは前がオーバーペース気味に行ってくれるパターンだ。それなら中団から展開するのが「ロスのない」状態となるし、地力勝負になれば相手関係が易いだけに大助かりである。

更に良いのは出脚での争いが激化せずに先行を決められる流れだろう。そこから淀みなく進んで直線を向き、33秒4くらいで踏破するレースなら大楽勝である。これは非サンデーの馬に乗る石橋脩にとっても絶好パターン。

怖いのは出足勝負に敗れ、外へ出せず、スローペースに付き合わされてしまうことだ。スプリント最長の直線を踏破するには決して向かないエイシンブルズアイであるから、スローの外目から進むストライダーを差すのは難儀どころか無理な勝負。32秒台の末脚じゃなきゃ届かないスプリントなんて無理の極みだ。13年みたいな流れになるとホント無理。

1番人気の2倍台にこういった選択肢があると馬券は難しい。また1番人気を消して穴馬を狙いたく思う心理と上手に付き合わなければならず、それは馬の特徴をつかむにせよ展開を読むにせよ重要となるところである。

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