砂時計のくびれた場所

競馬の血統について語るブログ

スプリンターズS展望

中山外回りはロングスパートの差しが届きやすいレースで、それは二千二でもマイルでもスプリントでも同じ。ただ距離が長くなるにつれて差しの位置を逃げ先行の位置とすることが容易くなり、オールカマーAJCCではしばしば押し切りが見られる。

スプリントで押し切ろうとすれば、絶対的な格が必要である。下りを突っ込んでいき、4角と登坂の二つの関門をくぐり抜けながらスピードを維持しなければならない。それはもう止めようもない激しい気性なく行えることではないのだ。スプリンターがスプリンターである所以を示さねばならない。

まさかDominoじゃあるまいし、そんな走りなんか出来やしない。一頭がバカ逃げして、二番手がそれを目掛けて差し込んでいくという気性の二段発射が理想だろう。前走においてもビッグアーサーのかっとびっぷりはだいぶアレなもので、あれを追いかけてあれを差してしまう世界が本当のスプリントなのだろう。なるほど、モチジュン先生が事あるごとに懐古されていたのも分かる。

ハクサンムーンがかっ飛んで、それをロードカナロアが差してしまう。そんな素晴らしい世界が現代にもあった。ビッグアーサーも逃げる立場ではなく差し込む立場にあれば良いのだが・・・今回の予想に於いて大事な要素だろう。

福永は結構年寄りなので、懐古された世界を知っている騎手。サンデー時代ディープ時代を生き抜くこの男も、何故か知らないがここに来て積極策が光っている。それならスプリンターズS制覇も考えられる。

昨年あたりにまとめた気もするのだが、福永騎手がスプリンターズで先行した時ほとんどが馬券に絡む。これはまず福永騎手が中山スプリントの差し方を承知していないことが理由に挙げられる。でも最近はマジンプロスパーで差し込んだりもしているし、オールカマーサトノノブレスの様に中山での競馬も掴んでいる。

福永が大レースに弱いのは・・・特に牡馬で弱いのは、関東開催に慣れていないからだ。絶対的な騎乗数で関東騎手に敵わないし、武豊の様に素晴らしい経験を重ねたわけでもない。なら関西競馬を落とし込むしかないわけだが、その微調整がなかなか終わらなかった様子。川田将雅とか池添謙一とか浜中俊とか・・・そっちの方が早かったんじゃないかねぇ・・・。

上の関西騎手の素晴らしいところは関東で得た経験を関西でも行い、そこでまた深め、それを以ってまた関東で戦うというループを行えるところ。超一流の争いに加わるにはそれをしなきゃならないのに、福永はシコシコと関西流で戦い続けた。騎乗馬を関東に落とし込めないまま。

それでもリーディング争いに加わっているのは、ゲートが上手くて折り合いを重視するスタイルだから。馬群に入れて勝負どころで火を入れる、という基本的なレースを教えられる騎手だから関西の素質馬が彼には集まる。

少なくとも新馬ならミルコより信頼出来る騎手である。調律師としては随一だろう。

中庸的な騎乗であるために競馬を教えられるわけだが、それが最強のスタンダードとはなり得なかった。その理由は・・・G1レベルになるとみんな出が速いからなんだろうなぁ。普段の好位が中団になる。中団になるとその分早く動かなければならない。でも福永は差しが下手糞だから突き抜けた後に差されてしまう。エピファネイアのダービーがいい例。

この差しの下手糞っぷりに関してはMahmoudさんが一息に脚を使う悪癖を指摘されている。ゴールドシップのまくりを見ても多少なり息を入れているし、田辺がまくるときも一息には行ったりしない。中山で言うと4角あたりで手の動きが緩んでいて、直線に向いてから押しっぱなしに入る。

イン突きもまくりもやっていることは大違いだが性質としては似ている。緩みをドコに持ってくるかの違いだろう。福永は一息に脚を使うからまくれもしないし、インを突くことも出来ない。好位でギリギリまで引きつけて、一息に押しまくる・・・ということだけ。

ただ、それも突き詰めれば立派な武器である。ジャパンカップエピファネイアはそういった性質の競馬であっただろう。福永は菊花賞でそれをやってのけたし、そっちの素養があるのだと思う。そういえば北米で騎乗していた時期とかあったっけ。

北米の競馬ってあれだよね。3角の時点でレースは終わっていて、後は馬の地力に任せて頑張ってー!で祈るように押しまくる感じだよね。なんか常に大逃げしてる感じ。セントウルSの行きっぷりはそれを彷彿とさせて、なんだか福永ウォッチャーとしては楽しくなった。

ただ福永の周りにいる人たちにとっては実に無様な競馬に映っただろう。スノードラゴンが行ったのだから、その2番手に抑えてもらわなきゃ困るってわけだ。でもインが伸びていた事実もあるし、スノードラゴンがペースを抑えないとも限らない。いいや、実際にペースを落とし込もうとしたからこそビッグアーサーがあんなに容易く交わしてしまったのだろう。

スローの2番手で逃げの外に行ったら・・・前半のツケを食らって負けていた可能性がある。コース形態もそれに相応しい展開も全て投げ打った、それはもう素質という石で殴りつける様な競馬だったからこそ勝ち得たのだと思う。

ああいったペースで3番手4番手から弾けられるならば僥倖というもの。実際にそういった流れになるかは分からないが、そうなったときにそれをしなければ、エピファネイアリアルスティールで得た屈辱の念は消えることがないだろう。勝たなければならない。

でもあれだよね。血統からしたら難しい話なんだよね。しかもスプリンターズって立ち回って勝つことが多いレースだし、原始的なレースにはなりづらいんだよな。セントウルSの方がスピードの絶対値で勝ちやすい舞台だろう。

けれど福永が一皮むけることに一競馬ファンとして賭けたいし、サクラバクシンオー最強の産駒としての期待もまた、ビッグアーサーにはあるのだよね。どんなに予想を突き詰めてもこの思いばかりは揺らがないと思う。穴党として別の馬を狙うことはあったとしても。

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